お試し価格 オーブントースター 新しく着き 2段階火力切替 NT-T300-C ベージュメタリック

オーブントースター 2段階火力切替 ベージュメタリック NT-T300-C

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商品名
パナソニック オーブントースター 2段階火力切替 ベージュメタリック NT-T300-C


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サイズ
高さ : 27.00 cm
横幅 : 32.00 cm
奥行 : 41.00 cm
重量 : 4.52 kg
  • 火力切替2段階
  • メニューに合わせて火力調節「火力2段切換」
  • スチーム機能無
  • ヒーター熱をワイドに反射「3面ディンプル庫内」
  • 庫内寸法(幅×奥行×高さ):32.4×21.8×8.7cm
  • 揚げ物のあたために便利な「フライネット」付き
  • タイマー15分
商品紹介 スチーム機能無タイマー15分庫内寸法(幅×奥行×高さ):32.4×21.8×8.7cm火力切替2段階 ご注意(免責)>必ずお読みください 【パナソニック製品の修理に関するお問い合わせ】パナソニック修理ご相談窓口 TEL:0120-878-554受付時間:9:00~19:00 (日祝日及び年末年始9:00~17:30)インターネットより「パナソニック修理」で検索

オーブントースター 2段階火力切替 ベージュメタリック NT-T300-C




※私信です☆>饒☆さま!すごーくスクロールしていただいた下の方にコメントのお返しを乗せさせていただいております。どうぞお時間のあるときにでもレッツスクローォォルしてやってくださいませ…!m(_ _)mお返事遅くなりました!(汗)



大変な豪雨でしたが、皆様ご無事でいらっしゃいましたでしょうか……葵の生息地帯は幸いなことに少々電車が遅延したぐらいで、特になんてことはございませんでした。
このたびの被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げますm(_ _)mどうか一日も早く日常が戻ってきますように願ってやみません。

コロナウィルスもしぶとく第二波だかなんだかを繰り出してきていますね。
ほんの二週間前あたりまで、関西はほぼ感染者1桁台で終了モードが強かったのですが、いやはやです。
その二週間前あたりに、葵は夢幻夜話の速世未生さまとご一緒に京都の町家にお泊まりしてまいりましたよ。

このたびお世話になったのは町家をリノベーションした鯉/屋旅館さんです。トイレや風呂、キッチン、談話室が共同で、あとは和室がいくつかあってそれぞれ自分で布団を敷いて泊まるスタイルでした。

これねぇ、お庭です。井戸もありましたよ。泊まったのが一階の部屋だったので、目の前が新緑に輝くお庭さんという眺めの良さでした。


談話室にはガラスがなくて、これが網戸のかわりでした。じゅうぶん風通しが良くて涼しかったです。

斜めに傾いじゃった(写真が)


泊まったお部屋の外には濡れ縁がぐるりと巡っていて、蚊に食われる覚悟があるなら出て涼むこともできます。

蚊に食われることを畏れずに果敢に出てみました。朝ご飯はキッチンのテーブルにヨーグルトとかスモモとかバナナとかパンとかがどさどさと適当に積んであって、宿泊客が入れ替わり立ち替わり現れて好みの獲物を奪っては各自室へ引き上げる山賊スタイルでした。未生さまと葵山賊の朝食の宴の風景です。途中でぱらぱらと朝雨が降ったりして風情満点、蚊も満点。


談話室の床の間。


灯りは一晩中、廊下のあちこちで灯っていました。




お風呂が小さなシャワー2室だけなので、旅館のお姉さんに勧められて近所の船/岡温泉という地元の銭湯へお出かけしました。
古き良き昔ながらの銭湯で、天井にでかい天狗のお面が張り付いていたり、タイルの模様がかわいかったり、小さいながらも檜の露天やサウナもありました。併設のトイレが非常にレトロで、鍵の部分が針金を穴に引っかけるタイプのもので、閉めても扉が完全に閉まらないスタンス。きっと葵尻も丸見えだったと思います、しがないものをお見せしました…
でも地元の人の中で山賊ズ(未生さまと葵)はかなり余所者感が溢れていたようで、ちらちらとひっきりなしにチラ見されたうえ、ちょっとした京都名物イケズにも遭遇しました。
初老のオバサンが「ちょっと、これあんたらの?ここは座るところだから」とベンチの上の脱衣籠を勝手に床におろし、これみよがしに籠ののっていた自分のケツを乗せる場所を消毒したうえで、いそいそと小汚い(失礼)ケツを投下する件が発生。
その脱衣籠は未生さまのものでも葵のものでもなく、見知らぬお婆さんのものだったのですが、とばっちりを食った形の気の毒なお婆さんは「服をいれた籠がなくなってしまった」としばらくあちこち探しておられたみたいです。
葵の知人も3人ほど、かつて京都に移住したことがありましたが、一人は精神疾患を発症して早々に他県に離脱、もう一人は借りていた家を追い出されて近代的なアパートに引っ越し、もう一人はいじわるしてくる近所の婆さんの目の前でリスカしてすぐに病院に運ばれたと聞いております。恐ろしや京都。

そうそう、和菓子制作体験もしてきましたよ。
和菓子の老舗、亀/屋良/長さんにお邪魔しました。ちなみに京都に亀/屋という名のつく和菓子屋がやたらといっぱいあって、ざっと調べただけでも亀/屋良/永(一文字違いの音一緒!)、亀/屋清/永、亀/屋博/永、亀/屋友/永ととにかくややこしい…

お菓子を作る前に店内の喫茶室で季節の和菓子をいただきました。これはすっとでてきた日本酒、じゃなくてお水です。


銀河という和菓子は中に白あんが入っていて美味しゅうございました。


体験教室の和菓子は青紅葉と朝顔だったんですが、青紅葉はまだマシに作れたものの、朝顔は「二日酔いですごくむくみきった顔面のごときビジュアル、髪の毛は葉っぱの形のピンでとめました」という前衛さにあふれた形状になりました。センシティブでモザイクがかかりそうな画像なので掲載はやめておきます。
青紅葉と朝顔はお土産用に箱に入れて持って帰りましたが、もうひとつ、もしゃもしゃしたクッキーモンスターみたいなやつを作ってその場で抹茶と一緒にいただきました。

下にぴこっとくっついている小さな青紅葉は、できたての和三盆を固めたものです。これを乾燥させると落雁になるそうです。できたての和三盆はほろほろですぐ崩れてしまいますが、生暖かくてすごく美味しかったです。これを主食にする昆虫になってもいいと思うぐらいのおいしさでした。

晩ご飯は宿のちかくのさらさ西/陣さんでいただきました。レトロタイルのかわゆい不思議なカオスな雰囲気のお店でした。葵は豚とレンコンがあははうふふと群れ遊ぶ酢豚のようなお料理をいただきましたが、がっつりたっぷり量があったので、後半はちょっとヒィヒィしました。でもとってもリーズナブルで美味しかったです。




古着の格安フリマで有名な戻り/橋さんにも行きました。
1~3階まである古い建物で、命の危険を感じる階段の傾斜と上りにくさがスリル満点。足を滑らせるともれなく下にいる人を巻き込んで階下まで運命共同体です。
2階は妖しいサロン的な装飾で、3階よりもちょっとお高い着物などが置いてありました。江戸川乱歩とか横溝正史とかお好きな方にはぴったりきそうな、やや厨二的な妖しい雰囲気です。










これはお写真スポット。掛け軸の女人はなぜか乳丸出しだったので、葵も乳丸出し……はかろうじて思いとどまり、痴女ポーズで写真を撮っていただきました(巻き込まれる未生さま、「えぇ~;」とおっしゃいながらもシャッターを切ってくださってありがとうございます)。やはりセンシティブでモザイク案件な画像なので掲載はやめておきます。


3階は着物どれでも500円均一という驚きの安さ。振り袖も浴衣も帯も500円です。ただ紐やら帯締めやらも平等に1本500円なので、小物類はやや割高かもしれません。
葵もつい買ってしまいました。もちろん自力で着れません。どうしたらいいんでしょう。

未生さまは黒地に蝶々が散っている素敵な浴衣をゲットなさっておられました。長い髪に簪がよくお似合いになる未生さまに、ぴったりのお品でした。お買い物上手でいらっしゃいます。

翌日のお昼は、同じく宿から近所の手打ち蕎麦屋さんに出かけました。
有名なお店らしくて、11時開店だというのに30分前からまあ人が並ぶ並ぶ。いただいたお蕎麦はとっても歯ごたえがあって蕎麦蕎麦していて美味しかったですが、いかんせん一瞬で食ってしまえるほどの控えめな量でした。あと三枚は食えたと思います(握りこぶし)。お通しで出てくる蕎麦せんべいはカリカリのスナック感覚、最後にでてくる蕎麦湯はねっとり白濁していて濃厚でした。
蕎麦屋さんもコロナの影響で席を離して座るので、ふだんの5割程度しか一度に客を入れていなかったように思います。
いつまで続くんでしょうねぇ、コロナ…(遠い目)

22日からGO TOが始まるみたいですが、旅行にいらっしゃるご予定の皆様にはどうぞ道中つつがなくご無事でありますように…!

えらく長くなってしまいました、ここまで読んでくださって大変お疲れ様でございました。ありがとうございました!


以下大変遅くなってしまいました、拍手コメントお返しです♪



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2020_07_19


皆様、こんばんは!趣味の乳首のお時間です。あなたの乳首は今日も元気に2つそろっていますか?お出かけ中の乳首は日が暮れる前に早くおうちに連れ戻しましょうね!

葵は最近、中華ドラマ「瓔珞」にはまっております。少し前は「宮廷の諍い女」という、これまた中華ドラマにハマっておりました。実にハマりやすい女でございます。いずれも中国の清の時代の後宮を舞台としたお話で、70話~80話ほどもあります。
「宮廷の諍い女」はちりさまのご紹介で見始めたのですが、華やかな装飾であるとか建築美術に目を奪われ、さらに後宮のドロドロの女の争いに目が釘付けになり、気づけばあっという間に80話を見終えておりました。
「瓔珞」は時代的には「宮廷の諍い女」のすぐ次の皇帝の後宮のお話です。
いずれ劣らぬドロッドロの人間模様、腹に一物の輩が跋扈し、何が本当で何が偽りかいまいち読み切れない不穏さがたまりません。髪飾りであるとか衣類の刺繍であるとか調度品であるとか宮廷料理であるとか、見るだけでも豪華で美術鑑賞面でもじゅうぶん楽しめます。

中華ドラマは、日本人とは価値観が全然違うんだなぁという点も実感として落ちてきて面白いです。
なんというかドライです。
ドライアイ、ドライクリーニング、ドライアイス、アサヒスーパードライ、ドライがつく言葉は多々あれど、どれも乾燥しててパキッと辛口、まさにそんな感じです。ふぁーっといがみ合ってドロドロの言葉の刺し合いをしても、次の登場時にはもうケロッと普通ににこやかに語りあったりしてて、ええんか?と思っちゃう。いやまあ本音と建て前は別で、腹に一物はあるんでしょうけれど、なんというか乾燥肌、後を引かない粉の吹き様。
敵味方に分かれて争っていても、利害が一致した場合には普段の確執はあっさり捨てて、とてもまめまめしく協力しあったりしておる。なかなか日本人的には「えっ…さよか、そこは仲良しするんか」と目をこすってしまいます。

葵的には「宮廷の諍い女」の方が好みに合いましたが、中国では「瓔珞」のほうが人気があったようでございます。
瓔珞はウンコの入った壺を各宮から集めてきて、素手でゴシゴシ洗ってるような最下層の奴隷から、最終的に皇后まで上り詰めたというサクセスストーリーで、とにかく「相手が身分が上だろうがなんだろうがやられたら十倍返しでやり返すぜ!喧嘩上等!かかってこいやオラ!」という主人公のキャラが、今の共産党一党支配の中国において一般庶民的には爽快感があったのかもしれません。
一見優しくていかにも善人に見える女が、ふとしたきっかけで陰湿な鬱屈からくる残忍な本性をあらわにしたり、口先三寸で生きている裏切り上等な腹黒男が実はとても忠義な義理堅さを持っていたり、一見しただけではわからない人間の表と裏を赤裸々に描いているのも面白いです。
そんなこんなで、葵のしばらく中華ドラマブームは続きそうです。
またおすすめの中華ドラマがあったら是非教えてやってくださいませ。ウキウキとレンタルしちゃいます。


以下、拍手コメントお返しです♪



2020_06_07


明日から6月ということにびびっております葵でございます。もう1年の半分が過ぎてしまおうとしているなんて、時間の早さにびっくりです。特に今年はコロナのおかげでコールドスリープしたかのような非現実感がありますよね。

さて短編をひとつアップしております。ちりさまの御本に金波宮の食堂のお話がございましたでしょう。今回はそのネタをそのままお借りさせていただきました。ちりさま、御快諾くださってありがとうございました!m(_ _)m

昨日葵はかねてより興味のあったシルバークレイの体験教室に行って参りましたよ。
駅前の住宅街の中にひっそりとある貸ルームで、初老の女性がマンツーマンで教えてくださいました。
銀粘土がとにかく乾燥しやすいのと、乾燥したばかりのものはとっても割れやすいということで、がさつな自覚がある葵はおっかなびっくり、粘土を持つ手もぶるぶるっちょでございます。


指輪の隣にある平べったいのは指輪の余りで作ったペンダントトップでございます。刻み模様は股ぐらではございません。アルファベットのYでございます。
なかなか楽しかったので、月一回の定期レッスンを申し込んでみようかなぁとぼんやり考えております。まずは密林とかで売られているスターターキットとか初心者向けなんちゃらとかを試しに購入してみます。

コロナの第二波が心配されますが、まったりにょろにょろと参りましょう。

以下、拍手コメントお返しです♪


2020_05_31

赤炎

category: 短編  

仙籍を頂いてかれこれ18年になる。
冢宰府に配属されてからだともう少し短くなるが、それでも15年。比較的ゆったりと時間の流れる雲上ではささやかな年月だとしても、ひとたび地上に降りればよちよち歩きだった幼児が成人するかしないかの頃合いだ。思えばずいぶんな時が過ぎたものだと思う。
能筆だけれども度を超した変人だから近寄らない方が良いと、学生の頃から不名誉な方向にばかり名を馳せていた俺を拾ってくれたのは当時冢宰の任にあった靖共様だったらしい。らしい、というのは人づてにそう聞かされただけで、御本人に事実を確認したわけではないからだ。今となってはもう確かめようもない。というのも、謀反の大罪で投獄された靖共様はもちろんのこと、俺にそう話して聞かせてくれた奴――拾ってやったのだから御恩を感じてせいぜい靖共様に御奉仕しろと熱心にかき口説いた大学の同期――も、どこぞの辺境にぽつんとそびえる鄙びた凌雲山に左遷されてしまったからだ。
靖共様にとって、俺を拾ったことで何らかの益につながったかというとそれは無い。俺は何度となく書類を改ざんして決済に回したし、極秘の内部情報の書き付けを「うっかり」回廊へ落としもしたし、なんなら火急の書類をちぎりまくって池の鯉に食わせて戦場への伝達を遅らせもした。こう言うと有志の輩っぽいが、誓って俺は王の味方だったわけではないのだ。靖共様に加担するつもりはないが王に肩入れするわけでもない、それだけだ。どっちもどっちで双方ともくだらないと思っていた――糞みたいな、非建設的極まりない政権争いだと。
そりゃあ国は王が治めるのが原理原則だけれども、物心ついてからこのかたまともな政を行った王なぞ1人もいなかったではないか。俺が雲上にのぼってからかれこれ王は2度変わった。今度の王で3人目である。最新の王様はまたもや年端もいかないぴよぴよした小娘だが、靖共様を内朝から追い払った張本人でもある。つまり政争に勝ったということだ、おめでとう。実にご苦労なことである。
果たして王の存在など必要なのかどうかと疑問に思ったりもする。有能な官吏さえいればそこそこ国は危なげなく回っていくものだ。20年に少し足りない年月、海千山千の仙人が集う伏魔殿でそれなりに過ごして得た結論はそれである。実務に詳しい有能な人間が各部署に複数そろっていれば、それだけできちんと機能するのだから。
「――優奏」
「何だよ、うるせぇな」
物思いに耽りながらいたずらに筆をぐるぐる回していた俺は、ついぞんざいに吐き捨てた。ふとひやりとした視線を頬のあたりに感じて頭を上げると、卓のすぐ側、吐息がかかるほどの間近につい半月ほど前に新しく着任したばかりの上司が紙束を抱えて立っていた。
「おっふ……なんでありましょうか、閣下!」
さっきの視線が嘘だったかのように、その上司――新冢宰は、ごく優しい気弱な笑顔を浮かべてこちらを遠慮がちに見下ろした。もともと言葉数が少ないお人だが声も囁くほどに小さい。ぼそぼそと口の中で、いかにも覇気なく着任の挨拶を述べた彼は中肉中背、年の頃は三十前後、切れ長の瞳も涼しげななかなかの色男だった。
なんでも元麦州候で切れ者で鳴らしていたという噂をあざ笑うかのように、今のところ辣腕の片鱗さえない。いつも堂の中でそこだけ一段高くなっている上卓に座りこんでぼーっと窓の外を眺めているか、もしくは積翠台へ出かけて留守にしているかのどちらかだ。
昨日、今日とここ二日は珍しく朝から冢宰府に詰めている。詰めてはいるが、何をしたかといえば、冢宰府の面々に昼餉は何が食べたいかと聞き回り、かといって昼時がきてもそれを差し入れてくれるわけでもなく、その後しばらくは大人しく座って何やらごそごそと帳面に書き付けていたが、やがてそれにも飽きたのか、紙飛行機を折っては部屋の角めがけて飛ばす奇行に及んだ。それが昨日のことだった。
今日はというと、ひとかかえもある大きな籠を抱えてきた。カソコソと妙な音がしているので嫌な予感がしたが、蓋をとると羽の生えた虫がわっと湧き出て一斉に部屋中に散っていった。おかげで冢宰府はしばし阿鼻叫喚の坩堝と化したが、虫たちは特に悪さをするでもなく、ふんふんとひとしきりそこらを嗅ぎ回ってからまた大人しく籠へと戻っていった。そのあたりから観察しているのが馬鹿馬鹿しくなり、俺は俺で書類も読まずに、紙に罫線を引いて遊んでいた。さっきもまたひとつ紙飛行機を放り投げ、よく飛んだと喜んでいたのに、冢宰ときたらいったいいつの間に側に来たのだろう。足音どころか気配すら無かった。
「確かそなたは昼餉に豚肉の揚げ物が食べたいと申していたな」
しかつめらしく冢宰は囁いた。
「は、恥ずかしながら拙めは子供舌なので野菜は嫌いです。肉を揚げたものが好きであります」
よくそんなことをいちいち覚えているものだ。着任したばかりで場に染めず、話の接ぎ穂に困って飯のことを聞き回っていたのではなかったのか。
「なら今日の昼は私と相伴せよ。馳走してしんぜよう」
「え?」
指から筆がぽとりと落ちた――なんだって?
「有り難いお言葉ではありますがそのぅ……閣下、こんな顔を見ながらお召し上がりにならなくても……」
できれば飯は一人で食いたい。上司なんぞと一緒に食えば旨いものもまずくなるし、消化にもきっと悪い。
ずいぶん歯切れが悪い応えだな、嫌か、と上司は自信なさげに呟くと、めくれ上がった袖を直しながらさりげなく卓上に置きっぱなしになっていた罫線まみれの紙に視線を走らせた。瞬間、ぞくっとする冷気が背筋をすごい駆け上がった。腕に鳥肌が立つ――理由はわからない、新冢宰は温厚そのもので穏やかに微笑んでいる。
「……これは何かと聞いても?」
「今の決裁書式がどうも俺は、いや私めは苦手でありまして……もうちょっと使い勝手が良くなりはしないかと、つい。手すさびに書いてみただけでございます」
どうぞご放念くださいと丸めようとしたが遅かった。押さえた掌をするりとすり抜け、その紙はもう上司の手の中にあった。
「罫線が多いな。これは絵か。それとも楽譜か」
仕事場で暢気に紙飛行機を飛ばす男だ。おそらく部下の怠慢を不満に思っているわけではないだろう――ないはずだ。もしかして自分は棚上げとかいうあれかもしれない。
「楽譜の変形です、閣下」
「ほう」
「拙めは音楽が好きですが、楽譜を読むのが実に面倒で……まだるっこしいというかなんというか…」
特に繰り返すところや、どこの小節に戻るとかの箇所がわからない。
「どうせなら簡潔に、全体像を瞬間的に把握できるものが好ましいと思いまして。だから自分なりに罫線の中に音を押し込めて書き直す、というのをよくやるのでございます」
「で?」
気づけば冢宰府はしんと静まりかえっていた。同僚たちはみな一様に筆を止め、息を詰めてこちらを伺っているのがわかる。窓の向こうで雲雀がうららかに歌う声が、やけにひりひりと耳に沁み入ってきた。
「それを決裁書類にも応用しようと?」
にこりと明るく破顔されて、頭頂から氷水をかぶった心地がした。さっきからこの悪寒はなんだ。風邪だろうか。
「僭越でした!ほんの手すさびと……」
「とにかく昼餉に付き合いなさい」
「は」
否を唱える間もなく手を掴まれ、回廊へ引っ張り出されていた。
どこをどう歩いたのか、気づけば『食堂』と墨痕鮮やかな扁額がかけられた大堂の入り口に、俺は佇んでいた。
――こんな場所が府内にあっただろうか?
官吏は、基本的に弁当を持参して昼餉をとる。休憩所もあるにはあるが各部署ごとに分かれており、それぞれ使っていない堂間や離れを利用するし、それすらない部署は昼時になると私邸に一度戻るところもある。疑問が顔に出たのだろう、上司は爽やかと「最近つくったばかりの試作でね。まだ稼働してない」と笑うと、馴れた様子で戸を開けて入っていった。
恐る恐る足を踏み入れてみる。たちまち奥から旨そうな白煙がどっと押し寄せてきて顔面をしたたかに打った。蒸籠からあがる蒸気だ。湿っぽい煙には切られたばかりの野菜の青臭い匂い、煮汁をしたたらせた柔らかな肉の甘い脂が混沌と同居している。爆発するように、限界まで熱した鉄鍋にジャッと胡麻油の爆ぜる音がする――まるで銀盤に跳ねる玉のようだ。
改めてぐるりを見回してみると堂間はずいぶんと広い。回廊側の壁をぶちぬいて縦長の窓を連ねてあるので日当たり、風通しとも良く、すがすがしい開放感がある。敷かれたばかりといった風情漂う真新しい床板はまだ木目がくっきりとしるく浮いている。一定の間隔で配置されている長卓は、二人用から十人以上が囲める大きいものまでとりどりだ。卓の並ぶ向こうには腰丈の横長の台がそびえ、その奥が厨房となっていた。
「ここで食券を買うのだ」
新冢宰が向かったのはつくりつけの大棚で、無数にはめ込まれた箱形の小さな引き出しの背にそれぞれ手書きの料理名が貼り付けてあった。へたくそな『棒々鶏』の引き出しから青い紙片を取り出すと、冢宰は棚の横にひっそりと待機していた官吏に小銭と共にそれを手渡した。ざっと見たところ引き出しはまだ半分以上が空白だったが、上1/4は定番の料理名で埋まっている。どれもこれも子供が書いたようなたどたどしい、けれど豪放な字体だった。少し迷ったが、俺は『酢豚定食』の紙片を選んだ。官吏は仰々しく一礼して厨房へ引っ込んだ。
すぐそこに二人がけ用の卓があるのに、上司が選んだのはなぜか四人がけ用の卓だった。堂間には自分たち以外だれもいなかったから、悠々と座りたかったのかもしれない。いざ腰をおろして向かい合うと、とたんに居心地の悪い時間が訪れた。上司はといえば卓に肘をついて緩く指を組み合わせ、相変わらず何を考えているかわからない気弱な顔だ。当たり障りなく天気の話でもすればいいのかもしれないが、雲上の天候などまがいものの安物である。下界とは比べるまでもなく激しさが足りない、つまりくだらない。そして俺は無意味な御追従など糞くらえが信条だ。
窓の外で、また鳥が鳴いた。今度は雲雀ではない、聞いたことのない変わった声だった。ぴるぴると音の尾を引いて長くさえずっていたが、ふっとそれが――途切れた。冢宰が顔を上げ、静かに立ち上がった。
次の瞬間、バン!と派手に戸が開け放たれたかと思うと、赤い炎を燃やした塊がすごい勢いで飛び込んできた。思わず腰を浮かし、慌てて目をこすった。
よく見ればなんてことはない、朱髪を振り乱した小汚い格好をした小娘が仁王立ちしているだけだった。
「ああ!もう猛烈に腹が減ったぞ浩瀚!飯だ!」
「どうぞお腹、お食事とおっしゃいますよう」
なぜか小娘に向かって丁寧に拱手しながら慇懃に頭を垂れる。ハエを追いやるような手つきで小うるさそうにそれを払うと、ずかずかと遠慮無く近寄ってきた小娘は「牛丼!」と一声雄叫び、さっさと座り込んでしまった――俺の真横の席に、だ。ぎょっとして思わず椅子を離しそうになった。
「口頭はだめですよ、食券です。あれを買いませんと」
「そうだったそうだった」
バタバタと棚から『牛丼』の札を引っ張りだして官吏に押しつけ、また騒々しく椅子に戻ってくる。動作がいちいち雑なものだから、座る際に小娘が背負っている布に包まれた何やら細長い固いものが俺の肩にちょっと触った。ごめんよ、とくるりとこちらを向いた娘の顔に息をのむ。翡翠色の大きな瞳が印象的な小作りな造作で、瞳のぐるりと赤い睫が豪華にとり囲み、ぐっと反り上がったりりしい眉が少年めいた辛味を添えている。厳しく引き締まった頬にはまだ幼い輪郭が残照のようにほのめいていた。わけのわからない、けれど圧倒的な熱の塊がそこにあった。
「で?紙飛行機の飛び具合はどうだ」
「薄さとしては、紙師が最終に梳いたあれが一番良い感じでございました。折れば風の抵抗もいくらか減らせますし、くちばしで挟んで飛んだとしても、さほど鳥の負担にならぬのではないかと思われます」
「うん。じゃあ紙はそれでいくとしよう。肝心の書式はどうだ」
「それはこの者が」
「……えっ?」
いきなり輝くような笑顔を向けられて俺は固まった。上司はいつだって腰が低い。常に気弱な声で遠慮がちにぼそぼそと喋る――はずではなかったのか。この胡散臭い笑顔はいったいどうしたことだ。蛹が身を覆う薄皮をぺろりと剥ぐようにして、今やゆっくりと冢宰はその輪郭を変えつつあった。誰なんだこれは。こんな男だったか?
「この者は楽器に堪能なのだとか。それゆえ楽譜から着想を得たようでございます。罫線を使って枠をとるのだそうで……」
これでございます、と没収していた例の手すさびの紙を袖口から手品のように取り出して見せると、小娘は大きな瞳をらんらんと輝かせた。
「実にいいじゃないか。季節がどうの、ご健康を祈る慣用句がどうの、長々しい挨拶は書類には要らん。本文にたどり着くまでにすっかり疲れちゃうし。こういう型があれば書く側の手間も読む側の手間もぐっと減るな」
「御意に……」
「はいよ、お待たせ!」
冢宰の声にかぶせるようにして湯気のたつ盆がドン、ドンと頭上から勢いよく降ってきた。卓にそれぞれが注文した昼餉の料理が並ぶ。棒々鶏に酢豚定食、それに牛丼。できたての熱々で、なんなら爆ぜた油がまだ皿の上で跳ねている。ものすごく食欲をそそる香りが濃密に全身を包み込む。
奇妙な会話はたちまち途切れ、卓は瞬く間に食欲の噴火口と化した。
「んんん!」
旨い、とさっそく口いっぱいに飯を詰め込んだ小娘が目を細めて幸せそうに悶絶している。つられて俺もとろりと照りを帯びた艶々した肉を箸でつまみ上げ、そっと口へ押し込んだ。柔らかい。タレにぴりりと生姜が効いている。よく揚げてあるのに肉汁は失われず瑞々しい。人参、白菜、キクラゲなど様々な具材がそれぞれに己を主張し、けれど決して雑多にはならずに甘辛くよくまとまっているのが実に旨い。箸が止まらないではないか、黙々とかきこんでしまう。
「よく噛んで召し上がられませんと喉を詰めますよ」
ひとり優雅に鶏を咀嚼している冢宰がやんわりと少女を諫めるが、そういえば一体なんだってこの男は薄汚れた小娘にいちいち敬語を使っているのだろうか。
「……」
唯一の可能性がふとかすかな影のように脳裏に浮かんだが、慌てて頭を振ってその考えを追い払った――まさか、ね。そんなことはあるまいよ。
「おまえのそれ旨そう、一口くれよ」
「はいはい、ご随意に」
冢宰閣下の皿に直箸を突っ込んでも許されるのはひょっとして――いやいやいや。まさか、だ。
そのとき、回廊側の開いた窓から小さな鳥がひょっと風を切って飛び込んできた。耳慣れぬ鳴き声をさかんにあげながらぐるぐると頭上を旋回していたが、やがて恐れを知らぬふうに卓にすとんと舞い降りてきた。油まみれの皿のすぐ側を桃色の小さな足が跳び跳ね、赤毛の小娘の皿で立ち止まると、ぴるぴるちゅるり、とひときわ高くさえずった。さっき庭で鳴いていた、雲雀ではない謎の鳥だ。大きさは掌の半分ほど。声の大きさに反してずいぶんと小さな体をしている。羽毛の色は何色とも形容しがたい虹の色にきらめき、愛らしい体のわりにくちばしは猛禽のように鋭く尖って曲がっていた。
「よしよしかわいいな。腹が減ったんだな、おまえも飯を食うか」
「お腹、ご飯と」
「うるさいぞ浩瀚。ほうら小鳥ちゃんお肉だよ。いっぱい食えよ」
驚いたことに、小鳥は差し出された牛丼の肉に猛々しく食らいついた。がつがつとあっという間に飲み込むと、物欲しそうに首をかしげて俺を見上げた。
「ああその男は食べちゃだめだぞ。まだ生きてるから」
死んだお肉を食べなさい、と冢宰の皿からくすねた鶏を差し出すとこれも瞬時にぺろりと平らげる。明らかな共食いだがいいのだろうか。
「肉食なのですか、この文鳥は」
「みたいだな。お願いして、木に実った卵を収穫してこないだ孵ったばかりなんだ。最初から粟穂には見向きもしない」
「祈祷に少々不備がおありだったのでは」
「ほんとうるさいな、おまえは」
いいじゃないか、と油まみれの指をしゃぶりながら小鳥顔負けの獰猛な顔でにやりと笑う。
「こいつは紙は食わない。書類をくちばしに挟んで飛んでも、大事な決裁書類を食べたりはしないさ」
「なるほど。もとよりこの新しい文鳥は堂内の書類運搬に使うおつもりで願ったもの。目的を阻害しないのならば、それで良いのかもしれませんね」
ゆるりと冢宰の唇も不穏に上がる。
「なにしろ、かつて決裁書類を鯉に食わせた男も……おりますしね」
冗談でなく、ひゅっと心の臓が縮み上がった。この男が気弱だなんていったい誰が言ったのか――ああ俺か。俺の目は節穴か、節穴だ。湯気ごしにじっと見つめてくる切れ長の琥珀色は、触れれば切れそうな危うさである。やり手の元麦州候、切れ者の策士――数々の噂はやはり真実を含んでいたのだ。付け加えるなら、かなりの役者だということだ。
「ごちそうさまでした」
掌を合わせる風変わりな挨拶を済ませると、鳥を手で捕まえて立ち上がり、ぽいと無造作に窓の外へ放った。ちゅるりぴるり、と鳴き声を残して、小さな虹色の姿は木漏れ日にまぎれてすぐ見えなくなった。
「この食堂、わりといい感じだろう?」
窓辺からこちらを振り返って笑う。陽光を透かした朱髪は黄金色に輝き、人の形を解いた赤い炎が再びそこで燃え盛っていた。
「ここは身分階級を問わぬ活発な交流の場にしたいんだ」
「……は」
「へつらいもゴマすりも美辞麗句も足の引っ張り合い腹の探り合いも、すべてが閉じた空間の中だけで世界が完結していたから湧いた雑味だ。余分な雑味はいらぬ。すべて省きたい」
風通しを良くしたいんだ、と揺らめきながら炎は歌うように言う。
「温かな飯は互いの警戒を解き、きっと交流を助けることだろう。書類も簡略化する。あなたの罫線の書式は使わせてもらおう。人から人へ手渡す手間と時間を省くために、あの小鳥に書類を運ばせる。そのために紙も薄くて軽いものに変える」
浩瀚、と呼ばれて冢宰が立ち上がった――そうだった、小娘は最初にここに飛び込んできたときから堂々と呼び捨てにしていた。
「後で積翠台へ。私は先に行っている。旨い飯をありがとう。じゃあな……ええと」
「……優奏です」
「優奏。そういえば楽器は何が堪能なんだ?」
「月琴を」
「へえ。知り合いに月琴の名手が一人いるから今度紹介しようか。きっと気が合うよ」
炎が回廊の向こうへ駆けていってしまうと、がらんとした不在がふいに堂の中に落ちてきた。喪失感に襲われ、俺は落ち着きなく身じろぎする。圧倒的な熱と光が失われて、麗らかで明るいはずの堂間がどこか白茶けて見える。
「腹はくちたのか?そなたは若い。足りぬなら遠慮なくもっと食べていけばいい」
「いえ、もう十分です。満腹です」
いかにも優美な動作で長裾を払って、床上を滑るように目の前をよぎっていく上司を見るにつけ、なるほどこれでは足音も気配もすまいよと合点がいった。ある程度剣技の覚えがなければこの所作はできぬだろう。
いつの間にか、俺は己の才を過信しすぎて他者に対してひどく高をくくるようになっていた、つまり傲慢になっていたようだ。そうなってしまうほどに政事に絶望していたということだ。くだらない権謀術数に明け暮れる無能たちにすっかり飽き飽きしていた。苛立ってもいたし、悔しくもあった。なんて糞なんだろうとすべてを軽蔑していた。鯉に書類を食わせたのはだから、靖共様のためでもなければもちろん王のためでもない。己の矜持を守るためだった。自分はそうではない、糞ではないと信じたかっただけだ。
「くだらない処世術は、糞尿の壺の中でもがいているのとさして変わらぬ。しかし汚濁をふっとばしてしまうものが存在するのだ。なんだか知っているか」
「教えていただけますか、閣下」
「『真実』だ。それはしばしば赤い炎の形をしている」
――赤い炎。
「確かに官吏だけでもじゅうぶん国は機能する。だが『真実』の熱がなければ気づかぬうちに凍えていつか破綻する」
戸口を抜けると、庭から爽やかな風がさらりと流れてきて頬を撫でた。どこか若竹のような、すがすがしい香気をはらんだ風だった――まるで、新しい時代の到来を言祝ぐように。
ぴっちゅ、ちゅるり、と姿は見えねどさえずる声がする。楽譜によく似た書類を運んでくれるというあの小鳥だ。歯車がうまくかみ合って回り出した政事はきっと、月琴をつまびくような旋律を跳ねるように奏でてくれるのかもしれない。
共に並んで回廊を歩きながら、俺は少し気になったことを尋ねてみた。
「あのう閣下」
「なんだ」
「小鳥に書類を運ばせるのはいいとして、その小鳥を捕まえて書類を奪ったり偽物にすり替えたりする者は出るのでは?」
冢宰は立ち止まると、ちょっと首をかしげて、例のあの胡散臭い笑顔を浮かべてみせた。輝くような、という嘘くさい枕詞が似合いそうなあれだ。これに惑う女子も多いことだろう。
心配いらぬ、と白い歯を見せた。この瞬間、完爾、という形容は彼のためだけにある。
「あれは、肉食だ」
「……」
冢宰府の席に戻ったら、金輪際もう怠けはすまい。真面目に仕事に励もうと俺はこの瞬間固く心に誓った。
仙籍を頂いてかれこれ18年になる。
冢宰府に配属されてからだともう少し短くなるが、それでも15年。
能筆だけが取り柄の変人の俺だが、ふと食堂の注文棚に書かれていたあのへたくそな、けれどのびのびと闊達な文字は、もしかしてあの小娘が書いたのではないかしらと思いついて……不思議にとてもこそばゆくなった――それこそまるで、心の芯に火が灯ったように。

2020_05_31


5月といっても、相変わらずのコロナ騒ぎでお出かけもためらわれますよね。少し下火になってきてはいますが……このまま感染が抑えられて日常が戻ってくることを祈るばかりです。

外国で8歳?の女の子が「お尻の穴」という歌を作って話題になっていました。素晴らしい才能だと思います(自分のお尻の穴を撫でながら)
お尻の穴ってかなりのスペックの持ち主であり、優れた憲兵でもあるそうですね。ウ○コと屁、固体と気体を瞬時に見分けて「屁です」「よし通れ!」と許可するのもお尻の穴の大事な働きなんだとか。たまに偽申告した固体が屁のふりをして屋外へ出る事故が起きますが、そんな邪悪なウ○コは稀にしか存在しないはずです。
鼻の穴が自分ですぐ目視できるのに比べると、お尻の穴はそこにあるということが実感としてわかるだけで、子供時代に実際に見た人は一握りでしょう。大人になればまあいろんな媒体で見る機会もあるでしょうけれど。
実生活でも、そこにあることは確かだし、いつもとてもお世話になっているけれど、実際にどんな姿をしているのか実は知らないといったことは多々あります。昨今の政治問題なども同じ根から来ているのかもしれないなぁとちょっと思ったりもいたします。
よく知っているつもりで、実はよく知らないことは、この世界に無数に存在します。
まずは知らないということを自覚してから、自分の目で多方面から見てみて、自分の脳みそで自分なりに理解ことが大事なのかなぁ、と。それでもまだ間違う余地はある。判断というものは難しいものです。場数も必要になるでしょう。

我らが閣下は、きっとそういうことに優れている有能な官吏なのだと思います。ううむ惚れちゃう。好き。
何年たっても、新刊で浩瀚の気配すらなくても(泣いてません、これは心の汗です)、やっぱり葵は閣下ラブでございます。
そんな閣下のSSをちょこっと書き始めましたが、今日中にあげるつもりだったのですがちょっと難しそうなので、また後日書き上がったらアップしますね。閣下は自在に演技もするし、自分の印象も見せたいようにコントロールできるんじゃないかな、というお話です。

まだまだ気が抜けない日々が続きますが、ご一緒にまったりと乗り越えてまいりましょう。合い言葉は「お尻の穴」です。
ではでは、またまた!
2020_05_17


みなさま、こんばんは。
葵柳葵子の部屋の時間です。
葵子は本日、こないだやっていた陰陽師のドラマをようやっと見ました。録画だけはしていたんですが、蜜虫の衣装がコスプレっぽかったのでへそを曲げ、まあ後で見るとしようとその折はぶちっと消してしまったのでございます。
肉眼でプテラノドンを見た女である葵子にとって、陰陽師の安倍晴明といえば、映画で清明役をやった野村萬斎さん1本でございます。萬斎さんのイメージときたら風呂場の黴のように強靱にたくましく葵子の記憶に根を張っているので、佐々木さんの清明が果たしてどんなものだろうかと、ちょっとばかり身構えてもおりました。しかし蓋を開けてみればさすがに演技はお上手。ひょうひょうとした食えない清明役で、これはこれでいいなぁと思いました。

あえて難を言えば、安倍晴明はママンが狐、パパンが人間。狐とのハーフだという噂がまことしやかに流れるほどのお人でございます。そのへんの魔物感、エキセントリック感、ちょっと揺らいだらあっという間に魔物側につくだろうなぁというヒヤヒヤするような妖しい雰囲気がもう少しあっても良かったかも……そして色気。魔物という者はたいてい色気があるものでございます。砂糖少々、塩少々、色気も少々足しとうございましたが……いやいや、贅沢を申してはいけませんね。
蘆屋道満とか博雅とかがわりと原作に忠実だったので、2時間ドラマとしてはなかなか良かったです。

そんな感じでホイホイと自堕落に過ごしておりました。途中でプリンが食べたくなったのですが、作ろうにも葵子は極度の料理下手、骨付き肉をむっしゃあと食いちぎるような原始的な生活をしております。作るスキルは皆無ですし、冷蔵庫あけてみたらそもそも牛乳が無かった。電子レンジも壊れている。

ああプリン ぷるぷるプリン 食べたいな ~辞世の句~

俳句でも詠んでから寝ようと思います。季語がないように見えますが、プリンは四季を通じて食べるものなので、実は春夏秋冬の季語です(多分)。

外出自粛が続きますが、コロナさんもいつかはヘタレて消えてくれることを願って。

以下、拍手コメントお返しです♪


2020_04_19


コロナの感染が洒落にならないぐらい拡大しておりますね。
何かと閉塞感が濃く、精神的にも空気が重く感じられるような気がいたします。
オタクのイベントも中止になってしまっていますね。オタクにはつらい時期でございます。イベントあわせで本を出せたらいいなぁというお話もちらりと出ていたのですが、その案もなくなりましたので、予備用に書いておいた短いお話をこちらにアップしています。
本命用にもう少し長めの中編のお話も書きかけてはいましたが、こちらはまだ序盤で足踏みしています。気力的にたぶんもう続きは書けないような気がしますので、またいつの日か、もしも万が一気がむいて仕上げることができたら、そのときにでも……というはななだアカンチンな感じです、申し訳ございません;

一日も早くコロナが収束して、日常が戻りますように。
どうぞ皆様、ご無事でお過ごしくださいね。葵侍、なむなむと心をこめてお祈りしております。

以下、拍手コメントお返しです♪


2020_04_12

溟雨

category: 短編  

身じろぎすると、薄っぺらい布団がかさりと鳴った。湿った藁の匂いがむっと湧いた。
布団の詰め物は綿ではなく、干して隅に積んであった飼い葉用のそれを拝借したものだ。布団の外側にするくたくたの袋が木枠にぶらさがっているのを見つけたとき、しめた、と陽子は心の中で喝采をあげた。ひどく疲れていたし、ふさがっていない傷もじくじくと痛んだ。午過ぎから水以外、固形物を口にしていない胃はからっぽを通り越して鈍重に疼いている。
藁の詰め方など知らないから、適当にぎゅうぎゅう突っ込んでみたらそれなりに布団らしく膨らんだのでまあ良しとした。血を吸って重くぶら下がるぼろ布を右足から引き剥がし、かわりに上着を裂いてそれで傷口をきつく縛った。薄汚く、ほこりっぽい納屋のなかで、そこだけがぽかりと曖昧に光っている四角い灰色の窓――玻璃などなく、板壁に切られたただの開口部でしかなかったが――のそばに藁布団を敷き込むと、蓑虫よろしく丸まって中に潜り込んだ。


予感はあったといえばあった。
しかし、やっぱりそうだったかという諦念が先にたち、危機感はあまりなかった。所詮、その程度だったということだ。
刃が風を切るひゅんという不穏な唸りを聞く前から、研ぎ澄まされた背の産毛はちりちりとひっきりなしに異常を訴えていたし、右掌は無意識に剣の柄を握りしめていた。麦州候が謀反――といえば聞こえは派手だが、その内実はかなり貧相であった。麦州候の命を受けた手の者が、数人の供だけを連れて非公式に麦州を訪れていた王を、隊列の背後から切りつけた、ただそれだけのことだ。策も何もない。
麦州候には王を殺す気などさらさらないだろうと最初から踏んでいた。そしてその通りだった。
新しく就任したばかりの麦州候――浩瀚の反対を押し切って、あえて陽子が就けた――は、白髪白髯の好々爺然とした風貌をもつ老齢の男で、毒にもならぬが薬にもならぬ人畜無害の極みとして広く知られた男だった。
陽子には難しいことはさっぱりわからない。政治に関してはとんと無知だし、血の巡りだってさほど良くないと自認する。浩瀚のように機転も回らないし、人を見抜く力もない小娘だ。ただ、朝議で挨拶に訪れた彼を見てああ、これは……と直感的に思うところがあった。この爺さんの笑顔はなんとなく好きになれない。
広い袖口が翻るたびにふんわりと腐ったような甘ったるい匂いがするので、何の香を使っているのかと尋ねてみると、主に麝香でございます、あとそれに何かと何かを混ぜて云々……という、幼児に説き聞かせるようなもの柔らかな返事が返ってきた。愛妻家という噂だったから、奥方は元気かとついでに聞いてみたが、あいにく枝に実った卵果が割れて子が死んでから錯乱し、今は里に帰って静養中だという。悔やみを述べると、いいえ、と静かで優しい微笑が返ってきた。
「麝香はたしか、鹿からとれるんだったか」
「御意。雄の麝香鹿の、その陰嚢が原料にございます」
恭しく拱手しながら、心なしか陰嚢という部分を強調したように思った。
「あなたの現在の位は麦州の令伊だそうだが、鹿が多いのは麦州じゃなくて揚州だろう?」
「いかにも」
感に堪えぬといった風情で、男は両手を大げさに揉んだ。
「揚州で捕った鹿は、麦州へ運んで香に加工するのでございます」
そうか、と言った。令伊は貼り付いたような白い微笑みを崩そうとしなかった。
そのとき、この男を新麦州候にしようと陽子は決めた。


腐って蛇行する窓枠に水滴がひとしずく爆ぜあがり、まっすぐ頬の上に落ちてきた。
氷の粒かと思うほどに冷たいそれを拭おうと掌で撫でると、また布団がかさついた。清潔な藁だな、と陽子はひとりごちる。秋に刈り入れ、冬に備えて干しておいた手入れの行き届いた藁――大丈夫だ。まだ救いはある。
いつしか少しうとうとと意識を飛ばしていたようだ。ぽかりと見開いた翠眼めがけてしとしととひっきりなしに、天の高みから雨が降り注いでくるのが見える。下から眺める雨は放射線状に尾を引いて、こちらめがけてまっすぐに慕いよる。まるで小粒の流星群のようだった。屋根をたたき続ける雨音が納屋をすっぽりと包み込んで、薄い藁布団だけでは肌が泡立つ。あたりはどんよりと陰りはじめており、あと少しで日が沈むのだろう、黒々とした夜の気配が納屋の隅から濃く滲み始めている。
そっと布団をめくって右足を持ち上げてみると、熱をもって腫れ上がっていた。膝の裏を突かれると歩けなくなるので、あえて腿へと刃先をずらすようにして受け身をとった。動脈を切断したのか思いのほか出血して少しびっくりしたが、そこは神仙、今はなんとか止まったようである。止血用に縛っていた上着の残骸をほどいてみると、ずっしり持ち重りがするほど赤黒く湿っていた。広げてはみたものの、もう上着として用を足せそうにないそれに吐息をひとつついて、納屋の奥へと放った。
むき出しの肩から鎖骨、こぶりの乳にかけて鳥肌がびっしりとたっていた。まだ初冬とはいえ冷雨の暮れ方は、秋の気配をとどめた日中とは違ってぐっと気温が下がる。藁布団に深く潜り込もうとして、陽子はふと喉の渇きを覚えた。
黒とも紫ともつかぬ薄闇に、狭い納屋の中を足を引きずりながら這い回ってみると、隅に積んである藁山のほかには、取っ手のとれた土まみれの桶がひとつばかり、あとはこぼたれた竹製の熊手と、柄と刃がとれてしまったぼろぼろになった鍬の残骸があった。その横に縁の欠けた陶製の茶碗が転がっているのを見つけて、これこれ、これだと嬉しくなって拾い上げる。こびりついた砂埃を吹きとばしながら窓の外へ突きだし、雨水を汲んだ。
ぱたぱたぱた……軽い音ともに水滴が貯まっていくのを見るともなしにぼんやりと眺める。這い回ったことでまた傷口が開いたらしく、あたりに満ちる雨の匂いに動物的な生臭ささが混じる。


陽子の足を切った兵は、気の毒なほどびくついていた。
雨で濡れて刃が滑ったのだろう、それとも予想よりも多く出血したせいか、蒼白の額に脂汗をびっしりと浮かべて、脱兎のごとく逃げようとしたところを陽子の護衛にあっさり昏倒させられ、地に伸びた。虎嘨と桓魋はあえて金波宮においてきていたが、彼らにこそ及ばないもののさすがに少数ながらも精鋭がついていた。
切られた腿を適当に押さえながら、陽子はあっけらかんと笑った。指の間からみるみる赤い筋が流れ落ちていく。
「やあ。ありがとな」
「御礼でしたら、雲の上の御方に」
「帰ったらちゃんと言うさ。それよりも相談だ。もうひとつだけ頼まれてくれないか」
「何をお願いされましてもお断り申し上げるように、と堅く言いつかっておりますればどうぞお許しを」
「雲の上の御方に?」
「雲の上の御方に」
あいつめ、と舌打ちする。跪いた頭をぽんぽんと叩いてやった。
「おまえたちが忠実なのは評価するけど、ここはひとつ王様の命令だよ、聞きなさい」
「……」
「切られた私は重傷を負った。供の者にも見放され――こら怒るなよ、芝居だってば――懐に箱を抱えたままひとりでどこかへ逃げ隠れてしまった……と、麝香好きの麦州候へそう伝えてくれないか。おまえたちは王の消息不明を報告しに今からひとまず州城に戻るんだ」
証拠に血痕はちゃんと残していくよ、と陽気に足を振ってみせる。
「帰路の途中でおまえたちが害される可能性が全くないとは言えない。気をつけて行ってくれ」
「……ご命令とありますれば」
昏倒した下手人の口に布を詰め込み、ここに来るまで乗ってきた華軒に縛って放り込むと、振り返り振り返りしながら帰っていく彼らを、雨に打たれながら一人で見送った。今いる場所は小高い岬の突端のようなところで、そこだけうっそうとした樹影が途切れて丸く拓け、冬枯れした草地となっていた。春になればさぞ花が見事であろう桜林が草地のぐるりを睫のように彩っている。桜林の向こうから急に地面ががくんと落ち込み、まっすぐ下方の港へと通じていたが、崖のそこかしこには頑強な岩が張り出し、その凹凸面に蹄をひっかけて、大きな鹿が幾頭も張り付いては人間どもの争い事など素知らぬ風情で草を食んでいた。麝香鹿である。揚州から連れてこられた鹿はここで放牧され、春の前に生殖器を切り取られるのだ。昨晩から降り続いている雨で、低い空は鈍色の雲綿にびっしりと覆われ、黒々と波頭をたてる冬の海は古い窓を覆った埃まみれの暗幕のようだった。雨は鹿の毛皮もしとどに濡らして、上から見下ろしているといっそう岩と見分けがつき難い。
陽子は濡れそぼる草地の空気を大きく肺に吸い込んだ。拓けた場所であるのに、開放感に乏しい陰鬱な場所だった。
かつて眼下のあの港に、国外退去を申しつけられた女たちが押し寄せて逗留していたことがあった。さほど昔のことではない、つい数年前のことだ。今もまだ少なくない数の女たちがこの地に残っていると聞くが、皮肉なことに以前よりも暮らしにくくなっているようだ。
「……どっちに転んでも」
残念な結果にはなるだろうなと思いながら海に背を向けると、枯れ草のなびく泥濘んだ地面を傷ついた足で歩き出した。さて、と、どこへ潜んでいようか。懐に箱を抱えていたと聞けば、とりあえず放置されることはなく必ず追手はかかるはずだ。どれぐらい時間がかかるにしろ、誰かが探しに来てくれるだろうけれど――
来た道を少し戻ったところで、砂利道から細い道が横に分岐しているのを見つけた。ぎったん、ごっとん、とどこかで水車の回る音が聞こえてくる。冷えた吐息が雨粒を白く、霞のように光らせる。川がある……ということはたぶん、いくつか民家もあるに違いない。
足跡と血痕が残ることを確かめながら横道をしばらくとたどると、楠の大木が茂る根元に半ば崩れるようにして、屋根が斜めに傾いだ廃屋があるのを見つけた。幸い、かんぬきはかかっていなかった。


埃っぽい水を茶碗から飲み干す。
熱があるせいか、口の中が妙にいがらっぽく、あまり旨く感じない。寒気がした。喉の渇きは飲むほどに増してくるようだ。再び茶碗を窓の外へ突きだし、雨水が溜まるのを待つ。
動乱の中で浩瀚が守りぬいた麦州を、一時的にしろ彼に託すと決めたことに抵抗がなかったわけでない。しかしどちらにせよ病は膿として出してしまった方が治りも早いのだ。思い入れのある麦州だからこそ、早く切開したかった。萌芽の条件はそろえた。あとはなるようにしかならない。
ふいに、手の中の茶碗が重くなった。たぷん、と水面が不安定に揺れる。
窓のすぐ外に男がひとり黙然とたたずんでいた。油紙で表を覆った鈍重な灰色の合羽を肩からすっぽりとかぶり、首元で結わえている。草地を歩いてきたためだろう、がっしりした革靴はすっかり泥にまみれていた。斜めに傾いだ編み笠で隠れているので顔は見えないが、すっきりした痩身で骨張っていて背がすらりと高い。気配に聡いことには自信があったのに、これほど近くに来るまでまるで気づかなかった。編み笠の男は供は連れておらず、ひとりきりのようである。
気づけば手元の茶碗の中には濃緑色のものがたっぷりと注がれており、さかんに白い湯気をたてている。
「薬湯でございます」
ぼそぼそと男は言った。声が妙にしわがれていて誰のものともわからない。
「御傷に効くかと――まずはお召し上がりに」
「ああ」
躊躇なく一口含むと、編み笠がくつくつと揺れた。どうやら笑っているらしい。
「毒だとは……思われませなんだか」
「まさか。おまえが私を殺すことはないだろう」
でも苦いな、と眉をしかめる。
「思うに、王が無能だと噂になりさえすればいいのでは?朝廷は整いつつある。しかし法の整備が追いついてしまうと利に疎くなる商売も中にはあるだろう。後ろ暗い闇取引の類いだな。ならば今度の王もまたこうして暗殺を企てられる程度には人望が無く、金波宮はまだまだ乱れているとそう思わせたい――違うか?」
「さて」
編み笠の毛羽だった縁を白い指がちょっと摘まみあげ、溜まった雨のしずくを振り落とした。それだけで笠の角度がわずかに変わり、炯々と光る目がのぞいた。
「そこまでおわかりでしたら、話は早い。箱をお渡しください。あの桐箱でございます」
「……麝香の裏取引の帳簿が入っている?」
「是」
残念だな、と吐息をついてみせる。
「ここにはない。もう昨夜のうちに班渠に持たせて冢宰に届けたよ」
「受け取っておりません」
「なら宮中に別の蟲がいるってことだな。派閥はひとつじゃないわけだ。それだけでもわかって良かったじゃないか――なあ麦州候」
あなたは案外背が高いんだね、と笑うと、機敏な動きで窓枠から身を乗り出し、細い腕をいっぱいに伸ばして力任せに編み笠を剥ぎ取った。白髪白髯の、しなびた皮膚に目ばかりがぎろぎろと妙な照りを放っている老人が、夕闇の氷雨にそぼ濡れた姿で現れた。
「現麦州候なのか、元麦州候なのか――どっちが先にここへ来てくれたのかって、正直なところ一瞬迷ったよ。あなたは気配を殺すのがうまいし声も潰していたしね。でも薬湯に毒が入ってなかっただろう?だから現麦州候のあなただと確信した。浩瀚なら、象が昏倒するぐらいの眠り薬をしれっとぶち込むからな」
足をかばいながら山猫のような仕草で立ち上がる。水墨画のような濃淡に溶け込みながらそこだけ筆で描いたようにくっきりと稜線をあらわにしたむき出しの乳房が、雨のしずくをともしながらつんと上を向いていた。
のろのろとした足取りで、老人は納屋にゆっくりと入ってきた。湿った水と、泥と、あとほのかに甘ったるい麝香の香りが藁臭い廃屋を浸食した。萎びた腰からぎこちなく長剣を引き抜くと、象眼細工の立派な鞘をはらい、さほどやる気のない緩慢な仕草で切っ先を陽子に向けた。
「麝香のことはよく知らないが、卵果に影響を及ぼすっていうのは本当なのか」
「結んだ紐に染みついている香りが強すぎると、枝の根元が腐って実が落ちてしまうことがあると――これは落ちてから知ったことなのだが」
藁の山をどこかぼんやりと見つめながら、心ここにあらずといった様子で老人は言った。
「BSの中国ドラマで似たようなのを見たことがある。私がいたのは蓬莱だから赤ちゃんはお腹にできるんだけど、麝香で流産してしまうんだ。こちらでもそれは同じなのか」
びーえす、…どらま…とおうむ返しに呟いて、細まった目が剣呑な光を帯びる――相変わらず、わけのわからぬことをおっしゃる。
「所詮あなたは異物だ。異邦人なのだ。慶の育ちではない。王には相応しくない」
「文句は景麒に言ってくれ」
裸の肩をちょっとすくめる。剣の切っ先は鈍重に、しかしぴたりと鎖骨の少し下方を指したまま静止している。
「麝香は汁の多い商売だ。材料ときたら鹿の玉だけ、これを少し埋めて発酵させるとあっという値が天井までつり上がる。揚州候はそういうあれこれに長けておいでだ。私は麦州候への推挙と引き換えに彼の話にのった。妻に存分に贅沢な暮らしをさせてやれるはず……だった」
「残念だよ、いろいろと」
陽子はそっと藁の山を振り返った。暗がりの中にわだかまる藁はよく乾燥していて、少々の雨ぐらいでは湿らない。たっぷりと量があり、清潔で、秋の晴天に吸い込んだ太陽の気配をまだ濃く内包する、上質でいい藁だった。
「あなたは決して無能な州候ではない。これだけ良い藁を作る余裕を領民に残しているのだから」
だから残念だよ、ともう一度繰り返す。
「やり直して欲しかったけど。こればっかりは……仕方ないね」
言いながら、納屋の入り口にわだかまるどろりとした闇にかすかに頷いてみせた。
次の瞬間、弾丸のように飛び出してきた桓魋が老人に飛びかかったかと思うと、容赦なく力任せに殴りつけ、剣を奪いとり、皺の多い骨張った腕を折れる勢いでねじあげて跪かせ、拘束した。
「主上、お仕置きはまた後です!」
と一声吠えるな否や、獲物を肩に抱え上げると、つむじ風のようにまた扉から駆けだしていった。息をひとつ吸って、吐いて、また吸って、なにもかもそれぐらいわずかな間の出来事だった。
桓魋と入れ替わるように、うずくまっていたもうひとつの陰がゆらりと戸口から湧いた。陰は縦にゆっくりと伸び上がると、納屋の中に静かに入ってきた。
「や、やあ。これは元麦州候」
元麦州候――現冢宰は、老人と同じような編み笠を斜めにかぶり、油紙で表を覆った合羽を肩からかけていた。しかし足元は外出用の革靴ではなく、室内用の軽くて上品な、刺繍の施された布沓のままだった。腐りかけの床板を確かめるように踏みしめ、ぎ、ぎ、と不穏に軋ませながら陽子の真ん前に立ちはだかる。笠の縁からぽとぽととひっきりなしに雨のしずくがしたたり落ちて、床に水たまりをつくっていく。
しばらくの間、物も言わず、身動きもせずじっとたたずんでいる、その妙な緊張感に先に我慢ができなくなったのは陽子のほうだった。
「なんか言え!」
男の白い手がつと動き、合羽の下に差し込まれたかと思うと、まだ濡れていない上着を引っ張り出した。淡々と歩み寄り、肌寒さに泡だったままのの少女の胸元をそっと覆い隠す。
「ご無事でなによりでございます」
「……」
「現麦州候と、元麦州候を間違いなく見分けてくださったのですね」
そりゃあ、と陽子は顎を反らせた。
「私がすっぽんぽんでいたら、おまえは今みたいになんか着ろとまず文句を言うだろ。彼は麝香の箱がどうのとしか言わなかったもの。間違えるわけがない」
「御意」
視線が腿の傷にちらりと流れたのにめざとく気づいて、
「たいしたことはない」
と先回って申告する。
「こんなものは舐めておけば治るんだ」
「さようでございますか」
編み笠を脱ぎすて、床上に放る。ぎ、と床板が強く鳴った――男が跪いたのだ。翠眼が大きく見開かれた。ぐるりを縁取る朱色の睫がふるふると震え出す。思いのほか熱い舌が、生き物のように刀傷をじわりと舐めていた。塞がったところも、這い回ったせいでまた開いたところも等分に、ひどく愛おしむように丁寧に舌は蠢いた。
「……あいにく、舐めただけでは治らぬようでございます」
「瘍医に診て、もらう」
は、と白い息が漏れる。腿を掴んでいる白い指を邪険に追い払って、一歩後ろに下がった。雨はいまだ屋根を叩き続けている。冬の夕暮れは釣瓶落としに早い。ものの輪郭もどろりと半ば溶け崩れて黒々とした塊と化している。いっそうきつく冷え込んできたというのに、さっきから歯の根がかちかちと合わないというのに、丸い頬ばかりが熾火のようにかっかと燃えていた。
「ちょ、帳簿は」
ぎ、と再び床板を鳴らして立ち上がりながら、男は何事もなかったような温顔で微笑んだ。血を吸った赤い舌先がちらりと口の端に踊り上がって引っ込んだ。
「確かに受領いたしました。ですが揚州候はもう少し泳がせておいたほうが得策かと存じます。こたびの帳簿は闇取引の証拠にこそなりますが、暗殺の証拠としては脆弱でございますゆえ」
「ああ。狸は逃げ足が早くてよく化ける。捕まえるなら準備周到に、だな」
「ご慧眼にて」
帰りましょう、と腕を差し伸べられるのを無視して、男の横をすり抜けて納屋から出た。
さらさらと落ちかかる雨にたちまち結髪が、火照った頬が、借りものの上着が濡れて色を変えていく。背後からすっと編み笠を頭にかぶせられたが、拒否もしないかわりに振り返りもしなかった。
ぬちゃり、と泥が湿った音を立て、男は横に並んだ。ぼそりと押し殺した声で囁く――ひとつだけお伺いしてもよろしいでしょうか。
「なんだ」
「なぜ彼――あの令伊を、麦州候に据えようと思われたのです」
「麦州だって一枚板ではない」
草地の水たまりを不器用に避けながら、陽子は言った。
「おまえが大切に守った麦州だ。膿を出すには、骨を切らせて肉を断つしかない。それには彼が適任だっただけだ。適度に有能で適度に無能、適度に善人で適度に鬱屈した人物」
「……」
「気づかなかった?おまえの辣腕の下で、もう長い間ずっと嫉妬していたんだよ、彼は」
おいで、と手招きをすると、闇の中にそこだけ白く浮き上がった端正な面が途方に暮れたように揺らいだ。さきほどは振り払ったその掌を自分からそっと握りにいく。安心させるように軽くたたいてから、腕を引くようにしてまた歩き出す。
「麝香は当分、生産しないことにしようよ。彼の奥方にせめて良い薬と瘍医を送ってやれ」
「……かしこまりまして」
細道の向こうの暗がりから、たくさんの鉄が雨のしずくを一斉にはじく金管楽器のような音が聞こえてくる。軍だ。一卒はいるだろう。大げさだ、数名でよかっただろうにとぼやくと、男は不本意そうに眉を寄せた。雨でも消えない細工を施した不消灯は禁軍には欠かせない明かりだ。熱を持たない細かく点滅する光が、わずかばかり闇を霞ませている。かすかなその光を浴びた横顔は、もうすっかりいつもの食えない冢宰に戻っていた。
「帰宮しましたら、象が昏倒するほどの眠り薬を飲んでいただきますゆえ」
お覚悟を――おごそかに宣言されて、寒さではなく、陽子はぶるりと肩を震わせた。

2020_04_12


相変わらず例の疫病がじわじわと居座っておりますね。
自分が感染するぶんは別にどうっちゅうこともない(軽症だろうと重症だろうと)ものの、自分が媒体となって人様にうつしてしまうのが怖いというのと、おそらくは自分の所属する職場やマンションが晒されて多方面に多大な迷惑をかけてしまうだろうことが怖い、というのが、おそらくはすべての人が感じてらっしゃる怖さの芯ではないかと思います。二次的な怖さは、時に一次的な怖さよりやっかいですよね。

まあこうなってしまってはもうどうしようもないので、今の段階でできることとか楽しめることをこまめに探しながらぼちぼちといつもどおりに暮らしていくしかないですよね。トイレットペーパーが店の棚から消えたときはお庭の葉っぱで拭こうかとも思いましたが、今のところ葉っぱは未使用で済んでいます。我尻未知庭葉。漢文で言えばなんとなく知的に思えてきます。

土曜日は宝塚にはいからさんが通るの舞台を見に行く予定だったんですが、休演になってしまったので、じゃあ閉鎖空間じゃないところへ遊びに行こうということで、京都府立植物園に行ってきました。
桜にはまだ早いから、あんまりお花も咲いてないかなぁと思っていたんですが、杏の花が満開で、あと椿なんかも咲いていて、とっても春々しく綺麗でしたよ。

杏ってジャムとかお菓子の認識しかなかったんですが、植物園の庭師さんが「あんず、咲いとうねん、見たってや」とイチオシで、ぐいぐいと咲いているところまで連れていってくれました。


花弁がガラス細工みたいに透き通っているので、スケスケ太郎と名前をつけた美しい花。


落ち武者な椿さん。首からばっさり落ちる潔さ。


木に無数の灯りがともっているみたいで既視感…あっ、たぶんモチモチの木ですね。こういう室内灯のデザインとかあったらセレブとかモチモチの木ファンとかに売れそう。


花壇コーナーもわっさわっさと満開でした。


大阪に戻って、阪急百貨店の9Fでやっていたディオール展ものぞいてみました。疫病なんてどこ吹く風、結構たくさん人がみっちりと詰まっておりました。
日本女性をイメージした「桜ドレス」がいっぱい。ディオールさんによると「日本女性の良さはその繊細な美しさにある」んだそうで、うんまあ外人さから見た大和撫子イメージはそうなんでしょう。オタク女子とか割と戦士系だけどな、ガツガツ行くけどな、と思いながら鑑賞してまいりました。


ディオールって腰はきゅっ、背中ばーん、ケツはプリっと、S字ライン命ですよね。締めて緩めての緩急の流れが見事で、どっちかというとシャネルよりも柔らかな甘い演出が上手です。


これは鞄のオブジェで、ガラス細工です。綺麗ですよね。


美味しいものを食べながら、あまりなんだかんだ我慢せず、心地よい、快いものだけを積み重ねつつ、気ままに飽きっぽく日々を暮らしていきましょう。

2020_03_15


もう3月!季節カテゴリ的にはもう春になっちゃいました。
ちまたでは新型ウィルスが席巻して、楽しいイベントごとが延期・中止になったり、学校が休校になったり、マスクやティッシュやトイレットペーパーの買い占めがあったりと何かと悩ましいことばかりですね。ここに遊びに来てくださっている皆様の生活が、滞りなく穏やかであることを願うばかりです。

葵も楽しみにしていたライブがひとつ中止になり(宝塚歌劇のOBさんの生ライブ)、行こうと思っていたフリマも中止になり(石の即売会)、すっかりやさぐれました。
やさぐれたので、ひとりで京都の伏見稲荷神社にぶらりとお出かけしてきました。
折しも1日中曇天から降り注ぐ氷雨、外国人観光客も少ないながらも、それでも参道には屋台がみっちり並んでて、イカ焼きやら焼きそばやらたこ焼きやら売ってました。フランクフルトぐらい欲しかったんですが、雨に濡れそぼった髪を額にはりつかせながらマスタードが蛇行するフランクフルトを黙々とかじる女は一歩間違えると都市伝説な気がしてやめました。
御朱印集めという枯れた趣味をもっている葵ですが、あいにく御朱印帳はコロナのために手渡し禁止になっていました。ぺらっとした紙の御朱印は頼んだらくれるらしいのですが、しばらく待っても御朱印を書いてくださる方が帰ってこなかったので諦めて千本鳥居を上ることにしました。



噂に聞く千本鳥居。
山頂まで延々と参道沿いに並んでいるそうですが、しだいに空気がしんと冷え、深山の翠に朱の鳥居の光景がどこまでも続きます。確かにここには何かがおいでになるという感じがひしひしといたします。
もともと雨の日で人が少ないこともあったのですが、途中で全く人が途絶えて、まるきり一人になりました。
カラスが一羽近くの梢に飛んできて、枝の実をつつくのとふと目が合った気がしました。少し間をおいて山頂からワッと一斉にカラスの大群が鳴き騒ぐ声が聞こえてきて、なんだかひどく不安になりました。
五合目まで上ったところで陽が落ち始め、薄墨が濃くなってきたので、山頂は諦めてそのまま引き返しました。暗くなる前に下山した方がいいような気がしました。
鳥居が一本、根元から折れて撤去されている箇所がひとつありました。鳥居と鳥居の切れ目の向こうはと見ると、急な崖になっています。崖の縁にしがみつくようにして椿の花が真っ赤に咲いていました。あそこで鳥居の隙間から抜け出て椿の花を見に行っていたら――ここではない違う景色が見えたりしたのでしょうか。

すっかり濡れそぼってガクブルしましたが、噂のホラー映画ミッドサマーを見てから帰ることにしました。
映画館もチケ払い戻しとかしている様子でしたが、レイトショーなら人も少ないし、自分一人の自己責任で見る分には人様に迷惑もかけなかろうし、まあいいかなぁと思いました。
スウェーデン版TRICKだという評判のこの映画、ピュアなエグさでぐいぐいきます。
話題になっていたのですでにご覧になられた方も多いかと思います。心霊とかが出てくるホラーじゃないのでお化け好きさん用ではありませんが、心理的恐怖がもりもり。
主人公がパニック障害もちの女子大生で、過呼吸発作を起こしかける場面が多発するので、こっちも律儀に同調しちまって途中からずっとハンカチで口と鼻を押さえてスーハーしてました。
突き抜けた狂気がお好きな方には相性が良さげ、でも繊細な方には劇場での鑑賞はあまりおすすめできないかも……不協和音の大音量の音楽と明るすぎる美しい映像のダブルパンチが2時間以上続くのは結構キツかったので、なんならDVDだったらまだいいんじゃなかろうかという感じでした。音楽がねぇ……凶悪。

葵は、ミッドサマーがかなり気に入りましたぞ。
スクロール下に思ったことをつらつら好き勝手に書きなぐって、今日の雑記を終わりにいたしたいと思います。
そういえば短編をひとつ書いたのですが、ちょっと考えるところがあり未公開とさせていただきますね。そのうちアップさせていただくかもしれません。

<!注意!>
以下ミッドサマーのネタバレを含みますので、以下畳みます。未鑑賞の方は開かないでくださいね。このままブラウザでお戻りくださいませ。


2020_03_01


ゴッホという響きが好きです。
ゴリラとウッホウッホという音の印象の複合体であり、日本人はなぜかゴリラが好きですよね。日本人だけじゃなくて関西人だけでしょうか。知り合いの年配の女性は、若かりし日に旦那様とデート中に「動物園のゴリラにリンゴをジェストミートで投げつけられた。筋肉が素敵だった」とお話してくださいます。ゴリラとのきららかな思い出、うらやましいです。
ゴリラじゃなくてゴッホでした。
日本人はゴッホも好きですね、なぜでしょう。わびさびとあの原色こってり厚塗りの油絵はあまり相容れない気質のような気がいたしますが、今回のゴッホ展も予想を上回る盛況ぶりで、ホビット葵は人様の頭の林立で絵が見えないほどでした。背伸びしたりかがんだりしながら頑張って鑑賞してきました。

初期のゴッホから晩年のゴッホまで、年代を追って並べてございました。
初期のゴッホはなんというか地味でした。アースカラーの茶色とかベージュとか灰色とかで、働く農民の姿をいかにも実直に描いていて、印象としては「凡庸」。可もなく不可もなく。真面目なだけが取り柄で暗い。

中期から少しずつ色彩が増えてきて、ある時期を過ぎると突然、袋を縛った口が決壊したかのように、狂った極彩色がどっとキャンパスに溢れ出します。おなじみのアルルの跳ね橋やヒマワリの絵の、いわゆるゴッホ的な作品群です。
葵は体調不良で発熱するとき、体内にある「熱」をためておく袋がどぷっとはじけて、ねっとりした灼熱の溶岩の飛沫が末端へ染みわたる感覚があるのですが、ゴッホの絵の極彩色もまさに発熱と同じように感じました。病んだ、妙にぎらつくただただ明るい色の奔流です。

やがて精神に異常をきたして病院に収容されるゴッホですが、ねっとりと蠢く、ほぼ黒に近い深緑で「糸杉」の絵を仕上げます。
糸杉は脈打つように胎動してみえるように描いていますが、糸杉は「死」の象徴でもあります。ゴッホの中で死が蠢き始めていたことがわかります。
糸杉のあとは、あちこち枝のもげた松の林を描きます。葉の落ちた向こうに沈みゆく西日がぎらぎらと光り、それから逃げるように誰かがこっちに駆けてくる絵です。
次に描いたのは、ゴッホの筆の脈打つ動きがぴたりととまった、妙に静かな白いバラの絵。ぎらつきは去りました。ただあるのは不思議な透明感と静寂に満ちた空間です。死の際に達した精神状態がこの白いバラなのなら、彼はそのわりに静かに穏やかに生を閉じることができたのではないかと思いました。

ゴッホの才能が開花したのは、病んだものを閉じ込めた袋がやぶけて、内臓の色彩が外へ撒き散らかされて以降でした。
病むことは、何かを生むためには必要な鍵なのかもしれません。
絵なり小説なり漫画なり作品を創り出す人が多かれ少なかれ病んでいることを思うと、なるほど、と納得いたします。
だから葵も変態を苦にせず、これからも変なものを書いて行きます。うんうん。

コロナウィルスやらインフルエンザやらが猛威をふるっている昨今、必要以上に警戒することはないと思われますが、みなさまご一緒にお手々を洗いましょうねえ。

以下、拍手コメントお返しですv



2020_02_09


皆様、あけましておめでとうございます。
ってもう2月ですね、ああ大変ご無沙汰いたしております。十二国記好きの同志の皆様、息災でいらっしゃるでしょうか。

1月はあれです、あれあれあれ……
失礼をば、特に指示代名詞で対象を表すことが増えて参りました。よる年並みには勝てません。胸の谷間もいっそう平らになりました。
あれです、あれ、葵の愛機はwin7だったのでございます。いわゆる乗り換え作業のため、ちょっと不在が長引きましたことをお詫びいたします。
愛機はかれこれ10年近く葵のそばに寄り添い、特に故障もなく(一度ブルースクリーンが出て葵の顔面もブルーに染めましたけど)、アップデートもこなし(一度アップデートができなくなって、瑠璃さまに泣きついて直していただきましたけど)、変なファイルをいっぱい保存しても黙して文句もいわず(いらないファイルを整理しましょうという表示はしょっちゅう出ていましたけど)、人生に絶望しても、胸の谷間が平らになっても、まだこの世を去ることはできない、なぜならばパソコンの中身がひどすぎるから、と強く思うほどにはアダルトな性癖物を保存しつづけ、「変態でもいいじゃない」と鷹揚な包容力で許容してくれた優しいかわいいパソコンでした。
電源を抜いたときは悲しかったです。未だに中身を消せていないのでリサイクルに出せていません。

一方で新しい相棒も我が家へ到着しました。
新しい風、新機win10でございます。シュッとした外観のイケメンさんで、ちょっと気位が高いだけでなく値段も高く(買うときは再び顔面がブルーに染まりました)、接続が時々まだ不安定で(ルーターも変えたからね)、葵の多すぎる打ち間違いに戸惑いを隠せない様子です(加齢で指がもつれるんだよごめんよ)。でも少しずつ打ち解けてきてくれています。これから変なファイルをいっぱい作成して保存していくだろうけれど、どうか末永く故障せず、さほど遅くもならずに仲良くしてくれたらなぁと思います。

あとは実家がらみで旅行に出かけたりして、実家がからむとどうも精神的に多大なダメージをくらう葵、しばらく寝て過ごしたりして、なんだかんだでブログの再会が二月になりましたことをお詫びいたします。

今年はたしか十二国記の短編が出るんですよね、あとイラスト集も。
それを楽しみに暮らそうかなぁと思います。
そうして新刊効果でしょうか、わりとご新規さまもツィッターなどにぽろぽろ散見されるようになってうれしい限りでございます。
今年はぽちぽちと浩陽の小説を書きつつ、あと一次創作もできたらなぁと思っています。でも葵は基本的に「誰かが読んで喜んでくれる」という確かな手応えがないとどうも書く気がしない野郎なので、一次なんてほとんど誰も読んでくれないものを果たして書けるのかなぁという気もいたしますが……
十二国記は生涯付き合っていけるジャンルとして、自分の創作の原点として、速度を緩めつつも長く細く続けていきたいと思っています。

またおまけの連載も再開させますね。今日はおまけとは全然関係ない短編をひとつ書きかけていました。まだ3枚しか書けてないので、これもそのうちできあがったらアップしますね。
ではでは、本年もどうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m


以下、大変遅くなりました。
拍手コメントお返しです…!(平謝り;)
★R2.2.4 か☆さまのお返事を追加しました!(申し訳ございません!!)

2020_02_02


サボりがちで本当に申し訳ございません。年内におまけの連載を終わらせたかったのですが、いっかな話が進まないままずるずると伸びてしまって、まだまだ続く気配でございます。年を越してえんやこらと続く続くよおまけさん。飽きずにどうか見守ってやってくださると嬉しいです、マイクを持って歌います、聞いてください、「葵のずるずるずんどこカツオ節」。(鰹節をずるずると薄く削るだけの歌詞です)

なにかとバタバタしていて、今日はひさしぶりに1日家にいました。12月にはいって2度目のまったりおうちタイム、やたらとお菓子を食べては寝ているうちに終わりました。晩はスケートを見てから、いただきものの柚子をお風呂に浮かべて湯に沈もうと思います。
いつの間にか、もう来週で令和元年が終わるかと思うとびっくりです。今年、葵はいったい何をしたのでしょうか。スケートにヒャッハーしたりヒャッハーしたりヒャッハーしたり、やたらと遊び惚けていた気がいたします。
目標だった一次創作も、ネタを集めるだけでまだ一文字も書きださないままになっているので、これは来年なんとかしたいなぁと思っております。
さらに来年の目標は、こちらのブログももう少し真面目に頻回に更新したいものでございます。せっかく新刊も出たことですし、年明けには短編集も発売されますし、イラスト集も出ますものねぇ。公式が動いてくれることは、お肌の艶が増すような心地がいたします。

皆様は今年はどんな1年をお過ごしでしたか?


以下、拍手コメントお返しです♪


2019_12_22


白い陽が甍の群れをじりじりと焼いていた。
回廊はかろうじて陽が遮られているものの、薄暗がりの物影にも熱を帯びた空気が砂ようにさらさらと溜まっている。辺りには青臭い木の香が濃く漂い、匂いに過敏な黄撞の鼻をひくつかせた。そこかしこに張り巡らされた瓦屋根の向こう側に、鬱蒼と茂る樹影が覗いていて、雲海の上とは思っていた以上に緑が多い場所のようである。出迎えに現れた愛くるしい顔立ちの女御に連れられるまま、脇道に開いた木の門を通りぬけ、丁寧に整えられた院子――ささやかな池の周囲に奇岩がいくつか配されているだけだったが――を横目に身ながらしばらく奥へ進んでいくと、やがて渡り廊下のどん詰まりにある居心地の良さそうな小さな堂に着いた。
院子に面した格子戸はすべて気持ちよく開け放たれており、磨かれた木床には艶やかでただがらんとしている。大小の榻がいくつかと、あとは低い円卓がひとつあるきりで、清潔な足ふき布が数枚、窓辺の手摺に干されている。風の絶えた気温の高い午後のこと、軒に吊るされた古びた風鐸はうなだれたまま身じろぎひとつしなかった。かなり大きなその風鐸の角に頭をぶつけないように注意しながら、おそるおそる沓を脱ぎ捨てると、段を上がったすぐ横に白地に青い染付が施された素朴な水甕が置かれていた。銀製の柄杓が甕の木蓋に立てかけてある。
院子の奥には丈の低い塀が遮っていて、そこにも門がもうひとつあった。越えた向こう側にも庭と建物がある気配だったが、しっかりと閂がかかっていた。
「本日、主上の御前で演奏いただくのは夕餉がすんだ後になります。夕餉はこちらで準備しますので、お召し上がりください。食後に軽く湯を使っていただき、お着替えなさってから奏上殿の舞台へとお連れします。それまでの間、しばしご休憩くださいませ」
着替えなどはあとでお持ちしますね、と笑って踵を返しかけてから、そうそう、と振り向いて、女御は堂の奥を指さした――あたしったら肝心なことをお伝えするのを忘れるところでした。
「くだんの水琴はそれ、そちらの棚の奥の段にのせてございます。音は鳴りませんが、どうぞご自由にお手にとってご覧になってください」
黒髪の女御が消えるのを待たず、すぐに琴笙はばたばたと奥へ走っていくと、棚から楽器を引っ張り出してしきりに撫でたりさすったりし始めた。楽器に全く興味がない黄撞は、背に負っていた籐籠を床に下ろし、ほっと息をついた。今宵使うだろう香炉や香木、幻香の粉末の入った硝子瓶などをとりだしては円卓に並べていく。琴笙がその日に弾く曲が決まっている場合は使う幻香の種類もある程度絞り込めるのだが――それでもその日の温度や湿度、時間帯による空の明度や、たとえば室内であれば灯りの多さ、色合いなどで条件は変わって来る。今回は曲も未定なら、舞台とやらの明度も見ていないのでわからない。かろうじて宵の口という時間帯だけは今わかったわけだが……一応、手当たり次第に鄙屋の屋根裏にある瓶はひとくさり詰めてきた。重い籐籠の紐が食い込みっぱなしだった肩が痛んで仕方がない。
「これ黒檀でもなければ紫檀でもない。おい、なんだと思う」
べいん、と弦をはじく間抜けな音がする。べいん。ぺちっ。ただの鞭うち音だ。
「知るかよ」
瓶の蓋をほんの少し開け、隙間から粉末の香りを吸い込んで確認しながら考え込んだ。待てよ、湿度だ。そうだ、水琴は水をかけねば鳴らぬのではなかったか。だとしたら香炉の火は――
「おい黄撞」
「ったくうるさいな。おまえは一人で準備もできんのか」
「これを見てくれよ、なぁ」
ぐいぐいと脇腹に木の塊を押し付けてくる。睨みつけてやったが、押し付ける勢いは止まらず、気づけばちゃかり琴を膝にのせられていた。やれやれと肩をすくめて、瓶を卓に置いた。
「これは……一本の木から作られてはいないのか?」
その琴は、奇妙に細長くて、曲がりくねった形をしていた。もともと琴という楽器は細長いものだが、それにしても幅が異様に狭い。狭い場所に複数の弦がひしめくように長々と這っている。楽器について詳しくない黄撞でも、これは一本を押さえたらたちどころに隣の弦に触ってしまいそうで、かなり弾きにいだろうなと予想がついた。艶やかな表面には木目がいっさいなくい。代わりに市松模様のような不規則な四角がぎっしりと並んでいるばかりだ。四角はそれぞれが非常に小さくて、細かな破片を緻密に組み合わせながら根気よく整形したのだと思われた。
破片は互いに糊で固めてあるのか?――しばし考えてから、否、と首を振る。糊は使われていないはずだ。水を浴びれば糊が溶け出してしまう。それでは音は鳴らせまい。
「前に水琴を弾いたことがあるって言ったろ」
ぼそぼそと琴笙が言った。
「俺の師匠が持っていたやつには美しい木目があった。胡桃の木をくりぬいて作られてて、重厚ですごく音が響いた」
「木をくりぬいて作るのと、破片の寄せ集めで作るのとでは音色が変わってくるのか」
「ああ、響きがな。寄せ木だと格段に悪くなっちまうんだ。俺は勝手に……そう、水琴なんだからどれも双子のように同じ作りをしているもんだとばかり思っていた」
べいん、とまた弦を弄って、俺、ちゃんと弾けるかな、といささかおぼつかない調子で呟く。
「濡らしてみろ」
黄撞は上がり框のはたにある水甕に顎をしゃくった。
「……あ?」
「甘えるな。ここまで来といて弾けませんでは済まされんぞ。やるしかないんだ。とりあえず試せ。音さえ鳴れば、あとは私が幻香でなんとかしてやる」
ふと嗅いだことのある香りが鼻先をかすめた……気がした。かがみこんで膝の琴に顔を寄せてみる。院子の砂利にはね返った白昼の光は、格子窓を越えて室内に忍び入ったところで明るさを削ぎ落し、濾過された熱でじんわりと琴を温めている。その結果、木片の隙間からごくわずかに香が滲んでいるのだ。
「これは香木だ」
柄杓に汲んだ水がきらきらと陽を弾いて、振り返った少年の削げた頬に細切れの虹を飛ばしている。
「……この木片は、おそらくは葛の木だろう。あれは蔦のように他の木に絡みついて伸び太る。体を支える必要がないので根は頼りない。あまり香りには使わないんだが」
自分の師匠の、老いた皺だらけの顔を掘りだしながら、不器用に記憶の底を探った。そうだ。確かわざと傷をつけて苛めて育てるのではなかったか。
「刃で傷をつけたり皮をはいだりして苛める。そうすると樹脂が過剰に分泌されて木質に溜まる。それが香るんだ。いくら傷をつけてもさほど香らない葛もあるから、こればっかりは育ててみないとわからない」
ぽとん、と目の前を水滴が通過した。柄杓の水が琴の表面に滴り落ちたのだ。
その瞬間――ぶるり、と水琴は身震いした。滴を舐めようと、細く長い身をくねらせている。
「わっ、動いた」
思わず膝から琴を払い落す。
ぽとん、ぽとり、ぽとぽと、
とんとん…ぴしゃん、したたたたた……りん…、
柄杓の水が珠になり、糸になって零れては琴をしとどに濡らしていく。
ふうぅ……と長い長い吐息のように、突然、どこからかどっと風が湧き起こった。
かしゃかしゃかしゃ、りいりいんりりりん!
軒先の風鐸が激しく揺さぶられ、昼下がりの室内はたちまちさまざまな音でいっぱいに溢れかえった。
りりん、しゃしゃしゃしゃ、りりいん、ぽとん、りりん、ぽとり、からんからん!
「あ、」
琴笙が口をぽかんと開けた。
――がっしゃん!!
何かが勢いよくはずれる音がした。
風は途切れることなく、ふうふうと吹き続けている。この風はなんだ、いったいどこから吹いてくるのだろうと思うけれども、どうしても胸いっぱいに吸い込まずにはいられない懐かしい香りがする。結い残した後れ毛が風に煽られて、子供から大人へとかわる境界線に佇む少年の額に、千々に乱れた虹がさかんに踊っている。
院子を越えた向こう、低い塀に設けられた門扉の硬い閂がいつの間にかはずれて落ちていた。さっきの音はこれだ。ぽかりと開け放たれた向こうの景色が透けている。院子の続きで、たぶん庭が広がっているのだろうという予想に反して、その隙間はやけに仄暗く、明らかに室内の様子であった。ひたすらに伸びる廊下の両側は壁がせまり、丈高い扉が幾つもそそり立っては隙間なく並んでいる。
裸足のまま院子を抜けると、門の入口を覗き込んだ。扉の向こうから強い香りが漂ってくる。風は門の向こう側からこちらに向かって一直線に吹いていた。真正面から勢いよく風に殴られて、思わずたたらを踏む。
濡れた水琴を抱えこんだ琴笙は、黄撞の上袍の裾をしっかり握りしめながら背に貼りついている。行こう、行ってみよう、というように黄撞の尻がさかんにつつかれる。
門境をまたぐとき、廊下の奥の暗がりから少女の笑い声がかすかに響いてきた。どこかで聞いたことのある声だ、と思ったときにはもう、二人は見知らぬ暗がりに立ち尽くしていた。背後を振り返ってももう、あの明るすぎる清潔な院子はどこにもなかった。前方と同じく後方にも、ただ暗い廊下が続いているばかりだ。いったい門はどこに消えたのだろう。
黒光りする廊下を形作る線が収斂する彼方の一点で、ちらちらと何かが明滅していた。後ろからまた尻をつつかれた。うるさい、と乱暴に膝頭を蹴ってやる。
黄撞は陰気な廊下に、そっと足を踏み出した。





2019_12_22


私信をちょこっとのせさせてくださいね。

>>先日、祭りの情景~夏~にコメントいただきましたtomboさま


2019_12_03


とうとう今年も残すところあとひと月になりました。
いやはや…流れていく時間の早さに毎年ビビります。今年いったい、自分は何をしていたんでしょう。はらほろひれはら、ぱやっぱやでございます。

先週末はNHK杯を見に札幌にお出かけしていました。
試合のチケットはものすごい倍率で4回の抽選のことごとくに落選したのですが、エキシビションだけ当たったので、ホイホイと飛行機に乗りました。飛行機に乗るのが久しぶりすぎて、ブーツ履いていったら保安室で脱がされるってことを忘れていました。脱ぎました。脱ぎましたけど、たぶん葵のブーツはすごく臭かったので、検査室のバイトの兄ちゃん、薔薇の香りでなくて申し訳なかったです。
現地では、十二国記の民人であり、かつスケオタ仲間でいらっしゃる、けださまとご一緒させていただきました。試合はNHK局のパブリックビューイングで観戦し……ようと思ったのですが、会場がぎゅむぎゅむだったので、局の入口にある普通のテレビで普通に観戦しました。8Kテレビもありましたけど、距離が遠いせいかさほどクリアな印象はなく、2Kでも最前列なら十分に楽しめました。
行きたかった六花亭のカフェにもご案内していただいたり、ホテルまでの道のりをご一緒していただいたり(方向音痴なのでめちゃくちゃ助かりました;)、ほんとうに感謝が尽きません。けださま、その節は大変お世話になりました、ありがとうございましたm(__)m!
いただいたハスカップもうまうまですっかりハマっております。ヨーグルトに合いますねぇ。ハスカップ&ヨーグルトは、まるで陽子&浩瀚みたいです。
(ネットでジャムを買っちゃおうかしらと画策中です。甘酸っぱくて癖になるぅ)

札幌に滞在中はわりとぽかぽかだったのですが、帰宅したら吹雪になったみたいなので、間一髪でございました。吹雪なんて慣れていないふやけた関西人はたぶん積雪に埋もれて凍っていたと思います。でもとても綺麗な街だったので、また機会があればぜひもう一度行ってみたいです。

2019年は十二国記新刊が出るという歴史的な年でもありましたね。新刊の感想をちょこっと下の記事に書いてみました。でも途中がツラすぎてあまり読み返してないので、考察もヘッタクレもなくすごく浅いです。お許しください;

皆様の今年一年はどんなことがありましたか?


以下、拍手コメントお返しです♪


2019_12_01


皆様、こんばんは。
「白銀の墟、玄の月」1~4巻はもう読了なさいましたでしょうか。
葵太郎も、読み終わった感想などを心の赴くままににょろにょろとしたためてみました。
たいしたことは書いていませんが、思いっきりネタバレしてますので、以下畳みます。

<ネタバレ注意!!>
まだ読了なさってない方は決して開かないでくださいね。どうぞご注意くださいませ。

すでに読了なさっておられて、ちょいと読んでみようかなぁという方のみどうぞ!
(※繰り返しますが、ほんとに大したことは書いていません;)


2019_12_01


やあ皆さま。週末にはいよいよ3~4巻が発売でございますぞ、お覚悟はよろしいか?
世間様は1~2巻読了派と3~4巻が発売されてから一気に4冊読む派に分かれておりますね。
景陽派の葵の友人の1人も「年末年始のお休みのときに4冊一気に読むで…酒を手元においてな…」とか申しておりました。酒はやめたまえと言うておきました。酔った頭であの難しい漢字の人名・地名の奔流はさすがにキツそうです。
葵はもう1~2巻読んじゃったけど、さあ3~4巻どうなりますかね……逆に、あと2冊で足りるのかい?と心配になります。戴の行く末はなんとかまとまるとして、え、慶は?陽子さんたちどないなったん?というところまで、果たして2冊でまとまるのでしょうか。
舜はもう全然出てこないで終わりそうですけど。うん。個人的に舜については、嘘八百な祭りを勝手に捏造した覚えがあるので、その点はちょっとだけホッとしております。

この週末はスケート漬けでちょっと人間をやめていました。言い直しましょう、いつもは人間の皮をかぶっているのですが、ちょっとチャックをおろしていました。
今季のグランプリファイナル女子はロシア勢だらけで、そこにテネルとベルちゃんが入るかな?って感じでしょうかね…梨花ちゃんが入れば、唯一の日本勢になりますけれど。葵はロシア勢の中ではコストルナヤ選手が好きです。所作が美しいしキレキレだしジャンプは高いし、ステップもスピンも素敵。容姿も妖精さんみたいですよね。トゥルソワちゃんは可愛いですが、ジャンプ以外の要素がちょっと体操的。
それでも、この4回転を跳ぶことにアイデンティティの軸を置いた若いロシア娘さんたちが、あと2年ほどでそのジャンプが確実に跳べなくなっていくのを目にするのはツラたんです。ピークが15歳というのは、どうなんじゃろう婆さんや。女子フィギュアとはいささかグロテスクな競技かもしれません。成長途中の骨にあれだけの負担をかけ、食事を極限まで節制して習得したジャンプがわずか数年で跳べなくなり、表舞台から消えていくというのは、うーん。

さておき、週末の新刊に備えてみなさま、鬨の声をあげましょうぞ、やあやあ!


以下、拍手コメントお返しです♪




2019_11_04


短いですが、おまけ3を更新しました。
もう10月も終わりなんてガクブルです。時間はどこへ行ったのでしょうか。
お腹がすいたので、食物を買いにスーパーへ行ってきます。ではでは~
2019_10_27


回廊の短い階を下りる途中に板張りの小さな踊り場が設えてある。
さらにもう数段下りきれば太い回廊は円形の広場に至り、そこで細切れの三叉路に分かれて、屋根を伴ってそれぞれの府台へと細く長く伸びてゆくのだが、欄干で囲われただけの狭い踊り場に、数人の夏官たちがてんでに布巾を握りしめ、額を突き合わせ、床にかがみこんでなにやら声高に騒いでいた。
干した甘草の茎を唇だけで器用に咥えこみ、噛んでは汁を吸いながら、汗ばんだ胴衣の袷を緩めて風を入れるために桓魋は立ち止まった。ちょうど午前の練兵が終わり、井戸水を浴びにいく途中だった。
「どうした」
「あ、これは青将軍」
慌てて立ち上がって礼をとるのを手を振ってやめさせる。背後の階から水音がひっきりなしに響いてくる。結構な量の水が、まるで滝のようにさらさらと階を流れ落ち、おかげで小さな踊り場はすっかり池のようになっている。水は集まった夏官たちの沓や裾をぐっしょりと濡らしてから欄干をすり抜け、飛沫をあげながら下方へと奔放に散っていく。
「ひどいな。どこから湧いている」
「わからないのでございます。これより上の階は乾いておりますゆえ、段差の途中から湧いているとしか思えません。さっきまで水の気配などひとつもなかったというのに、唐突にどこからともなく湧き始めまして……このありさまに」
お手上げといった調子で首をすくめ、まだ若い夏官はずぶ濡れの布巾を胸元に掲げてみせた。回廊の管理は夏官の仕事ではないが、女官や下男がうろたえ騒ぐのをつい見かねたらしい。
「放っておけ。例の『幻水』だろう、おそらくすぐ消える」
「濡れた感触がしっかりとございますが、本当に消えるものなのでしょうか」
誰かがうっかり足を滑らせでもしたら、と別の夏官が生真面目そうに口を挟むのを、そんな間抜けは放っておけ、と笑った。ここは俺がやっておこう、おまえたちは飯でも食って来るがいいと促してやれば、若い夏官たちは総じてホッとしたように肩の力を抜いた。
彼らの背が小さくなるまで見送ってから、ぷっと甘草を吐きだすと、萎れた茎は踊り場に溜まった水面にぽとりと浮き、ゆるりと流れて欄干の向こうへと消えた。
ちょうど中天に鎮座する太陽の光がきらきらと反射して、小さな池はさながら銀粉を散らした螺鈿の木箱のように見えた。
「さて、どうしたものかな」
試しにひゅうっと調子はずれの口笛を吹いてみたが、水は素知らぬ顔で流れ続けている。さらさら……さらさら……さらさら……涼しげな水音は本物の滝と比べても遜色がない。これが幻だというのだから、全く妙なものである。
「ま、今日は水琴を弾く楽師がようやく街から上がってくるらしいから、そいつに頼むかな」
ひゅうっともう一度口笛を鳴らすと、ごとん、と苛立だしげな打音がどこからともなく空中に響いた。現在、王の正寝に置いてあるという水琴は、どうやらご機嫌斜めのようだ。
「こりゃあ、この水は口笛ぐらいじゃ消えそうもないな」
三叉路のどこか奥のほうで、わぁ、とおもむろに声が上がった。水が、水だ、布を、誰かおらんか、と騒いでいるのが日陰の風にのって微かに聞こえてくる。不思議な水が、またあちらでも新たに湧き出したらしい。やれやれとひとしきり尻を掻くと、桓魋は滝を掻き分けるようにしながら、階をゆっくりと上り始めた。



『幻水』が宮殿のあちこちに忽然と出現し始めたのは、今より少しばかり遡る。
ちょうど早春の大掛かりな御庫の虫干し作業を終えた頃合いではなかったかと記憶しているが、当時はいろんな出来事がやたらと混在していた時期だったので定かではない。延王がふらりと空から降ってきたり、それを追いかけて延麒が飛び込んできたり、時を同じくして氾王がふらりと禁門に立ち寄ったかと思うとそのまま居座り、離宮に荷ほどきをして滞在を決め込むなど、とにかく宮全体が非常にざわついていた。
ある日、積翠台に籠って真面目に仕事にいそしんでいた景王が、棚の上の巻物を取ろうと卓上にあがりこみ、危なっかしく背伸びをして棚の引き戸を開け放ったところ、ざあっという涼やかな音と共にかなりの量の水が降ってきた。棚から湧いたとしか思えぬ水は後から後から頭上に降り注ぎ、積んであった重要書類の類をことごとく水没させ、溢れてかえって床上を浸し、いっかな衰えぬ勢いのままとうとう膝下まで溜まった。
悲鳴をあげる女官、ぷかぷかと陽気に水に浮かんだ御璽、水草のようになびく筆、ふやけてふくらんだ綴本、何の動揺もみせずに座ったまま書類を読み続ける冢宰の温顔、歓声をあげてさかんに足をばたつかせる王、という阿鼻叫喚の図を破ったのはやはり自国の麒麟だった。
衝立を回って姿を現した景麒は、その色素の薄い瞳をわずかに瞬かせただけで、飛沫をあげて呑気に泳ぎ回っていた己の主にいとも冷ややかに言い放った。
「お静まりなさい。いったい何の騒ぎです」
「よくわからん。わからんが水だ。水が降ってきたんだ。即席プールだ」
「……水?」
美しい眉がすっと顰められる。
「水などどこにございます」
「えっ」
ばたつかせていた足を止め、床に尻をついた姿勢のままきょとんと麒麟を見上げる。手で水面を叩くと、ぱしゃんと確かに水音が鳴った。
「ほら。水だろ」
「見えません。いったいどこから湧いたというのです」
「あそこの棚」
背の高い景麒は卓に上がらずともやすやすと棚に手が届く。しばらく優雅な白い手を彷徨させて中を探っていたが、やがて細身のすらりとした琴を抱えて引っ張り出した。丈はおよそ四尺ほど、七本の絹弦がぴんと張り詰めている。渋みの強い木質は黒檀だろうか、紫檀だろうか――木目は古色蒼然としており判然とせえず、両端は摩耗してすっかり削れている。琴柱は見慣れないごつごつとした天然の巻貝だった。
「主上。これは何かとお聞きしても?」
「見りゃわかるだろうが」
陽子は裾を絞りながらしぶしぶ椅子に座り直した。冢宰は向かいでまだ黙々と書類に目を通し続けている。
「塵芥場から拾ってきんだ、まだ弾けそうだったから。勿体ないだろう」
「なんと。また塵をあさるような真似を」
瞼を掌で覆って天井を仰いだ麒麟に、おまえ、琴が弾ける?と呑気に尋ねる。弾けませんとぴしゃりと返された。
「おまえにはこの水が見えんのか」
「全く」
「台輔にはお見えにならないでしょう、『幻水』でございますゆえ」
一段落ついたのか、ようやく書類を置いた浩瀚が落ち着き払って顔を上げた。
「神獣である麒麟には、あやかしの類は御目に映りません。惑わされるのは我ら人ばかりでございます」
引っ張り出された古い琴にちらりと目をやると、おもむろに手を伸ばして弦の1本を弾いた。ぺそっと音色ともつかぬいかにも愛想の無い叩音がしたきり、琴は変わらずむっつりと黙り込んでいる。陽子は首を傾げた――鳴らないな。
「壊れてるのか」
「水が無いだけでしょう。水琴はその名のとおり水を好み、浴びたがる性質を持ちます。乾いた場合はこのように『幻水』を出現させ、人に水を強請るのでございます。また実際に濡らしても、誰でも弾けるというわけではございません……水に属する奏者が奏でませんと。条件が整わない限り水琴は鳴りませぬ」
「水に属する奏者って?」
「音にも性質がございます――水の音、火の音、風の音、土の音、光の音。主上にも覚えがございましょう、何か懐かしい曲を聞いたときに体内に感じるおぼろげな感覚。その属する性質の由にございます。水琴は水の音の遣い手でないと波長が合いませぬゆえ、響かぬのでございます」
「糞ややこしいじゃないか」
「主上、さようなお言葉遣いを、」
「うるさいぞ景麒。私は品とは波長が合わんのだ」
そもそも、と卓に両肘をついて小さな顎をのせる――なんで水なんか好むんだろう?
「琴の材質は木だろう。水との相性がいかにも悪そうだけど」
景麒は調べるようにそっと琴の弦を弄っていたが、ふいにわずかに表情を動かしたかと思うと、耳を琴の表にぎゅっと押し当ててじっとしている。
「その昔、楽器を満載した舟が雲海に水没したことがございました。その中からかろうじて救出された2面の琴があったとか。それらの琴は以来水をかけねば全く鳴らなくなってしまったそうです。1面はすでに毀たれたと聞いておりますゆえ、思うにこれは残る最後の1面かと」
「へえ……」
「主上」
「なんだ」
耳を琴から離すと、景麒がぼそりと呟く。
「寂しい、と」
「あ?」
寂しい――と繰り返す。
「――そのように、琴が申しております」
陽子と浩瀚は、そろって顔を見合わせた。
いつの間にか、さらさらと棚から噴き出していた派手な水音が絶えている。積翠台を風呂場に変えた大量の水は、跡形もなく消え失せていた。



2019_10_27


みなさま、こんばんは。青柳葵子のお送りする「葵子の部屋」の時間です。
今日のイカれたメンバーをご紹介しましょう、アイウエオ順にくろまぐろさま、桜蓮さま、ちりさまの御三方です。

というわけで恒例の浩陽オフ会でございました。今年のテーマはワクドキの「新刊についてぬるぬる語り合う」でございます。
葵は15日に新刊が届いてからエイエイと気合を入れ直し、2巻の半分ぐらいまでは頑張ったんですが、読了ならずのままの参加となってしまいました。
待ち合わせ場所にはまず、蓮の良き香りを醸しながらふわふわと桜蓮さまが漂ってこられました。待ち合わせ場所でもしつこく新刊を読んでいた葵を「あ、読んどる」と見つけてくださったのでございます。桜蓮さまが「あら、わたくしもちょうど同じぐらいのところまで読みましたのよ…まだ全部は読めていませんのウフフ」と天女のように微笑んでくだったので、葵めも平坦な胸をホッとなで下ろしました。良かった良かった。読了組はちりさま、まぐろさま、未読了組は桜蓮さま、葵という次第になりました。

ピザが美味しいんやでというオサレなお店でピザとパスタとドルチェと飲み物というご機嫌な満腹セットを注文し、さんざんお腹を満たしてからカフェ屋へ移動。ねっとりと語り合いました。

新刊が全く読めなかったメンバーがいる場合は、「お股に金箔を貼る話」をするよと武士のような凛々しさで言い切っていたまぐろさまは、みんながある程度新刊を読んでいたにもかかわらず、やっぱり「お股に金箔を貼る話」をなさっておられました。なんでもパーン!と勢いよく貼るんだそうです。効果音はパーン!です。ここ試験に出ます。そうして残念ながら股用の金箔は買えなかったからねぇ、とかわりに金箔入りの飴ちゃんをくださいました。
前日に「代引きで美顔器をお送りしましたよー」という身に覚えのない謎メールが届いたとかで、近日中に美顔器が配達されてくるご予定なのだそうですが、その後一体どうなったのでしょうか…震えながら続報を待っておりますよ。
帰りしなに百貨店でお高い吉野葛をお買い求めになり、薄い葛湯はどんな味、きっときっと虚無の味……と妙な歌をお歌いになりながら太平洋をすいすい泳いで去っていかれました。

クールビューティなちりさまは、「ふ」がありましたね、「ふ」がぁ「ふ」がぁぁ、と陽気なムスカのように喜んでおられました。「ふ」とは「冢宰府」の「府」でございます。かれこれ紡いだ二次で、たぶんあるんだろうぜという予想のもとに閣下がお仕事をなさる「冢宰府」を勝手に開設してきた我ら浩陽民ですが、実際に原作の中で「冢宰府」や、また二番手の「冢宰輔」という記載があることに改めて幸せを噛みしめてしまいます。
ちりさまがご覧になる李斎さんは「信じたいことを、信じたいように信じる人」という印象で、それは軍の中にあるならばとてもぴったりくる資質なのだろうけれど、いざ軍から離れて一般人になってしまうとちょっと危ういんじゃないかなぁ、とおっしゃっておられました。
ちりさまは公式の缶バッジや付箋を買って来てくださって、我ら地方民に分け与えてくださいました。

葵は景麒の生首と華胥のバッジをいただきましたよ。

桜蓮さまのご覧になる李斎さんもまた「一度思い込んだ情報に、新しい上書きがしにくい人なんでしょうねぇ」と、ちりさまと御同様のことをおっしゃっておられました。桜蓮さまは新刊と並行して冬栄や黄昏などもお読み返しになったそうでございます。
「戴国のメンズはみんな筋肉でできている」と筋肉説をさらり述べ、そういえば戴では半獣の記載がないけどいないのかしら?と首を傾げておられました。寒い国なのでモフモフ系の半獣がいたらすごく生き残りやすそうですよね。
昨年は「ウン♡」と桃をねじっては皮を剥いておられましたが、今は桃のシーズンも終わって葡萄をピラミッドのように積み上げる日々だそうです。
先日、お空の星を見に遠出なさいましたが「雨だったの。うん、霧も出てたわ…」と虚空へ視線を漂わせ、リベンジでまたお空の星を見に遠出なさったときにも「また雨だったの。うふふ…」とコーヒーカップをカチャンとお鳴らしになりました。お空の星を見に遠出なさったお土産に「麒麟だと思えば麒麟に見えてくる『鹿クリップ』」をくださいました。

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、お別れするときはやはり寂しい思いもしましたけれど、また会いましょうぞ同志様方。夢のようなひとときをありがとうございました!m(__)m
3~4巻発刊が楽しみなような怖いようなですけれども、共に手を携えながら、どんな結末になったとしてもそれを乗り越え、萌えをよすがに無事に生き残りましょう。

皆様はもう読了なさいましたか?


2019_10_20


みなさま、こんばんは。
超大型の台風19号の通り過ぎた爪痕もまだ生生しいですが、みなさまのお住いの地域の被害が最小限であったことを願ってやみません。このたび被災なさったすべての方々に、心からのお見舞いを申し上げます。

蝕と同時にとうとう新刊が発売となりました。ツィッターなどでも続々と十二国民の読了報告が上がってきていますね。
葵は密林で予約していたので、到着が16日だそうで、まだ手元に新刊がありません。
今週末にいつもの恒例の浩陽オフ会があり、できればその時までに読めたらなぁと思っていたんですけど、ちょっと間に合いそうもないですねぇ……一人読んでない奴がいると、せっかくの新刊の内容を思う存分に語れないでしょうし、オフ会メンバーの皆様には申し訳ない心地がいたします。ごめんよごめんよ。これに懲りて3,4巻は店頭で普通に購入しますぞ。

さて、昨日は石の不思議展に行ってきました。
細々とした石をまた連れて帰ってきましたよ。


今回の目当ては、これ。イリスアゲートをゲットするミッションでございました。
普通のなんてことない瑪瑙なんですが、スライスして光に透かすと虹が出るものがあり、イリスアゲートと呼ばれているのでした。
光に当てさえしなければ非常に地味な石コロですが、ギャップ萌えというんでしょうか…
staub ストウブ 「 ピコ ココット オーバル シナモン 29cm 」 大きい 両手 鋳物 ホー
ほんとは円形にスライスしてある大型のものが欲しかったんですが、ちょっと7000円とかするので手がでなかったです。
↓はオマケでただでもらったやつです。


鳥の卵さんっぽいアズライト。


これも瑪瑙ですが、瑪瑙は総じて安くてお手頃です。色と柄が気に入って連れて帰ってきました。
クッションカバー カバーのみ 北欧 4545cm オシャレ柄 レモン フルーツ 花柄 ポップ ホワイ

石祭のあとは府立植物園へ寄って、秋の草を堪能して帰ってきました。
チョウセンアサガオってご存知でしょうか。
喇叭型の濃い紫色のお花なんですが、朝顔一族の末裔とは思えない地球外生命体的なビジュアルの花をわっさーとつけるのです。人間がうっかり近づくと頭から飲まれてじゅっと脳みそを吸われて地べたへペッと捨てられそうな、ナス色の巨大な花が台風の名残の風にわさわさ揺れていました。
府立植物園はときどき「どーん」「ばーん」という強烈なお花を植えてあるので、なかなか見ごたえがあります。アフリカ産のマリーゴールドなど、正しく黄金「巨人の耳かき棒」でした。球体の花のデカいことといったら――あれはケツの穴には絶対入らないでしょう。いえ、入れる必然もないのですが、たぶん入らないと思います。

たぶん3~4巻が出る11月6日まであっという間に来そうです。
それまで皆さま、どうぞ新しい十二国記の世界を存分にお楽しみください。


以下、拍手コメントお返しです♪
2019_10_14
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いつまでたっても暑いですね、みなさま、こんばんは。

昨日のこと、葵太郎はパーソ/ナルカラーと骨/格診断をしてもらいましたので、ご報告がてらどんなものかちょろりと書いてみたいと思います。
パーソ/ナルカラーは、その人に合う洋服の色をプロに探してもらうというオサレ女子的なもので、一方の骨/格診断はその人の骨格から、合う洋服の形、かばん、小物、靴などを総合的に探してもらうというこれまたオサレ女子的なものでございます。
友人と一緒に、「いっちゃう?」「うぇーい」という軽いテンションでほいほいとお出かけしてみました。

まず到着したのは白亜の麗しいマンションです。ここはギリシアかと思わせる抜けるような白い光溢れるエントランス。めっさオサレなので少々ビビります。しかしエレベーターが古き良きガッコンジョジョーと動く昭和テイストな箱で、ああよかったとホッといたしました。
どうぞ~、と迎え入れられたお部屋はまたもや昭和からギリシアへ逆戻り、真っ白な床、真っ白なカーテン、室内に突如生えている白いらせん階段。白いソファに座ると、先生がレンコンの輪切りのコップ敷きにグラスを置いてジャスミン茶を入れてくださいました。なぜレンコンなのでしょうか、しかしレンコンは美味しいですね。

鏡に向かって座ると、顔の下に次々と色布をあてて、取捨選択していきます。
色味は大まかに心象で分けて春夏秋冬の4カテゴリがあり、どの季節に属するかでだいたいのニュアンスが決まるという感じでした。
不思議なもので、当てる色布によって顔面に縦線が入ったり、顔面が発光したり、目鼻立ちは同じなのにいろいろと雰囲気ががらりと変わるのでした。葵は黄色がかったものを顔に当てると総じて「うっわ、ブッサ!」と目を背けるほどの残念な女になるのでした。
黄色がかったグレーを顔に当てたとき、それまでソファに座ってこちらを眺めていた友人が低く呻いたかと思うと、突然、猛烈な勢いでジャスミン茶を飲み出しました。先生は沈痛な面持ちで、まるで風の絶えた沼の水面のように静かに「ほぉら、葵さんは地蔵になりました」とおっしゃいました。
おお……鏡の中には黄色グレーをまとった葵地蔵が陽光を浴びて座っていました。
先生はそっと「地蔵、あるいは墓石になるので、あなたは黄色グレーを着てはいけません」と微笑まれました。今後黄色グレーを着るのは、CIAに追われて隠れる場所もなく、緊急に何かに擬態する必要がある場合に限られるのだと心に刻みました。

結果としては、葵の色診断は「summer」だそうです。
俗に言うパステルカラー色で、淡く白く夢の中のように曖昧にぼんやりとくすんでいて、青と紫が基調となっている色です。黄色とオレンジは顔が墓石になったりエジプトの壁画になったりするので鬼門です。

一方の友人は「autumn」、大地の実りの色でした。全体的に黄色がかっていて渋いのが特徴で、柿色とかサーモンピンクとかオリーブ色とか、食べ物の名前の色が勢ぞろいしていていかにも美味しそうでした。ちょうど今が旬のハロウィンカラーの羅列なので「買うもんがいっぱいあるわい」と喜んでいました。

続いて骨/格診断です。骨は体型から3タイプに分かれており、外人みたいに腰骨の位置が高いタイプ、首も胴も長い日本人に多いタイプ、骨骨しいがっちりタイプがあるそうです。
葵は「骨骨しいがっちりタイプ」だそうです。どっちかというと男の体型に近い、ゴリラ味溢れる体型です。泣いてもいいでしょうか。
どんな形の洋服が似合うかとすがる思いでお尋ねしますと、とにかく匂い立つゴリラ味を隠蔽することを目的として「ダボッとした服で体型をわからなくする」というアバウトながらも非常に合理的な提案をしていただきました。
生成りのリネンや麻100%のダボっとした自然派ワンピとかが合うそうです。葵ゴリラは、畑をアハハハハと走り回るハイジ、あるいは有機栽培の小麦だけを使用した自家製パンを売る女(※イメージ)を目指すことになりました。先生、ありがとうございます。ゴリラ地蔵・葵は頑張ります。

友人の骨は「外人タイプ」で、とにかくスタンダードなクラシックスーツが似合うから、ハイ、あなたはもう日本人ではありません、今からイギリス貴族になりました、ギムナジウムの制服っぽいものを着ましょうとアドバイスを受けていました。
イギリス貴族と自家製パンを売る女は、面白かったねと大満足で、連れだって白亜のギリシア宮殿を辞しました。

ちなみにこの所属カラーの季節カテゴリと骨のタイプは死ぬまでずっと変わらないのだそうで、一生に一回受けておけばオッケーだそうです。
なんちゃって女子レポ、もといゴリラレポでした。室内を飛び回るヤブ蚊に向けてゴキジェットを噴射したら自分が吸い込んで死にそうになりながら書きました。ご興味のおありになる方のご参考程度になりましたら嬉しいです。


以下、拍手コメントお返しです♪


2019_10_06


9月最後の週末、みなさまこんばんは。
おまけの続きを更新いたしました。前回がかなり前すぎて話の内容を覚えていらっしゃらない方がほとんどではないでしょうか;申し訳ございません。全部書き終わったら短編に収録する予定ですので、その時にまとめて読んでいただいても大丈夫かと思われます。

9月は溶けるように過ぎてしまい、新刊発売まであと少し。
今日は大好きな火村ドラマがあるので、夜更かししようか、録画だけしてさっさと寝ようかうんうん唸りながら悩んでいます。
もう10月かぁ。早いですねぇ…

以下、拍手コメントお返しです♪


2019_09_29


「寛恕通行。入れ」
長く懐の奥に突っ込んでいたため汗を吸いこみ、すっかり柔らかくなってしまった許可証を恐る恐る手渡せば、まだ髭も生えていない若い雉門の門番はあっさり、斜めに倒して黄撞と琴笙の行く手を遮っていた長槍をどけた。
埃っぽい大通りに面して門戸を開いている雉門はかなり地味である。長らく範で暮らした経験のある黄撞からすれば、失礼ながらどこぞの裏口かと見まごう質素さだが、しかしそこは女王を戴くことの多かった慶ならでは、緑青をふいた古びた青銅扉の細身の形状も、全面にほどこされた唐草模様の緻密な浮彫やそこかしこに打たれた鉄鋲がまるで星のように散っている意匠も、どこかふんわりと愛らしく瑞々しさがあった。
官服を脱ぎ、外出着に着替えた殿上人らしき男女や、主人の用足しにでかけるのであろう、せかせかした下僕連中を次々と吐きだす一方で、また逆方向には雲上へ納品する商人が大きな荷を担いで列をなし、階段を占領しようとごった返している。
「びっくりだ。本当に入れてくれたな」
ん、と湿った許可証をつっけんどんに押し付けてくるのをはいはいと回収し、黄撞は琴笙の尻を乱暴につつきまわして段を上らせる。肩をねじ込むようにして無理やりに商人たちの間に紛れ込めば、埃と汗と夏の陽が混じったむっとする厚ぼったい香りが鼻や口にまとわりついた。せいせいと吐き出す息がやけに熱い。まだ太陽は中天をのんびりうろつている最中で、骨まで炙られるような真昼であった。
「そりゃ入れてくれるだろうよ。こないだの選考会でちゃんと俺達が選ばれただろうが」
「あの選考会自体、正直なところかなり怪しいと思っていた」
どうやら本物だったようだがと呟けば、琴笙は首だけを器用にねじって、けっ、と毒づいた。
「選考を担当したのが薄汚い小姐だったからか?じゃあ立派な身なりのよぼよぼの爺なら信用したってのかよ。あの年で昇仙してるなら、あの小姐はそうとうの切れ者だってことだろ。ったく見る目がねぇな、黄撞」
「切れ者、に――見えたか?あれが?」
「いやあ、まあそりゃ……見えなかったけどもよ」
ぷい、と前に向き直ってしまう。都合が悪くなるとすぐこれだ。右からぐいと押して来た商人の腹を邪険に押し返しながらやれやれと吐息をついた。
「私でなくても、あれはまず詐欺を疑うぞ。まあうちは盗られるものなんてはなから何もないから、別にどう転ぼうがかわまんと思ったけどね」
「こうして中に入れたんだ。もういいじゃねぇか」
「まだわからんぞ。いいんだか悪いんだか」
いいんだよ、ともごもごと琴笙が言った――だって、これで水琴に触れる。
「水琴の現物を見せてもらえるんならこれが詐欺でもいいや、俺」
「なんだってそんなにこだわるかね。たった一度弾いたことがあるだけの楽器なんだろう?」
「朴念仁の女にゃわかりゃしねぇよ」
「ハッ。言ってろ糞餓鬼が」
小生意気な尻を抓り上げてやると、後ろ足に蹴ってくる。図体だけ大きいくせにやることなすこと、まるきり小童だ。

くだんの選考会は、裏ぶれた串風路の一隅にうっそりと佇む、崩れかけた建物の一室で行われた。
狭い路の両脇はどぶ溝になっていて、竹で編んだ網が形ばかりかぶせてあったが、腐った玉葱の臭気があたりにたちこめ、小蠅がわんわんと無節操に飛びかっているような場所だ。窓樋には竹竿がひっかけられ、生乾きの洗濯物がはたはたと無節操にはためいている。
開け放しの玄関をくぐると、すぐ右側に大きな沓脱ぎ棚があり、萎れた小梅を植えこんだ盆栽の鉢がわびしげに載っていた。框はいささか大きすぎる天然の岩をそのまま転がしたという代物で、それを踏んでなんとか廊下によじ登ってみると床板は半ば腐りかけ、ぎしぎしと危なっかしい音をたてた。つんと虫よけに焚かれる香の匂いがした。
透かし細工の手摺は今にも崩れそうだったので、極力触らないように気をつけながら二階への段を上がった。絨毯もなにも敷かれていない、剥き出しのそっけない板間の中央には円卓がひとつだけ鎮座しており、その上に楽器がいくつか並べられていた。琴笙がよく弾く月琴はもちろんのこと、琵琶などもある。あとは筝や琴、横笛……鐘、銅鑼などの打楽器も揃えてあった。
通りに面した窓を背にして、大小の人影がつくねんと長榻に座っていた。
逆光で最初はよく見えなかったが、しだいに薄暗さに目が慣れてくると、一人はこざっぱりした身なりの三十路前後の男だとわかった。白皙に切れ長の目をしていてなかなか整った面立ちをしている。しかし静かな姿からは溌剌とした生気や、気配そのものがあまり感じられなかった。艶やかな黒髪を無造作に頭頂で束ね、冠はつけていない。特徴のない紺の絞り染めの袍を着て、長い指には筆と紙束を握っていた。
隣に腰かけているのは、いささか変わった風体の小娘だった。
見たところ、琴笙と同じぐらいか、もしくはもう少し年下だろうか。燃えるような緋色の髪に翡翠の瞳という極端な色の対比にぎょっとするが、娘にしてはひょろりと背が高く、全体的に華奢で、そのあたりもちぐはぐである。洗いすぎて元の色すら判然としない、一歩間違えば雑巾といった感じのくたくたの袍をまとい、足元は布沓ではなく革の軍靴の紐を締め上げている。薄い肩に大げさなほど壮麗な剣束を背負っていて、斜めに渡された剣帯からぶら下がるやけに美しい二つの珠だけがこの浮民のような少女を彩る唯一の装飾品だったが、いささか分不相応にみえた。
「あ、お客さんだ。やっと来てくれた」
赤毛の少女は嬉しそうに座面でひと跳ねし、もう誰も来ないかと思ってたよ、とぶつぶつ言った。
「ようこそ。水琴の演奏志望の方々で間違いないか?」
隣に座った黒髪が身じろいだ。落ち着いた静かな声だが、どこか岩の間を流れる清水のような冷たさもある。
「いや私は付き添いだ。楽師はこの坊主で――どうしても水琴を弾いてみたい、と言い張るものだから。ところで、その、ここは正式の選考会の会場なんだろうな?」
「是」
男はとらえどころのない茫洋とした微笑を浮かべている。
「あまり大げさにしたくないとの仰せで、あえて知人の家屋の一室を借り受けたのだ。心配はいらぬ、ここで間違いはない」
「ならいいんだが――おい、こら琴笙。勝手に触るなよ」
きらきらと目を輝かせて琵琶の弦を弄っていた手をぱんとはたくと、いいよいいよ、と少女が割って入った。
「好きな楽器をとってくれていいんだ。そうして好きなように弾いてみてくれたら嬉しい。曲の指定はないんだ。得意なものでいいから」
「選考って、それだけか?」
うん、それだけ、と威勢よく胸を張られる。いささか毒気を抜かれ、居心地悪く足を踏みかえる。ぎしりと床が軋んだ。こんなものでいいのだろうか――恐れ多くも雲上で、主上の御前で演奏するという栄えある楽師を選ぶというのに、これではあまりに――杜撰に過ぎないか?
果たして琴笙はというと、そんなことはとんとお構いなく、さっそく月琴を取り上げて弦のねじ回しを調節しだした。駄目だ。こいつは楽器以外のことは全く何も考えていない。
じゃらん、と珠の首飾りが垂れるような煌びやかな音がこぼれおちる。ひと掻き鳴らすと、
「参る」
とだけ宣言し、琴笙はその場にあぐらをかいてどっかと座り込んだ。次の瞬間にはもう、まるで滝つぼにまっさかさまに飛び込むようにして、青年はあっという間に音を奏でることに没頭していた。
といっても下町の楽師が名曲など知っているはずもない。選んだのは、家族のように身を寄せ合って暮らしていた他人同士の男女が、ある日突然、互いの心の奥に秘めた恋心を自覚して深い情を交わすというもの。春の芝居興業で大当たりを取ったいかにも低俗な戯曲だ。
琴笙の弾き方はたとえどんな曲であろうが、いつだって透き通るように純で、真っ直ぐすぎるぐらいに激しく、ちらちらと明滅する多彩な光と、熱い、冷たいといった生々しい温度の発露を伴った。彼の指先から生まれ出るどくどくとまるで傷口から溢れでる血潮のような、どこか痛々しい音の奔流が、黄撞は決して嫌いではなかった。
「――激しいね」
じゃじゃじゃ、と立て続けに音が弾け飛ぶ。
「すごく熱い。でも火じゃないね。水、だろうか?」
「御意。確かに水に属するものかと存じます」
演奏が終わると、しだいに遠ざかる音の余韻に、まだ耳殻を広げて追う素振りをみせながら、少女はどこか上の空で頷いた。男は紙束になにやら筆で書きつけてから、長榻の肘あてを扇子でパン!と叩いて審査が終わったことを伝えた。
数日後、芙蓉の花に括りつけられた文が鄙屋に届いた。
丁寧に折りたたまれた紙を広げてみると――赤い墨で御璽が押してあった。
雉門の通行許可証だった。

2019_09_29


大変ご無沙汰いたしておりますm(__)m
あなたまさの胃の粘膜のぬるぬるした1つの細胞・葵でございます。
長らくお休みさせていただいておりましたが、秋風が吹き出し、少し気温も下がってまいりましたので、そろそろと復活のパンツを履こうかなと土の中から出て参りました。土の中では誰も見ていないからと生尻のままでした。あまり長く土の中で生尻でいると茸が生えてくることを発見しました。シリダケというのだそうです。お味噌汁の具にするとおいしくいただけるそうです。

気づけば新刊発行まであと数週間ですね。
楽しみ58%、怖いの41%、残りの1%は頭蓋内で鳴り響いているドドスコスコスコスコという打楽器の連打音です。新刊を手にした瞬間、このドドスコスコスコはバァァァァン!というシンバルの連打に変わります。
怖い41%の内訳は、これでたぶん完結でしょうから、結末次第では倒れ伏すことになってしまうかもという漠然とした予感、そして十二国は更地に戻ってしまうんじゃないかしらという危機感です――あとは天帝さんと西王母もね、正体が気になりますよね。
閣下に出番はあるのか?というのも浩陽同盟の一員としては非常に気になるところです。陽子さんも。要くんはいっぱい出るでしょうから、ぜひ陽子さんも動いているところを見たい。

パンツも履いたし、連載も続きも書きますね。気長にお待ちくださっている皆さま、いつもお心遣いありがとうございます(泣)


2019_09_23


お盆が終わり、大型の台風が去り、煮えるようなこの暑さもあと少しですね。少し間があいてしまいましたが、皆さまお変わりございませんか。
プライベートでちょっとぬるぬるすることがあり、またパソコンの部屋にはクーラーがないので、めっきり文字を打つ元気がなくなってしまった軟体動物葵です。心の輪郭を取り戻すまで、外に涼風がたつまでもう少しの間、ぬるぬると低空飛行させていただきますね。ブログをやめるわけではありませんので、また覗きに来ていただけましたら嬉しく思います。
おまけの続きも書きたい気持ちだけはあるのですが、心と体がついてこない感じです。

大変遅くなってしまいました、コメントのお返しだけしたためさせていただきましたm(__)m



2019_08_18


アイスショーとミュージカルを混ぜたような公演「氷艶」を見に行ってきましたよ。
源氏物語のアレンジ作品だそうで、平安絵巻とスケートがどう融合するのかも楽しみです。貧乳を揺らしながら会場の3階席までのぼりつめると天井に近い安席にちょこんと座りました。


宮本亜門さんの演出だそうで、あらまあびっくり、主役の光源氏を演ずる高橋大輔さん、滑るだけでなく歌います。これが意外と(失礼)なかなかの美声です。

光源氏の異母兄・朱雀帝を演ずるのは我らがランビエールさんです。

ランビさまももちろん台詞があるんですけど、AHA!くちパク!台詞は日本語吹き替えでしたし、歌いませんでした。うんうん。そらそうですよね。

ゴッドマザー・弘徽殿の女御を演ずるのは荒川静香さん。きゃーはははは!と邪悪に高笑いしながらイナバウアー。最後に死ぬんですけど、死ぬ瞬間もイナバウアー。

闇の陰陽師演ずるのは織田信成公。舌まで紫に染めての熱演ぶり、呪い殺すところなんかさすがの表現力でしたが、ちょっとハリポタの死喰い人風味で水晶珠を使いこなしちゃったりして、和洋折衷な闇の魔法使いでした。


ところどころ突っ込みどころは多々ありつつ――例えばね、宮中の帝の御座所があるんですが、壁からヌボーっと出てくるんです。出現するときに必ずパヒョーゥと雅楽の笙の音が鳴り響き、雛祭りの七段飾りみたいなのがせり出してくる。これがなかなかのシュールさ。
また舟から荒波に落ちた光源氏が波に揉まれて撤収するときなぞ、たぶん大輔さんの足首に針金?かなんかをくくりつけてあるんでしょう、豊洲市場の冷凍マグロさながら、寝転んだままドピューッと氷の上を滑りに滑ってそのまま壁に吸い込まれていく大輔など、ああ、すしざんまいの社長に競り落とされたんだろうな胸を打たれました。

でもねぇ、映像美はなかなか良かったんじゃないかしらと思います。
プロジェクションマッピングを駆使して氷上が花畑にもなり、荒波にもなり、桐壺帝が崩御したときなど般若心経にのせて、袈裟を着た坊主が氷の上をぞろぞろ歩いたりして、とても臨場感がありました。
光源氏と朱雀帝が和歌対決をする場面があるのですが、和歌を詠みあげる声にに合わせて大輔さんとランビさまがそれぞれ氷の上を滑る、そのエッジの軌跡を追って筆文字が次々に氷上に映し出されては消えていくという凝った映像はものすごく気に入りました。美しかったですよ。

お話自体は原作のキャラを使った二次創作という感じで、支部で「 #モブ #オリキャラ #死ネタ注意 」とタグ付けされるようなアレでございました。まあありがちといえばありがち。斬新さはありませんが、それぞれに見せ場はあり、起承転結はしっかりしているという感じ。
救いのないストーリーであり、主要登場人物が軒並みばったばったと死に絶えるものだから、メンタル弱々の葵なぞ見た後にずーんと落ち込んでしまったのですが、悲恋物や切ない系がお好きな方はなかなかツボだったのではないかしらと思われます。
プログラムを買って帰って、ビール片手にうほうほと眺めるぐらいには感銘を受けたのでとても良かったです。

そうそう、全然関係ないのですが、葵はひとつの指輪をモルドールから通販で買いました。

ひとつの指輪はすべてを統べ
ひとつの指輪はすべてを見つけ
ひとつの指輪はすべてを捕えて
暗闇の中につなぎとめる
影横たわるモルドールの国に

でもサイズが大きすぎてちょっと困ってます。


以下、拍手コメントお返しです♪




夏らしい暑さになってきましたね。
葵はようやっと今日、扇風機を押し入れから引っ張り出してきました。ずっと涼しかったので、扇風機なしでも過ごせていたのですが、そろそろ要りますよね。シャイな扇風機さんはなかなか引きずり出されてくれず、大きなカブのように、うんとこしょ、どっこいしょと掛け声をかけながらすっぽ抜きました。確かこの扇風機には名前をつけていたような気がするのですが、1年たつとすっかり忘却の彼方に消えてしまったので、今年は適当に「ぐるん太」と呼ぶことにします。よろしくね、ぐるん太よ。

さて、そのむかし、葵めが「残香」という短編を書いていたのをなんとなく覚えておいででしょうか。
本人もすっかり詳細を忘れていて、わが友・まぐろさまに「あれなんつったっけ、あのあのあの」とお聞きしてタイトルを教えていただいたぐらいです。
どういうわけか、あの続きが書きたくなって筆をとりました。が、途中で息絶えました。なんだかちまちまSSにはおさまりそうもない長さなので、仕方がないので、<おまけ>として連載をしてみます。全部書き終えましたらタイトルをつけて短編に収納する予定です。毎週の更新は難しいかもしれませんが、お遊び程度にお付き合いくだされば幸いです。

<おまけ・1>
水琴――というものがあるらしい。
らしいというのは、こんな仕事をしてもう何年もたつというのに、相変わらず黄撞はいっこうに楽器に詳しくならないからだ。それは相棒の担当である。互いの領域にはむやみに踏み込まない、いらぬ口を出さない。それは二人で暮らし始めてわりと早いうちに決めたルールだった。
楽器のことは楽師に任せておけばいいのだ。こちらに必要なのは、ただ楽器が奏でる音と、音が玉のように連なることによって経過していく時間、それだけだ。黄撞は提供された音に香りと幻像をつける。音と映像が絡み合い、そのすべてを移り行く香りがふんわりと包み込むことで初めて、二人の芸術は完成する。
だから琴笙が「ちょいと弾いてみたい」と言いだしたとき、勝手に弾けよ、と黄撞はうわの空で言い放ち、石臼の把手を握りしめてぐりぐりと回し続けた。乾燥した香草を粉にする作業は、いつだってかなりの集中力が必要である。うっかりくしゃみでもしようものなら粉は瞬く間に四散するし、そうなればむこう一週間ほど、室内はそのきつい香り一色に染まる。
「ふん。同意とみなすぞ」
「おまえの領域だろうが。私には関係ない。弾きたけりゃ弾けばいい」
ちょうど琴笙が長年使っている月琴の一番太い重要な弦である一の糸が切れてしまい、修理に出しているところだったものだから、きっと手持無沙汰なんだろうと思った。琴笙はくしゃくしゃのチラシをじっと見つめると、また、ふんと鼻を鳴らした。心なしかさっきより満足げな音だった。
がつがつと眼をギラつかせたやせっぽちの餓鬼だった琴笙は、ここ最近ぐっと背丈が伸びてみっしりと筋肉がついてきた。喉仏が張りだして、声に天鵞絨のような深みが増し、かつて黄撞をさんざん悩ませたあの極端から極端へと走りぬける感情の荒波もほどほどに凪いだ。落ち着き払って月琴の弦を掻き鳴らす様は、黙ってさえいればもう立派な青年のそれである。
「黄撞、おまえな。水琴ってどういうものか知らんだろ」
「……甕かなんかに水滴を落として、反響を愉しむってやつじゃないのか」
「それは水琴窟だ。じゃなくて水琴」
「似たようなもんだろうが」
「全く違う」
まず第一に、と琴笙は賢し気に指を立てた。
「雲上でしか鳴らすことができない」
「――なんだって?」
思わず顔を上げると、琴笙がじっと不思議な目をしてこちらを見つめていた。黄撞は胸に張られた糸が奇妙に捻じ曲がるような心地を覚えて、なんとなく目を反らした。雲上だよ、とかまわずに琴笙は繰り返した。
「雲海の水を浴びないと鳴らない琴なんだ。琴は木でできているから、本来なら水に濡らすのはご法度だ。木が腐るからな。しかし水琴は水飛沫を浴びることで初めて音を出す。変わり者なんだ」
あんたみたいに、と付け加えられて、黄撞は憤然と首を振りたてた――おまえに言われる筋合いはない。
石臼を脇にどけると、濡れ布巾で掌を丁寧にぬぐってから、突き出されたチラシを改めて覗いた。
――求水琴演奏者。主上御観覧。於金波宮外殿。次満月夜。
(次の満月の夜、金波宮外殿にて、水琴を演奏できる者を求む。主上が御観覧される由)
思わず変な声が出る。
「……おまえは昇仙したいのか」
間髪入れず、ちっ、と舌打ちが返ってきた。
「そんなんじゃねぇよ。そうじゃなくて、『幻香』だ。俺は水琴を弾きたい、おまえはその楽に合わせて主上に『幻香』をお見せできるってもんだろ。どうだ、この上なくいい宣伝になるじゃないか」
「なるもんかね。雲上のことなんぞ、庶民には直接関係ないだろ」
「あるとも」
琴笙はあぐらをかいてどっかりと座り込んだ。その姿に、そろそろ袍を新調してやらんとなぁとぼんやりと考える。擦りきれた襟周りや袖口がいかにもみすぼらしいし、裾丈がすっかりちんちくりんだ。いかに背丈が伸びようが、筋肉がつこうが、黄撞にしてみれば琴笙は未だ面倒を見てやらなければならない小汚い小童でしかない。しかし、あいにくと金がない。昨今の慶はすっかり活気づいているとはいうものの、まだまだ香や音楽などの娯楽にうつつを抜かせるほどの余裕は少ない。香を買ってくれるのも、座敷の演奏を頼まれるのも、一部の富裕層か、もしくは旅行者に限られていた。それだってしょっちゅうではない。二人の生活はいつだってかつかつだった。
「今度の主上は気さくだというし、よく下にも降りてふらついておられるそうじゃないか。上で評判になりゃ、下だって活気づく」
「そんなにうまくはいかんよ」
チラシを返して、やれやれと肩を回して、遅まきながらふとそのことに気づいた。愕然と手を揉み絞る――なあ、それって。
「私も一緒に雲上へ行く、ということか」
「当たり前だろう。おれは幻像なんぞ作れんからな。それはおまえの領域だ」
「嫌だ」
「なんで」
「……なんとなく」
こらえきれず、琴笙が吹き出だした。そうやって笑う顔はずいぶんと幼い。
「子供か、おまえは」
「おまえだろうが、子供なのは」
「俺はもう18だ」
「……もうそんなになったか」
早いもんだな、とひとりごちる。ちょっと怒ったように肩を竦めると、琴笙はいきなり粗暴な仕草で立ち上がった。
「とにかく、応募だけはするからな。採用されるかどうかはわからんが」
「どうせ落とされるに決まってる。応募でもなんでも勝手にするがいいさ」
逆さに吊るして干しておいた古い玻璃瓶を木枠からはずすと、さっきの石臼の蓋を慎重にはずした。ふわりと甘酸っぱい香りが雲母のように層になって立ち上る。河原の土手に生えている草を摘んだものだった。気温が上がって湿度が重く垂れこめる夏は、やはり爽やかなものが一番に売れる。慶では香はまだ一般的ではないから、どうしてもわかりやすく単純で、かつ華やかなものが商品の中心となる。黄撞自身は、もう少し芯がある香の方が好みだった。例えば若い男の筋肉のような固さがある、陽ざしに焼かれてうっすらと滲む汗のような匂い――
「というかおまえ、水琴なんて珍しい楽器そもそも弾けるのか」
素朴な疑問だった。出会ってからこのかた、この小童が月琴以外を弾いているところを見たことがない。あとは誰にでも吹ける横笛ぐらいのものだ。そもそも金がないものだから、たとえ弾けたとしても目新しい楽器なぞ買えるわけがないのだが。
わからん、と青年はやけに男臭い仕草でがしがしと髪を掻いた。
「弾けもしないのに応募してどうするんだ」
「たぶん弾ける」
「たぶんって。おいおい」
「一回だけ触ったことがあるんだ――師匠が、もっていた。古い水琴」
役人に斧で割られてしまって薪になったが、と低く呟くのに、すまん、と小さく謝った。
気持ちを切り替えるように、膝上の香粉を払い落すと、開きっぱなしだった格子窓を閉めに行く。陽が翳り始めた夕空にはまだ仄明るく、一番星が透明な水滴のように涼しげな光を放ち始めている。朱と金の入り混じった油のような筋が重なり合って、焼けた雲の裾野からとろとろとひっきりなしに流れ出ている。
絢爛豪奢な夕映えを茫と見上げて、あの朱色の向こうに確かに存在するという雲上人の世界を想像してみようと試みたが、腕にとまった蚊を潰すほうに気をとられて、すぐに諦めた――行ったことのない雲上なんて、どんなところなのかさっぱり見当がつかない。ましてやまだ年若い少女だという主上のことなど、まるで頭に映像が浮かんでこなかった。



2019_07_21


去年のことはもう忘却の彼方なのですが、今年の七夕は織姫と彦星が会えたっぽいですね。
今日は今季初めて蝉の声を聞きました。何ゼミだかは不明ですが、じじーーじじじじーと爺を連呼していました。夏ですね。
葵はこの週末、寝て寝て寝て寝て寝たおしました。寝ては本を読み、ちょっと起きておやつを食べてまた本を読んですぐ寝るという繰り返し。駄目人間です。もうまともな体に戻れそうもないぐらいダラダラ過ごしたので、明日から果たしてまともに戻れるのか少し心配です。

ほんとうはニトリに出かけて、押し入れにすっぽり入る小さい本棚を買いに行こうと思っていたのですが、睡眠欲に負けてしまいました。バーゲンにも行こうと思っていたのですが、睡眠欲に以下同文。
くだんの本棚は3000円程度で、キャスターがついてて、薄くて高い本の収納にぴったりなのだそうです。押し入れにしまえるから、突然なだれこんできたりする来客の目は一応ごまかせそうです。
またベルメゾンでは、薄くて高い本用の本棚のバージョンがいろいろ出ているみたいです。ボックス積み上げタイプもあり、ガラス戸つきのものあり、板の戸で鍵付きのものあり、スライド式のものあり……
とても惹かれますが、どれもそのわりにいいお値段がしているので、ポッチをする指先が痙攣してしまってうまく押すことができません。
もうお値段以上ニトリでいいかな、配送は高くつくから、背に抱え上げてフンコロガシの要領で持って帰ろうかなと画策中です。

すっかすかの中身のない雑記で申し訳ないです。寝すぎて脳の皺がとれてしまった気がします。

以下、拍手コメントお返しです♪



みなさま、こんばんは。
いよいよ明日から7月、一年も半分終了ですね。水洗便所の水を流しながら時の流れの早さについて考えてみました。

ちまちまSSを更新しております。
おまけのつもりで書いていたら3枚を超えたのでSSへ放り込んでみました。
葵は昨日、骨董祭に出かけまして、古い着物をひと揃え買ってみたのですが、その情景をネタにしてみました。
着物はすごく安かったです。どんなものでもよければ500円で一着買えました。おおワンコイン。
なるべくシミとか黄ばみとかないのを選んでもらったら3000円の品になりましたが、緑色に白い模様が入った地味な着物です。本人が地味なので、これぐらいでいいと思います。
着付けが全くできないので、ネットで動画とか見ながら練習し、秋冬あたりに着てお出かけできるようになればいいなぁと思っております。着物、可愛いですよね。帯とか帯締めとかの色合いとか考えるのとても楽しそうで、新たな着物ライフに思いをはせてワクワクです。

以下、拍手コメントお返しです♪


2019_06_30


古美術商、骨董屋といえば聞こえはよいが、ようは塵芥収集業者と紙一重である。
卓上に並べられた雑多な品物たち――統一感のまるでない古錆びた陶器やところどころくちゃくちゃになった衣類の束などを眺めながら、水煙管の端を噛みしめる。鉄の味と共に湿気た草の香りが口から鼻へと抜けていく。二階建ての建物は売り物同様に古びていたが、すべての窓にはきちんと玻璃が入っていて、さらに厠や水屋も改装されて清潔だ。こんな雨混じりの日には気密性の高い窓が非常にありがたい――品物の表面に露悪な露が浮いてしまうと、店じまいするときに錆びないようにひとつずつ布で拭かなくてはならず、たいそうな手間になるが、それがない。
数か月に一度開催される「骨董祭」は、ここ数十年安定して続いている。いつもこの建物が使われる。街道から離れているのが少々難なので、人通りの多い大径から路地裏の此処まで、借り上げた馳車を走らせては客を運んでいる。古道具や古着を扱う業者が一堂に会して商いをする催しは多々あれど、ここは良質な品ぞろえが評判を呼んで、いつもなかなかの賑わいをみせる。思わぬ掘り出し物が手に入るとなると、放っておいても人は集まるものだ。正直、骨董屋といってもピンキリだが、ただのガラクタしか扱っていない末端の業者はだから、この市には出店できない。
「ねえ。この佩って本物の翡翠なの」
ごく薄い緑色をした、ところどころに垢のたまった飾り物を手に取った中年の女に声をかけられ、はいよ、と煙管を口からはずした。本物だよ、と受け合う。
「だけど色が薄いからそれほど良いもんじゃないな。まあ中堅どころの官吏が質流れにした品ってところだ」
ふうん、と呟いて、乱れた髪をなでつけながら女は翡翠を置いた。色が淡い翡翠は年若い女にしか似合わないものであるので賢明だ。今度は硝子の杯をしげしげと眺めはじめる。おっとこれは、と思わず背を正した。
その硝子杯はうちの店の本日の目玉商品だった。
目立つところに置いておいたから、皆、興味深そうにひととりは眺めるが、値段が値段だけになかなか買い手がつかない。中年女も「綺麗ね」と呟きはしたものの、値札を見ると首を振って、ふらりと別の棚へ視線を移してしまった。私は吐息をついて、また椅子に座り直した。
杯は正真正銘の王宮の品物で、なんでも、王と大公がその昔まだご一緒になられていない時分に使っておられた日常使いの品だったとかなんとか。仕入れ先は王宮に長年勤めていたという元宮女で、誠実で信用のおける物言いだったので話を聞いた。末の曾孫が婚姻で他州へ移る際に野に下りる決心をして、長年勤めた食器洗いの職を辞したのだが、その際に縁が欠けて廃棄になったこの一組の杯を主上から賜ったのだという。
「別にそんな大それたことを望んじゃいなかったんだよ。ただね、主上がふらりと廓にいらしたときにね」
「主上が廓なんかに来るもんかね」
さも疑わしげな顔をしていたのだろう、元宮女は豊満な腰に手を当てると、大きく息を吸いこんだ。横幅が倍ぐらいになる。なかなかの迫力だ。
「気さくな御方なんだよ、主上は。廓にはよくいらっしゃるのさ、つまみ食いをしに」
「つまみ食い」
お腹がよくお空きになられる御方なのだという。そういう……もんなのか?高貴な御方のことはよくわからない。
「長年ありがとう、何か欲しいものはあるかってわざわざお尋ねくだすったもんだから、これをくださいって言ったんだ。どうせ割れて捨てるものだったし」
譲り受けた杯は家に飾っていたく大事にしていたが、くだんの曾孫が最初に実らせた卵果に赤子が3人も入っていたものだから、しかたなく手放す決心をしたのだという。女の赤子ばかり3人。ここ慶では女がまだまだ少ないから、まことに天の恵みではあるが、養育費は3倍かかる。育てる方は大変だ。
「子供3人ぶんの値段で買っとくれよ」
結局、言い値のまま買い取った。縁が少々欠けているだけで非常に質の良い硝子だったからだ。
ひとつは紅色の染料で染めた硝子で、上に向けて大きく朝顔形に開いた明朗なデザインだ。
花笠や把手の部分に施された幾何学模様の豪快な彫り物が少し奇抜で、けれども美しい。決して女性的な作風ではないが、どことなく華奢であり、まだ年端もいかぬ少女を彷彿とさせる。きりりと澄んだ芯を感じさせる爽快な品だ。
もうひとつは紫色の染料で染めた硝子で、対照的に口のすぼんだ堅牢なデザインだ。
深い紫色は濃く、角度や照明によっては黒にも見える重厚さであり、隙間がないほどにびっしりと彫り込まれた細緻な唐草模様は、思考や性根の複雑さを匂わせる。油断のならない老獪さと、ある種の純粋さをも感じさせる逸品だ。
自宅で磨いているときに試しに水や酒をかわりばんこに注いでみたが、どちらの杯もそれはそれは美しく光を通して煌めいた。これで飲めばきっと、ただの水も天上の美酒にかわるだろう。ゆえに値札には『天上杯』と書きつけておいた。値段もそれなりである。仕入れ値がそこそこしたからこそ、利益を得ずには終われない。これも商売だ。
中年女は結局、夜光杯の安い奴をひとつだけ買って帰っていった。水煙管をくわえ直すと、深々とまた香りを吸い込む。呼吸のたびに管でつないだ壺の水面にぽこぽこと泡が浮いては消える。今日の客の出足は天気のせいもあって、いまひとつだ。売れるものも安いものばかりだ。
しかし、それにしても――ふう、と細く、長く、香りを楽しみながら長く息を吐く。
――割れた杯なんて。
――塵芥と紙一重だな。
自分の商売を決して卑下しているわけではない。古い品物への愛着が強くてこの仕事につき、もうずいぶんになる。これだけ長く飽きずに商いを続けられたのは、そこそこ自分の目利き具合が優れていて、長年愛用されて来た品への憧憬が強かった証拠だ。
けれど、ふと思う瞬間があるのだ。
時代はどんどん新しくなる。慶に新しい王が立ってからこの辺も随分と変わった――ありがたいことに良い方向へ、だ。街路からはみるみる浮浪者が減り、かっぱらいや強盗、乞食の類もしばらく見かけない。側溝の底にきちんと石が敷かれたおかげで泥の臭気が消え、まだこの辺の串風路こそ剥き出しの地面が残っているが、表の街路はおおむね石畳にとってかわった。すぐそこの高台には洒落た異国風の時計台まで建ったので、外にいてもいつだって時刻がわかる。
この刷新の時代に、いつまでも古いものを後生大事に使い回すのはいかがなものだろう。新しくて良い品がどんどん世に生まれつつあるというのに――割れた杯なんて、由来を差し引けばただの塵芥以外の何物でもない。元宮女を疑うわけではないが、そもそもその由来だって本当なのかどうかもわからないではない。いささか盛った部分もあるだろう。それでも構わない、新しく生まれた子らのためになるならば、と思って買い取った。私には子がいない。その負い目もある。
塵芥の売買は、今の慶で、果たして本当に必要な仕事なのだろうか。
そろそろ自分もいい年である。店じまいを考えておかしい時期ではないのだ。品物の売れ行きが悪いと、最近はついそんなことを考えてしまう。
「大将。すまない、この杯なんだけど」
ふいに若い娘の声がころころと降って来た。娘にしては少し低めの、心地よい声だった。
水煙管の管を口からはずし、俯いていた顔を上げると、目の前には朱色の髪を無造作にくくった、このご時世にかえって珍しい襤褸を着こんだ小娘がひとり佇んでいた。背に布で包んだ大きなもの――おそらく剣の類だろうが――を背負っている。流れの傭兵あたりか、とひとしきり値踏みをしてから、あいよ、と返事する。
「赤と紫の一組のやつ。これ、手に持ってみてもいい?」
「いいとも。だが気を付けてくれ。大事な目玉商品なんだ。古い玻璃は脆くて割れやすい」
「割れやすいのはよくわかってるよ」
這っている虫を叩いただけで割れたもんな、とぶつぶつ呟きながら、娘はそっと赤い杯を玻璃ごしの窓明かりにかざした。光を透かすと、古い杯はとたんに生き生きと蘇る。紅がすうっと澄んで、まるで夢のようなしっとりとした色合いを帯びる。
隣で紫色の杯をとり上げた白い腕の持ち主は、どうやら娘の連れらしい。黒い髪を項でまとめて背に垂らした中肉中背の男で、これといって目立つ特徴がない。骨董でいえばたいした値はつかない。垂れた前髪で顔はよく見えないが、たいした腕力もなさそうだし、力仕事は無理そうだ。これは――徒食の書生か、女のヒモか。いずれまともに職についている風ではない。いささか年を食ってるので、留年続きの大学生かもしれない。
それでいて、どこか不穏な……私は首を傾げた。
古い本だと侮ってめくっていると急に指から出血する、驚愕して見ると薄い刃が一枚さりげなく紙に混ざこんである――そんな気配もするのだ。
「こちらは割れてはおりませんよ。虫など叩いておりませんので」
「でも唐草模様が摩耗して一カ所薄くなってたんだろ?いつ割れるかわからないから、まあ一緒に捨てようかって話になったっけ」
「是」
娘の唇は音そのものを吐きださなかったものの、微かな動きで、なつかしい、と綴ったような気がした。耄碌してここのところ視力もめっきり落ちたから、定かではない。
大将、と陽気に娘は言った。
「これ2つもらうよ」
「……金はあるのかい」
結構な値段だよ、と釘を刺す間もなく、男の方が数枚の札を差し出してきた。慎重に数えてから、ああ、と曖昧に頷く。杯を古紙で包んでやりながら、どうやら自分の目利きも曇りだしたかな、とひとりごちる。徒食の書生ではなさそうだ。こんな大金を持ち歩けるのだから、そこそこの家に出仕しているのかもしれない。
「ありがとう」
心底嬉しいといった顔で笑い、包みを受けとると大事そうに胸に抱え込んだ。にこにこしている娘の肩を、さりげなく男が抱き寄せる。なんだね、と思った。この二人はそういう仲なのかい。これまた目利きが曇っていたようだ。毛髪の少なくなった額の生え際を所在無げに掻いてみる。ついさきほどまで男女の気配など皆無だったのに、こうして寄り添っているところを見ると、いささか年は離れているものの、案外似合いの組み合わせだった。
去り際に、娘はさらさらと手を振った。
「骨董屋っていいね、大将。古い思い出を宝玉に変えてくれる仕事だもの」
じゃあね、と肩を抱かれたまま小雨まじりの窓の外へ消えていくのをひとしきり眺めて、よっこらしょと座り直す。もう何度目かわからない水煙管を噛みしめる。
腰が痛い。毛も薄い。目だってもうよく見えず、目利きすら衰えた。水煙管を吸うぐらいしか能が無い。売っているものときたら、ただの古道具。塵芥。捨てられたものだ――それでも。
「もうちょいと、店を続けてみようかね」
ふらりと入ってきた子供連れの家族が騒々しく古着を物色し出して、店の中が俄然賑やかになる。窓の外へ目を向けても、さっきの二人組の影はもうなかった。
初夏の雨が緑陰を優しく潤しているばかりで、どこかで蒸米を売り歩く屋車の鈴の音がする。雨が降ったってぬかるむ側溝はすでになく、泥の匂いも絶えて無い。
ぱたぱたと玻璃を叩く雨音に耳を傾けながら、坊主、それはなかなか好い品だよ、夏に着やすいよ、父ちゃん、一枚買っておやりね、と我ながら弾んだ声をあげた。

2019_06_30


ぐっと暑くなってまいりました。関西はなぜかまだ梅雨に入っていないそうで、なんじゃらほいと思っております。

先日、葵は日帰り富山というなかなかのミッションインポッシブルな旅に挑戦しました。
富山で行われた羽生さんの出るアイスショーを見るためです。
今季はローチケもイープラスもぴあも、ことごとく抽選にはずれてしまって心の中はすっかり焼野原、ああ見られへんのかぁファックック!クックパッド!と諦めていたのですが、先日のフィギュア衣装の講演会で知り合ったお姉さんが戻りのチケット(キャンセルとかでときたま出るんだそうです)を確保してくださって、YOU行くかい?と連絡してくださったのでした。
すっかり舞い上がって、行くぅ!とご好意に甘えてお出かけしてまいりました。ちょっと富山だけど。日帰りだけど。日曜日だけど。それがなんじゃい。やっぱり羽生くんに会いたいでござる。


すごくファーっとしてて、すごくピューッと終わってしまいましたが、すごくキラッキラでした。関西人は心の鼓動が高まると擬音語しかしゃべれなくなる性質があります。クルクルッ、ピュッ、キラッキラ、シューッ、ホワンホワンでした。
羽生さんはアイスショー限定のマスカレードというオペラ座の怪人のプログラムをTOSHIさんの生歌にのせて滑ってくれて、まあそれはそれは美しかったです。地上に降りた最後の天使かと思いました。
そして今更ですが、TOSHIさんってばお歌がめっちゃ上手ですね。本当に今更ですが、XーJAPANのCDとかソロCDとか買いあさりそうになるぐらい良いお声でした。さすがロックシンガー、観客を煽るのにすごくツボを心得ていて、客席のいい年した大人達がみんなホエザルみたいにフォーフォー叫んでいました。
またどうぞ来年もチケットがとれますように。なむなむでございます。

昨日はタイ料理のお店に行って、グリーンカレーを頼んでみました。
美味しいのですが、口に入れて飲み下してからきっかり3秒後に辛さが忍び寄る感じで、最後のほうは人目もはばからず鼻をチーンと噛みながらハフハフといただきました。化粧は鼻の周囲だけハゲハゲです。
メニューのシャンパンがチャンパンになってて可愛かったです。


トルコの至宝展も見てきましたよ。
トルコ人と大阪人は親戚じゃないかと思うぐらい、ものすごくキラキラ尽くしでした。
なかでも「水筒」と題された黄金の壺は、グッチのバックかと見まごう黄金の持ち手がしゃらりとついていて、胴体部分にはエメラルド、ルビー、真珠、トルコ石がこれでもかと埋め込んでありました。いやあんた、これでお水飲むって結構たいがいやで、と一周まわってスンと冷静になる豪華絢爛さです。
中国から青磁や白磁の皿や茶碗といった献上品もありましたが、王宮へ納品する前に、トルコ人ときたら「なんかこれ地味じゃん」と思ったらしく、陶器の表面にまたもやエメラルドをガンガンに埋め込んでからスルタンにお渡ししていました。
うん、トルコの御方々、大阪人の魂は君たちと共にある。

そろそろ6月も終わり、夏も本番ですね。
そういえば十二国記のタイトルがようやく決まったとか。4冊分の本を書かれていて、タイトルが未だったことにちょっとびっくり、さすが主上であらせられます。
新刊、楽しみ&ちょっと怖いです…

以下、拍手コメントお返しです。




なにやら日本列島がびしょ濡れになっていますね、この週末……皆様のお住いの地域は被害はございませんでしょうか。
先週に続いて、久しぶりのおまけ第二弾です。
葵は基本的に豚です。おだてると、あるいは反応をいただくと嬉しがって木に登るタイプでございます。木に登って、またほいほいと短いのをしたためました。

かな☆☆さま、いただいたコメントのお返事はおまけの下にございます。ぐぐっと下の下までスクロールなさってくださいませ!m(__)m

<おまけ>

正寝の方がなにやら騒がしい。
案の定、回廊を慌ただしく踏みつける足音がだんだん音量を増しながら近づいて来て、冢宰府の真ん前でふっつりと止まった。
滾る勢いをいささか殺し損ねて開いた扉の向こうに、気に入って使っている下吏が肩を上下させて立っていた。
「――で?こたびは何をやらかしたのだ」
こちらから聞いてやれば、下吏は明らかにホッと表情を緩めた。自分からは言いだしにくい内容だろうという予測は遺憾ながら的中したようだ。
「拙めではございませぬ。恐れながら主上が……」
「やらかすといえば9割9分あの御方しかおるまいよ」
「ご賢察にて」
下吏は俯き、面白みのない床の菱形模様をやけに熱心に眺めている。もう一度促せば、ようよう観念したように顔を上げた。
「主上のお背中に、……そのぅ」
「もったいぶるな」
「……翼が生えましてございます」
「どのような」
「どの鳥とも異なります。鸞でもなし、鳳でもなし、…あえて言えば鷹に一番近うございましょうか」
このくらいの、と冢宰府の格子窓二つほどの幅を示す。
「今朝からか?」
「お背中が痒くてお目覚めになった時にはすでに生えていたということですので、おそらくは明け方頃に」
「……わかった。良い。そなたは仕事に戻れ」
「は」
後を頼む、と裾をさばいて立ち上がれば、うっかり肘が触れたために雪崩をうって落ちそうになった書簡の山を、色とりどりの袖が四方からバネのように伸びて来て瞬時に抑えてのけた。冢宰府の連中はなかなかに機敏で精鋭揃いだ。当たり前である。この私が自ら選び抜いた面々であるゆえに、そうでなくては困る。
風通し良く、衝立ひとつ置かれていない殺風景なだだっ広い構内のこと、誰の耳にも否応なく聞こえたであろうに、皆黙々と卓上を見つめつつ筆を動かすばかりだ。正しい判断である。主の背に羽が生えたところで、それが何だというのだ。慶では日常茶飯事だ。それぐらいで本日の仕事が減ることはない――増えることは、もしかしたらあるかもしれないが。
冢宰府から正寝へ渡るのは、遠いとまではいかないが決して近くはない道のりだった。
角ごとに暗殺避けの呪がかけられているし、それを避けようと思えばいったん庭へ降りて、満々と水を湛えた湖にかかる太鼓橋を渡らなければならない。階を昇るにも手順があって、擬宝珠をある間隔で左右交互に叩かないと、あっという間に外殿の離宮へ飛ばされてしまう。
しかし、すべての行程を踏破する必要はどうやらなさそうだった。見上げる空に、赤い尾をなびかせた妖鳥ほどの生き物が、ひよひよと危なっかしく飛んでいる。
立ち止まって待つことしばし、ひよひよしたそれは回廊の軒先にぶらんとぶらさがって、御足をバタバタさせる主の姿となった。なるほど、官服の背が縦に二筋切られていて――というか恐らく指で裂いたのだろう――斑入りの薄茶色の翼が二枚、悠々と御背に生え伸びている。
「やあ浩瀚」
爽やかな御挨拶である。
「ちょうど良かった、探してたんだ。なんだかね、急にこんなのが生えてしまったよ」
珍しい茸が生えたよ、というような軽い口調で機嫌よくのたまう。
「その官服は御自らお切りで?」
「怒るなよ。すでに鈴にたっぷりお小言を食らったからな」
「さようでございましょうとも」
ぶらつく御足を捕まえて沓を脱がせ申し上げたが、片方しかなかった。もう片方はすでにどこかに落ちたようだ。
「翼がお生えになる御心当たりはおありでしょうか」
「無いんだな、これが」
呑気に気合をお入れになると、くるりと反動をつけて勢いよく回廊の床に着地する。裸足で踏みしめた床が、たん!と高く澄んだ音をたてた。
「妙なものをお食べになられましたか」
「いや。夕餉だけだよ」
「落ちていたものを拾って御口にお入れになったりは」
「それもたぶん……ない」
嗚呼、これは何か拾い食いなさった。常に明瞭な言葉遣いをなさる主が、たぶん、と濁すとはつまりはそういうことだ。
「御腹が痛くはございませんか」
「だから食ってない」
舐めただけだ、と主は堂々と言った。
「さようでございますか」
溜息をつき、懐から長い紐を取り出すと、おもむろに主の足もとに跪き、その尊くも細い足首に何重にも巻き付け、しっかりと結び瘤をこしらえた。
「おいおい」
何をする、と眉根を御寄せになられても、いったん結ばれてしまってはもう遅い。回廊や階と同じく、この紐にも周到に呪がかけてある。
「どこにも飛んで逃げていけませんよう、対処させていただきました」
「雑な対処だな、おい」
御言葉ほど気にはなさっておられないご様子で、ひよひよとまた両の翼をはためかせた。小さなつむじ風が巻き起こり、軽い体は簡単に宙へ浮く。ぴんと紐が張りつめるとちょうど回廊を覆う屋根ほどの高さになった。
近すぎもせず、遠すぎもせず――どちらにとってもほど良い距離を。
まだおぼつかない翼さばきで主は飛び始める。こちらの歩く速度に合わせて必要以上にかっ飛ばそうとはなさらない。ご自分が目をかけたものに対しては、たとえその場では意見が合わず、わからずとも、理解しようとする。できる限り寄り添おうとなさる。己という根幹をしっかり持ちつつも、その軸から離れた自由自在な視点の転移を、この年若い主は息を吸うように自然に、いとも易々とやってのけるのだ。
なあ、と小娘は楽しそうに空中ででんぐり返りをした。
「この翼、いつまで生えているんだと思う?」
「効果の持続がどれほどのものかは不明です」
「翼なんてなくても別にいいんだけどね」
「それは重畳」
「でも、これはこれでなかなか楽しい」
「女史と女御が怒りますよ。背に切れ目をいれた服を縫わねばなりませんから」
「そうだな。なあ浩瀚」
はい、とお答え申し上げれば、斜め上方から、官服に包まれた両腕がなんのためらいもなく、勢いよくこちらへ降りてきた。
「行けるとこまで一緒に飛ぼう。きっと楽しいよ」
――ああ、慶の空には、太陽が二つある。
きっとこれから、ますますその輝きを増すに違いない。
「……拙めはいささか重うございますよ」
「なんの。おまえぐらい屁の河童で担いでみせるよ。私は力持ちなんだ」
紐をはずせとは決しておっしゃらない優しさが嬉しい。手を重ねると、掌は互いにほんのりと汗ばんでいた。
「ではまず、瘍医の詰め所まで参りましょうか」
ええええ~、まだ良いだろ?散歩しよう、と魅力的な提案をして、美しい翼がさかんに羽ばたいた。細心の注意を払って非の打ち所の無い笑みを浮かべると、主を見上げ、紐の端が手からすり抜けぬよう強く持ち直した。
「で、何をお食べになったんです」
「……なんかの実」
「行きますよ、瘍医のところに」
「けち」
ただしその前に――すまして紐を引く。
「もう片方の沓を探しにその辺をちょっとぶらついても良いでしょう」
ようやく見つけたこの太陽を、決して逃がさぬように。
沓か、なるほど散歩だな、と喜ぶ主の赤い御髪がまるで旗のように、碧空にくっきりとした残像を引いて揺れている。



2019_06_15


リハビリがてらの久しぶりのおまけです。
書いてないとどんどん書けなくなるので、できるだけちまちまなんか書いていこう、と臍の周りに一本だけ生えている長いアホ毛に誓いました(毛は容赦なく抜きました)。
現実の職場もなんやらいろいろございますが、王様ってのはまた大変なお仕事だもんな、冢宰もな、としみじみしながら書き殴った代物です。


<おまけ>

眉と眉の間に皺を寄せ、卓に両肘をついて、やんごとなき女王は先ほどから何やら思考の海に沈んでいる。
いつもは覇気に満ちた宝玉の瞳も、夜の濃度が少しずつ増していくのを深々と吸いこんで、のっぺりとした硝子玉と化している。じじじ、と芯を焦がす音に重なるように、ふう、と吐き出された息が灯皿の炎を揺らした。
微かに陶器が鳴って、すっと横手から茶器が差し出された。蓋つき・皿付きの青磁の品である。砂糖菓子めいた繊細な浮き模様がびっしりと施されているのを、まるで稲妻のようなギザギザした黄金の線が小気味よく縁まで走っている。金継ぎの線である。一度割れてしまったものを再利用した品らしい。
「お悩み事ですか」
「ん?いや」
ふ、とまた短く息がこぼれ落ち、女王はそれを拾うようにして茶器を口に運んだ。
「あち」
「失礼を。少し冷ましましょうか」
「いらん。ちょうどいい」
いかにもうわの空な返事だったが、白い手はそれを咎めることもなく、軽く拱手してから濃紫の袖奥へと引っ込んでいった。ふやけた茶葉の香りが湿気とともにくゆりだす。自分も一口含み、今年も白端は良い出来のようでございますね、と静かに呟いた。
「おまえは上手いな」
「茶の入れ方がですか」
「ちがう。厨房の連中の件だ」
小さな唇が勢いよく尖った。
「厨房の者は一様にみな善人で働き者だが、いかんせん全体意識に欠ける。お決まりの自分の仕事以外は目に入らない。予定外のことを頼むと、余計な仕事を増やしたとばかりにいたく不機嫌になる。面と向かっては私に言わないけど――腐っても王だからな。そのぶん、鈴に全部とばっちりがいってしまって苦労をかけていたんだが」
「御意」
「ところが、だ。おまえだよ」
硝子玉だった瞳がふいに強く煌めいて、素知らぬふうで茶を飲んでいるすました男をねめつけた。
「さっきの夕餉だ。『王が食事をなさっている現場を見たくはないか。おまえの作った食事がどんなふうに消費されているのか、実際のところ気になるだろう』と誘い込んで、衝立の影からのぞかせたな。おまえの差し金だろう」
「お気にさわられましたか?」
阿呆、と拳で卓をどんと叩く。かちゃん、と茶器が軽く跳ねた。
「なんなら一緒に卓を囲みたかったぐらいだったが、景麒の毛がまた抜けたら困るからと思って気づかんふりをしてやった」
「英明であらせられます。どんどん御髪の薄くなられていく台輔はおいたわしいですゆえ」
「おまえは上手いんだ。私なんかよりずっと――人の動かし方が。上から目線でこうすべきだと咎めたり諭したりするわけではない、一緒にやろうといかにも気軽に誘って巻き込んで、いつの間にやら自分からやる気にさせてしまう。そういう心理術がすごく……」
風船から空気が漏れるように、瞳からしゅうしゅうと生気が抜けていく。はたり、と半分降りて来た紅い睫毛が、桃のような頬に長い影を落とした。
「私は下手なんだ、そういうのが。王だっていうのにな」
薄い唇に挟まれていた茶器がしずしずと卓まで降りて来た。口が触れた部分を優美な指先がいかにも品良く、そっと手際よくぬぐってから袖口に隠れる。
主上におかれましては、と唇はやけに明瞭に言った。
「相変わらずの御馬鹿でいらっしゃいますね」
「御馬……」
さきほど英明だといった舌先がまだ乾かぬうちに、これだ。怒ることも忘れて、あっけにとられて陽子は目の前の端正な顔をただぽかんと見つめた。
「わかっておられませんね。拙めはきっかけを作っただけでございます。厨房の者をやる気にさせたのは主上でございますよ」
「私は飯を食っていただけだ」
「いいえ、それどころか皿を舐めておいででしたでしょう。あと小鉢も」
いいだろ!と憤然と叫ぶ。
「今日は餡かけの料理が多かったんだよ。本体を食ったあと餡だけ残るだろ。勿体ないじゃないか、おダシの具合が実に絶妙だったし」
「あれを見て厨房の長がえらく奮起しましてね。自分の作った食事を、尊い王が舐めるように――というか実際に舐めまわして――貪り食っておられた、と。これ以上の悦びはございますまい。夜食だろうが間食だろうがどうぞ何でも言ってくれ、いつでも俺が最高のものを作ってやる、とかなり鼻息を荒げていましたっけね」
「貪り食ってはいない」
「貪っておいででした」
「通常営業だ」
ふうわりと、何の前触れもなく男は微笑んだ――いつもは鋭いばかりの刃物が、蝋燭の灯を映して暖かな黄を滲ませるように。
「天然の宝玉と、精緻な硝子玉の違いでございます。主上はいらぬことをお考えにならず、ただひたすらにありのままに、天然でいらっしゃればよろしいかと」
「天然……硝子?」
わけがわからないといった様子を隠しもせず、陽子はほったらかしだった茶器を思い出したように口へと運んだ。やっぱりお前は上手だよ、と湯面を覗き込みながらぼそぼそと言う。
「茶の入れ方が、な」
「当然です」
何も言わずともおかわりを注いでくれる手は、筆しか持ったことがない文士特有の優美さであるのに、この手はひどい曲者だ。見えない刃物を振り回したり、人の喉を擽る術にいかにも長けている。
「この茶器って割れたんだろ。上手く金継ぎしてあるよな」
琥珀色の瞳が虚をつかれたように、どこか眩しいものでも見るかのように細められたことに、陽子は気づかなかった。上手なもんだな、ともう一度感心すると、おかわりの茶を含んで、あち、と言った。

2019_06_09


令和ちゃん(幼女)の温度管理がブッ飛びすぎてて、5月なのに、薫風香る季節のはずなのに、北海道で39.5℃とか激ヤバですね。
皆さま、煮えていらっしゃいませんか。ご無事でしょうか。

夢幻夜話さまで開催されておりました宴もたけなわの桜祭ですが、本日が最終日とのことでございます。大規模なお祭りを毎年定期的に開催し、期間中ずっと管理するというのはとても大変で、気がぬけず、表には出せぬ数々のご苦労があったかと推察いたします。それでもお祭りは同好の志が集い、楽しみ、新たな共鳴と作品の生まれるとても素敵な苗床でございました。
未生さま、長い間本当にお疲れ様でございましたm(__)m心より感謝を捧げます。

葵も昨夜、短いお話を献上させていただきました。
どうぞ皆様、ぜひお祭り会場へ御足をお運びくださいね。


以下、拍手コメントお返しです♪


2019_05_26


大変ご無沙汰いたしております。
待ってくださっている方がいるとも思えないのですが、もしもそんな希少種の方がいらっしゃったら大変申し訳ございません(>_お祭りに献上する品ができたらそのお知らせついでに雑記をしたためようと思っていたのですが、まったく献上品が出来上がらず、こりゃあいかん、いかんよ葵と、とりあえずとのこのこと地中から這い出してきました。
献上品、書いてはいるんですけど、どのネタで書き始めても4000字を軽く超えてしまって「あかん…」と止め、また次のネタへというのを繰り返しております。アカンターレです。そんな音楽記号がございましたね。カンタービレアカンターレ。切迫して喘ぐように、キーボードを乱れ打つ音を徐々に大きく、というあの記号です。

令和になって何をしていていたかと申しますと、舞踏会に行っていました。
比喩でもなんでもなく舞踏会です。白いくるくる頭にオレンジ色のドレスを着た女が葵です。イケメン(♀)に手をとられて「あらっ」としているの図。


右側が葵、左側の貴婦人は関東在住の伯爵夫人です。


ダンス自体は楽しかったんですが、着付けがすごく時間がかかったので、それだけでババアはもう疲れてしまって、どっか座りたい、帰りたい、なんか食べたい、となってしまいました。舞踏会は体力勝負だということがよくわかりました。ドレスの着付けの順番前にロココ時代のふわふわした薄手の下着みたいなのをつけて待ってたんですが、素顔の短髪のままずーっとその格好でいるものだから「処刑前のアントワネット」とか呼ばれていました。

今日はフィギュアスケートの衣装のデザイナーさんの講演会にお出かけしてきました。


羽生さんや昌磨くんのトゥーランドットの衣装、女の子だと真凛ちゃんや舞依ちゃんの衣装をデザインなさった若い女性の方です。
いろいろ裏話を聞けて楽しかったです。
男子の場合、衣装で一番大事なのは重さだそうで、あとは襟首や袖口に飾りをつけるときは注意が必要だとか。
襟や袖はジャンプをするときに軸になるそうで、ここに重いキラキラスワロやレースなどがあると、選手はジャンプが跳べなくなってしまって、滑走直前にご本人がむしりとってしまったり、鋏で切ってしまうことも多々あるそうです。
そのため、試合やショーのたびに細かなメンテナンスを繰り返すそうですが、キラキラの装飾をくっつける作業などほんとに緻密で、気が遠くなりそうな作業でした。
衣装をつくるコツはただひとつ、「根気で乗り切れ」だそうです。繁忙期はわけがわからないぐらいに立て込んでて、ほとんど記憶が飛んじゃうとおっしゃっていました。

なかなか更新できなくてごめんなさいです。4000字以内にまとめることができるようにウッホウッホとゴリラになって頑張りますね。
暑くなってきましたので、お水をたくさんとって、熱中症などお気をつけてお過ごしください。
2019_05_12


雨がしとしと降って、葵の生息区域に咲く桜もこれであらかた散ってしまいそうです。
雑記がサボりがちで申し訳ございません。生きております。部屋があまりに汚いので掃除などしておりましたら、地上では百年ぐらい過ぎていました。白髭の生えた状態でこの雑記を書いています。

居間の棚を整理していましたら、去年100均で買った小さなポットが出てきました。中にメモ帳の束が入っています。記憶を手繰ってみますと、たしか自己啓発本か何かに書いてあった「1年間メモ…すごく嬉しいことがあったときメモに書きつけて、ポットの中に入れておくのよ☆年末にポットを開けて見て!ほら、こんなに嬉しいことがいっぱいあったんだなぁって思えるわ!」という文にそそのかされて、そういえばポットを買ったんでした。
蓋を開けて中を覗いてみますと、メモ書きが一枚だけ入っていました。一枚かね。どうやら去年はひとつしか嬉しいことがなかったようです(というかポットの存在そのものを忘却していました)。紙には一言、「ポー」と書いてありました。
ポー?
なにかの暗号でしょうか。解読できた方がいらっしゃいましたら葵にお便りください。

皆様ご存じのとおり、桜祭りが夢幻夜話さま、管理人・未生さまのお宅でただいま絶賛開催中でございます。桜が散る前に葵もなにか献上の品を、と書き始めては見たものの、またもや4000時には収まりそうもない予感がしてきて、ちょっと中断中です。もし4000字を超えてしまったら、こちらに短編として載せ、献上の品は品でまた別にしたためようと思います。
なかなか更新ができなくて申し訳ない限りでございます。空き時間を見つけてぼちぼち頑張りますね。

4月11日から、フィギュアスケートの国別対抗戦をウホウホと鑑賞していました。
ガチの試合ではあるけれど、おふざけ上等の楽しい大会で、世界選手権より気を抜いて見てられるところがいいですね。
葵はフランスのガブリエラ・パパダキスとギヨーム・シゼロンの情緒的な滑りがすごく好きなのですが、応援席でヘンテコなセーラー服?を着て踊り狂うガブリエラさまを拝見して目が点になり、嗚呼ぎゃっぷ萌ゑとはさふいふもの哉とおもむろに明治口調になり、さらに愛を捧げよう、ジュテームとフランス語で誓いました。相棒のギヨームさんは「無精髭が最高に似合う男選手権大会」でたぶん上位10名に食い込むと思います。
日本のメンバーの中では、個人的に坂本花織選手がとても好きです。
姿形だけでいえば梨花ちゃんのほうがたぶん可愛らしいし、技術的にも優れているんだろうなとは思うのですが、花織ちゃんのあのスピードスケート並の尋常じゃない速度と、ぬるぬるとまるで油の上を滑っているかのような刃さばきは、ちょっと魔物の領域に片足を突っ込んでいるような気がして惹かれます。素のご本人にそんな妖しさは微塵もないというのに、ひとたび滑れば豊満な女神になってしまうところが良き。うんうん。

今宵はエキシビションを愉しみたいと思います。
しばらく干していたら、またもじもじと書きたい気持ちも湧いてきています。やっぱある程度の充電というものは大事ですねぇ。
ではでは、またまた!

以下、拍手コメントお返しです♪
2019_04_14


今日で3月が終わりになりますね。
1年の1/4が終わってしまったなんて驚愕です。自分がこの三カ月間に何をしていたのか、全く記憶がございません。きっと宇宙船にキャトルなんとかをされていたのだと思います。しかし宇宙の思い出も全くありませんし、キャトルなんとかのなんとか部分も思い出せません。重症です。

昨日はスターズオンアイスに行ってまいりました。アイスショーでございます。
安い席なのであらかじめ覚悟していましたが、ワァオ、見ろ、演技者が枝豆のようだ…!目がぁ目がぁと(心の中で)ブツブツ言いながら演技の合間にひっきりなしに目薬を入れて腫れぼったい目を凝らして観賞しました。
しかし枝豆サイズながらも、さすがに世界的な選手ばかりの粒ぞろい、素晴らしい演技ばかりを堪能させていただきました。

ハビエル・フェルナンデス選手は今季限りで引退を表明されましたが、今回のアイスショーにも元気に参加。
パイレーツ・オブ・カリビアンをやってくださって、なんと客席から登場されました。えいやと柵を乗り越えてリンクに入ると、船上の激しい剣技をぶんぶん繰り広げてくれました。いやぁ痺れました。往年のキャンデロロさんのようでしたよ。
平成生まれのヤングなレディたちはキャンデロロさんはご存知ないかもしれませんね。キャンデロロさんはかつて四銃士のダルタニアンをリンクで演じて、その剣技ステップが絶賛された愉快なおじさんです。彼も登場時によく柵を乗り越えてリンクに入ってました。

ランビエール先生は相変わらずのイケおじで、彼の今年の予定を見ると10月をのぞいてほぼ毎月来日してるんです。もう君は日本に住んだらいいんじゃないかしらと思います。
日本勢は昌磨くんと知子ちゃんが試合そのままのプログラムをそれぞれ滑ってくれました。昌磨くんが「月光」、知子ちゃんが「子雀にうんたら」いうあの曲です。試合のチケットは執念深く応募したものの、ことごとく落選したので、今回ナマで試合プログラムを見ることができて嬉しかったです。

三原舞依ちゃん、知子ちゃんはほぼ出ずっぱりの大活躍でしたよ。アメリカのシブタニ兄妹も金銀のジャケットを羽織ってノリノリのツイズルを見せてくれましたし、堪能しました。
しかしこのメンツでもチケットは余ってるそうで、翌日のS席とかが半額の投げ売りとかされてました。なんででしょうね、試合はあんなにとりにくいのになぁ。

私生活で変わったことといえば、テレビが壊れたのでテレビを買いました。
テレビはビジュアルからして天寿を全うした感じがありありと出ており、「殿、お名残りおしゅうございます、殿がおられなくなったらこの葵王国はどうしたら、」とすがる葵に、ふう、とため息をついてガッと画面にノイズを走らせてから「嘆くでない葵、これも天意だ。先にいって待っている…ががーぴぴぴー(←エラー音)」という感じでした。テレビの魂が抜ける瞬間を目撃することができて感無量…にはなりませんでした。大出費だなぁと頭が痛くなっただけです。痛いです。痛い痛いのとんでけ、と唾をぬっても全然痛みが和らぎません。
来週の日曜日に配送されてくる予定なので一週間ほどテレビとDVDが見られません。しょんぼり葵でございます。

明日には新しい年号も発表になりますね。どんな年号かな。赤楽だったらいいな。
桜のお花見も行きたいですねぇ。ではでは、またまた!
2019_03_31


もうすぐ桜も咲きそうな春寸止めな時期になりましたね。ふえっくしょん。
葵は花粉症はまだ今のところ大丈夫なのですが、久しぶりに部屋の本をまとめてブック●フに売ろうと画策した結果、段ボールに詰めて詰めてまた詰めてという作業でものすごい埃が発生し、頭から小麦粉をかぶったような姿となり、さきほどからふえっくしょんが止まりません。日ごろから掃除をさぼるとこういうことになるのだなぁと形ばかり反省をした次第です(口だけ)。ふえっくしょん。

おかげさまで段ボールは5箱。あとは今晩集荷に来てくれる佐川のお兄さんを待つばかりでございます。
玄関先のドカドカと積み上げたらトイレのドアが開かなくなって、危うく室内で遭難しそうになりましたが、ケツでドアをこじ開けて無事に脱出しました。葵の中学生のときのあだ名は「ケツデカ」でしたが、後になって己のデカい尻に感謝する日が来るとは思いませんでした。ありがとうお尻の割れ目。

昨日はフェルメール展と超絶技巧展と、展覧会を2つ梯子してきました。
日本人はフェルメール好きだといわれますが、会場はものすごい人でした。フェルメールが生きていたらもう少しデカいサイズの絵を描いてくれとお願いしたいところでした。総じて小さな絵ばかりなので、人だかりの後ろで懸命に背伸びして絵を見ていたらすっかり足が攣りました。
フェルメールは6枚だけ、あとは同時代のオランダの絵画です。オランダの絵画ってたいてい、広々とした曇天、強風、なびく樹木、薄灯り、女の人はデコが広い、という特徴がありますよね。女の人のデコはぞりぞり剃っていたらしいですね。額が広い方が若く見えるからというのがその理由だそうです。オランダ人の美的感覚がいまいちわかりません。

もうひとつの超絶技巧展は神の手を持つ明治の職人さんから現代アートまで幅広く展示されていましたが、現代陶芸家の稲/崎栄利/子さんってご存知でしょうか。
ものすごく緻密なウニのようなイソギンチャクのような、あるいはカビのような菌類のようなもので覆われた磁器オブジェを造る作家さんで、それがまた恐ろしく繊細で美しいのでした。これはいったい何じゃろ、と思うのですが、些細な疑問をすっとばしてしまうほどの圧倒的な妖美です。
すっかり彼女の世界に夢中になってしまい、作品集とかないかなと探してみましたが残念ながら本は出てないみたいです。
ググる先生にお尋ねするととざーっと作品の画像が出てきますので、もしご興味がおありでしたらご覧になってみてくださいね。

部屋を掃除しまくったりなんだりはあとしばらく持続しそうなので、なかなか更新できず、申し訳ない限りでございます。
でもまた気持ちが陽子さんラブに傾いてきましたので、何か書きたいなぁ、書けたらなぁと思っております。
産まれたばかりの春と共に、また皆さまとご一緒にのんびり過ごしていきたいものです。ふえっくしょん。


2019_03_17


京都の百貨店でやっていたミステリイベントに参加してきましたよ。
アガサ・クリスティの推理小説に出て来る名探偵といえばポワロさん。
イベントでは保亜郎さんというベタベタなお名前の日本人探偵が登場し、小指たてて紅茶飲んでセボーンとか言いながらデパート殺人事件の概要を説明してくれました。ちなみに秘書のミス・レモンさんは男性が女装して頑張っておられました。男性だけど明らかに葵より美人でした。
その場に集まったピヨピヨ探偵の群れたちは、保亜郎さんの説明を聞いたあとにそれぞれ捜査資料をもらい、デパート内に散らばって、各階に隠されたヒントを探して行ったり来たりしながら解決をめざしました。
途中でデパート内の喫茶室でイベントコラボメニューとかを注文すると、事件のヒントが書かれたカードとかをもらえるので、さりげなく客にお金を使わせる仕組みはむむむ、デパートめ、デキるな、という感じです。

結果としては、一応、犯人を特定することはできました。
単に可能性を潰していくと奴しか残らなかったのです。あと、現場に残された証拠品をよく見ると手がかりが残っていました。
しかし犯行に至った奴の動機がさっぱりわからなくって、「動機がわかりませんでした」と正直に書いてそのまま提出してきました。

推理した紙を提出した後に、改めて事件の正解が書かれたパンフをいただけるのです。
読んでみると、
「あらまあ?!そういうことなのぉぉぉぉぉ!ぁぁぁぁああああ!」
と奇声をあげることしばし。そうか、動機。わかったぞ。なぁるほど。
葵は全く名探偵には向いてないということがはっきりしました。

事件が進展していく中で気づいた伏線などがあったら書いてくださいといわれていたんですが、これが予想外に難問。
ファンタジー小説の伏線と、推理小説の伏線では伏線の性質ってまた全く異なるということを実感しました。
フワッとした話を作ってる常日頃の自分目線から伏線を探してしまったのですが、解答編を読んでみると、目の付け所は犯人が行った同じ動作を突いててポゥッ!となったものの、肝心の解釈が全く違いました。ちいさいながらも確固たる事実を探さないと伏線としてはアカンチンみたい。ファー。

あと、作家の有/栖川有/栖先生のサイン会も、ミステリイベントに合わせて開催されていて、そっちもちゃっかり行列に並んで参加してきました。
常日頃楽しく読ませていただいている火村シリーズの作者さまがすぐ目の前にいらっさると思うと、息切れ動機がしました。
ああいうサイン会では卓上に求心とか命の母とかウチワとか血圧降下剤とか気付けのブランデーとかを常備しててほしいなと思いました。

もう3月に入ってびっくりです。
今日はお雛様でしたね。ひな祭り的なことは特に何もせず、だらだらと過ごしました。
春は人生の岐路が分かれる季節です。進学、就職、結婚などさまざまな波が寄せる季節、どうぞあまりご無理なさいませんよう。
新しく門出を迎える方々に幸あらんことを、お祈りしております。

以下、拍手コメントお返しです♪


2019_03_03


皆様、こんばんは。2月だというのにずいぶんポカポカ陽気でございます。
葵はヅカのカサノバというのを見て参りましたよ。
無知な葵はカサノバという単語は聞いたことはあるけど、人の名前でござろうよ、ぐらいしか知りませんでした。どこの国の人かも不明、男か女かも不明、まあ日本人じゃなかろうよ、という程度のグダグダ具合です。

見てみましたらなかなか面白い物語でございました。
カサノバというのは究極の色男で、1017人の女と関係を持ち、不品行だと異端審問にかけられ、懲役626年を申し付けられ投獄されたというイタリア製のダメンズでした。
裁判で不品行をなじられた彼は「愛に生きただけじゃあん、何が悪いんスか」とアホの子のように言い放ち、投獄されたと思ったらさっそく脱獄を試みるちっとも落ち着かない男なのですが、脱獄に必要なナイフを女を使って差し入れの中に忍ばせるまではよろしい、その差し入れがカルボナーラのパスタだったのには、いやそれどうよ、と突っ込まずにいられませんでした。カルボナーラってあんた。その中にナイフ入れるってあんた。ミルキーなホワイトソースでナイフはべったんべったん、ぬるぬるです。いくら脱獄に必要でもあまり掴みたくありません。

結局、カサノバは1018人目の女と運命の恋に落ちてハッピーエンドでした。おめでとうございます(棒読み)
なんであんなにカサノバはモテるんや、と友人に聞きましたら、そりゃあダメンズだからや、ハウルやってダメダメやけどモテモテやろ、というお返事でした。なるほど…閣下のようなデキる男はもちろんモテる、けれども同じモテ牧場に放牧されている男どもの中にはダメンズ枠というのもあるようです。
どちらの場合も、ただしイケメンに限る、という但し書きは必須かと思われます。

今日は美容院に行ってきました。
いつも美容師さんとオサレトークをすることを目標にしているのですが、たいていチンパンジーとキスするなら人間の鼻はどこに置くべきかとか、オリーブの木につく親指二本分サイズの巨大芋虫のウンコは仁丹かと見まごうほどデカいとかいう話で終わり、なかなかオサレ界へ到達できずにいます。
しかし今日は少しだけオサレでした。料理の作り方でよく胡椒少々、塩少々、となどと言いますが、あれと同じでオサレ少々といった感じです。

葵:「アカデミー賞の授賞式って、たいてい女優達が変な格好をしますよね」
美容師:「ああ、臍まで切れ込みのはいったドレスとか」
葵:「乳丸見えですよね」
美容師:「背中に羽根が生えたドレスとか」
葵:「背中側にも乳があるみたいに見えますね」
美容師:「女優のドレスがやたらケバいせいか俳優が縮んで見えてしまう」
葵:「そりゃ俳優には乳がないですもん」
(以下略)

念願のオサレトークを達成できて、充実感に溢れた1日でした。
2月もいよいよ最終週、まったりと過ごしてまいりましょう。


以下、拍手コメントお返しです♪


2019_02_24


おまけとSSの違いが限りなく曖昧でわからなくなってきたので、今回のちまいやつはちまちまSSに収納してみました。スクロールしていただくと、一つ下の記事がそれです。
最初にSSカテゴリを作った時、3枚以内ならSS、と決めていたような気もするのですが、なんだかもう忘れてしまいました。『忘却の彼方に』というノンフィクションが書けてしまいそうなぐらい、いろいろなことを忘れてしまいます。
せんだってのおまけの続きみたいなノリで書いて見ました。少しでもお楽しみいただければ幸いです。

バレンタインデーも終わりましたね。葵はなぜか上司からチョコを貰ってしまい、戦慄しました。なぜなら葵はチョコを用意していなかったためです。その瞬間に感じた肌寒さは、かつて南極で体験したあの風のようでした。(南極に行ったことはありません)
ホワイトデーでマシュマロでも贈ることにします。ちなみに上司はマシュマロが嫌いです。

ちょっと体調を崩しまして、例によって胃が出んぐり返って現在固形物が食べられません。液体ならいいかと思って豆乳ばかり飲んでいますが、これはこれでお腹がずっしり重くなるので加減が難しいです。夜に固形物を食べると夜中にぽんぽんぺいんで起きだしてトイレで吐くはめになるので、晩はヨーグルトだけにしています。その割にいっこうに体重が減らないので、体重計に八つ当たりをしています。皆様もどうぞ体調には十分お気をつけてくださいね。


以下、拍手コメントお返しです♪



2019_02_17


堯天の街を通り雨がさらりと行き過ぎていった。
美しく敷き詰められた石畳みのあちこちに品の良い、小さな水たまりが残っている。濡れたばかりの初春の空は青く澄みわたり、白い綿雲が点々と浮かんでいる。出たと思ったらもう消えかかる淡い虹の尾っぽを追いかけて、我先にと駆け抜けていく子供たちの嬌声が賑やかに響きわたる。菓子が揚がったことを知らせる屋台の銅鑼の音と、馳車の到着を知らせる振鈴の音、厨の格子窓から湧き出る白い蒸気の中に、旨そうな酢と油と、少し崩れた野菜の匂いが沁みている。
菅笠をのせた小柄な男が、行き交う人々の間を器用にあっちに避け、こっちに避けしながらひょこひょこと歩いていく。地味な袍に半袴を纏い、藁靴に雑嚢を背負っている姿はごくありふれた行商のようだ。
ひとつだけ目を惹かれるとしたら、それは腰にぶらされた奇妙な魚篭のせいだった。円でも楕円でもなくもちろん角でもない、それは奇妙な形をした魚篭だった。不定形であり、非対称であり、じっと見つめていると少し不安になってくるようなとらえどころのない形状をした魚篭は、素材自体はそこらへんの籐の蔓を使っていたが、妙に綺麗な空色をしていた。
男は手に小さな網を持っている。子供が蜻蛉や蝶をとるときに使う虫網をそのまま縮めたようなもののようである。ひょいひょいと濡れた石畳の上を跳ね、散らばった水たまりをしげしげと覗き込み、時折は手の網を突っ込んではぽちゃんとその中に突っ込んで飛沫をあげ、ちょっと首を傾げてまたひょいひょいと歩いて行く。誰も男の奇行を気にする者はいなかったし、誰も男がいったい何をしているかを知らない。
「せいがでるな、丑寅。良い雲は捕れたか?」
ふいに凛とした声が降って来て、男は顔を上げた。
目にも鮮やかな朱髪の少女が往来に立ちはだかって、白い歯を見せていた。薄汚い格好で、どこで何をしていたのか半袴の裾が泥だらけだ。背には布で包まれた大きな刀を背負っている。
「へえ、小姐さん。残念ながら今回はあんまり生きのいい雲は見当らんですな」
腰の魚篭を適当に叩いてみせる。ぽこぽこといかにも間抜けな音が響いた。
「ふん。いい通り雨だったから期待したんだけど」
「純度の高い雲ってやつは、そうそう頻繁には落ちてきやせんぜ」
残念、と肩をすくめると、いきなり路面にしゃがみこんだ小娘は、手近の水たまりに顔を突っ込まんばかりに覗きこんだ。束ねた髪がさらりと石畳に落ち、頼りなげな細いうなじが剥き出しになる。付け根に、よく見なければわからないほどごく淡く、鬱血の痕があった。
「なあ、あれは。あのふわっふわのやつ」
「形はよろしいですけどな、あれはたぶん噛むと渋い」
「じゃあ隣の丸いあれは」
「あれはちょっと触ると固い」
「難しいもんだな」
そりゃあそうですとも、と胸を張る。
「そんなに簡単に良い雲が捕れるもんなら、儂はこんな貧乏暮しはしておりませんぜ」
「それもそうか」
その時、その場をもし見ている者がいたら、あんぐりと口を開けたに違いない――少女のいかにも健康そうな褐色の腕が、ふらふらと水たまりの表面を撫でていたかと思うと急に肘までぐっと、奥深くまで沈みこんだからだ。水たまりの水深など指の関節一つ分ほどしかないというのに、肩まで突っ込みそうな勢いでゆるゆると掻きまぜている。
しばらくそうして探っていたが、やがて何か重いものを掴んだのか可愛い顔をこわばらせると、全身のバネを使って水たまりからそれを力任せに引き抜いた。ぱしゃん、と飛沫が散って、びくびくと跳ねまわる白いふわふわしたものが引きずりだされる。慌てて差し出された男の魚篭に、乱暴に放りこむ。
「はぁ、今のはどう?」
「生きが良いのは確かですなぁ。味はどうだかわかりませんが……いやしかし無茶をなさる。直にあれを掴んだりすると、へたをすると肌はおろか骨まで焼けちまいますぞ」
「なんのこれしき。平気だ。面の皮が厚いからな」
「やれやれ。まことに食い意地が張っておいでだ」
やおら懐から布を取り出して、少し赤くなった少女の掌を包んでやる。布は漆黒のようでいて、よく見れば濃藍をしており、ところどころに光の点が散ってきらきらとさざめく美しい品だった。
「丑寅、今から交換所に行くのか?」
「はあ、行ってもいいですけどね。今日はもうさほどの収穫はなさそうですし――さっき掴み捕りなすったあの雲ですかね?すぐに加工してくれるかどうかは、さてわかりませんぞ。哥哥の気分次第だから」
「今日でなくてもいいよ。加工が仕上がったら袋に入れて正寝の屋根に放り投げといてくれ。よじ登って取りに行くから」
「へえ、毎度。前みたいにうっかり屋根から落ちなさらんように」
「いらぬ世話だ」
くるりと背を向けてしまったので、少女は気づかなかったらしい。すっきりした身なりをした端正な男が、少しばかり離れた店の軒下でさっきから静かにこちらを見守っていたのだが、やおら腕組みを解くと、迷いのない足取りでこちらに歩み寄ってくるところだった。
「小姐、お迎えがいらしておりますぞ」
「へ?……わ、浩瀚、おまえ!」
どうした、なんでここにいる、と捕獲されながらも少女は元気よく喚き散らした。びちびちと暴れまわる腕をしっかりと脇腹に抱え込むあたり、うまい捕り方であると丑寅は内心ひそかに舌を巻いた――こんな赤銅色した見事な夕焼雲を素手で、網なしで捕まえるだなんてなかなかどうしてたいした男である。
「……純度の高い雲を貴女自らお買い求めになってくださるとは嬉しいことです。今宵の閨が楽しみでございます」
「たまたまだ、たまたま丑寅を見かけたらな!それだけだ!」
「御意。ではさっそく宮へ戻りましょうか。早めに榻の準備も申し付けませんと」
「あのう家公さん、悪いけどすぐ加工してくれるかどうかはわからんよ。哥哥次第なもんだから……」
「加工しろ」
ぴしゃりと言い捨てて、うなじまで赤くなった小娘を抱えたまま男は稚門の方角へと去って行った。新しい馳車が到着したのか、りんりんと鈴の音が往来に響いている。消えた、虹が消えちゃった、虹はどこから生えるんだろう、と子供がぶつぶつと呟きながら彷徨っている。
――虹か。あれは蛇の仲間だから、逃げ足が早いんじゃ。坊どもには捕まらん。
丑寅は菅傘を目深にかぶり直して、ほ、と吐息をひとつついた。雨上がりの大径をしばらくひょいひょいと歩き、行き交う人々を器用に避け、ふと思いついたように気の早い提灯の灯り始めた串風路へと折れ、何人もの足を浸してすっかり薄汚くなってしまった水たまりを跳び越えようと、足を延ばしたその姿勢のままふうっと、大気に溶け込むようにして姿を消した。



追記:
※巫山雲雨…男女の交わり、情交のたとえ。

雨上がりの水たまりの中に落ちている良質の雲を捕え、これを食すれば、その夜の情交は夢のごとき極上の快味が加わり、男女ともに無我の仙郷に舞う心地がする。
ただし生の雲を食うと腹を下すため、人の口に合うように加工が必要である。雲捕りの仙人の名を丑寅といい、雲の交換所へ雲を持ち込めば加工がかなう。値は哥哥の気分次第。



2019_02_17


皆様こんにちは!
モブ祭りの裏門がギギギと開きましたよ、わーい!
饒筆さまから楽しいワクドキなマッチョモブのお話をいただいてしまいました。葵、幸せ。昇天です。モブ祭りをまだ気にかけていてくださったことに伏礼するだけでは足りず、そもままモップのように床を這いたい心地がいたします。
拝読したときは思わずヌッフフと声に出して笑ってしまいました。モブさんの容姿がどんな風だかは最後になってじゃーんと明かされますので、皆さま、ぜひともモブさんのお姿を想像しながらお楽しみくださいませ。
この一つ下の記事にアップしておりますので、さあレッツ・スクロール!

饒筆さま、このたびは楽しいお話をありがとうございました!m(__)m

以下、拍手コメントお返しです♪


2019_02_02


<前菜のみ>
モブ・恋文


 ええっと。拝啓。主上さま。
 あたし、大春ともうします。その昔、拓峰ではたいへんお世話になりました――って、ちょっとアンタ!やっだぁ!!ひとの手紙を読まないでえぇ?!同室でも『ぷらいばしー』ってモンがあるでしょうよ。たとえアンタでも許さないんだからねっ!!
 ……はあ?いちいち大声を出して書いている馬鹿が悪いって?
 仕方ないじゃなーい!あたしのオツムじゃ、いったん声に出さないと文なんて書けないんだもん!(ぷんすか)
 あ、そう。あくまでもあたしが悪いっていうのね?(ジト目)
 もういいわ。そーよ、あたし、主上にお手紙を書いているの。自慢じゃないけど、もう二百通は書いたわよ(フフーン)……なによ、その変顔。でもね、実は書いた端から全部破いて捨ててきたのよ。だから一通も差し上げてないわ。
 だってぇ……(もじもじ)こんな下手クソで馬鹿まるだしの手紙、あのお方に見せる訳にはいかないでしょ?(しょぼーん)
 さっきのより上手く書こう、もっとキモチを籠めようって、書いては捨てて、書いては捨てて、そればっかり……あたしね、きっと、一生書き続けて捨て続けると思うわ。いいのよ、あたし馬鹿だから一生かけてたった一通を書きあげるのよ。

 あたしと主上の出会いはね、拓峰なの。あの乱の最中に命を助けてくださったのよ。そりゃあもおぉ~カッコ良くてキラッキラ輝いておられたわ!どこの太子様かと思った!!一目惚れよ、一目惚れ。はあ?悪い?(ジロリ)
 実はさ、あたしには玉春っていうキレイな姉さんがいたんだけど――そうそう、美人の姉が玉春で図体のデカイあたしが大春。そのまんまでしょ?――昇紘の手下に連れ去られたきり帰って来なかったのよねぇ……で、あたし、まだ子供のくせにブチ切れてあの乱の渦中に飛びこんじゃったの。喧嘩じゃ負けたことが無かったから、あたしでも十分闘えると思って。
 甘かったわ~そこら辺の悪ガキが、訓練された兵士に敵う訳がないわよね。あっと言う間に追いつめられて剣を振りかぶられて、もうお終いだと思った――そのときよ!主上がサッソウと現れて敵を倒してくださったの!!本当に本物よ!!
 風のように割って入って、紅の髪がざあっと流れるのを見てたら、もう兵士が倒れていたの!今思えば、すさまじい剣技だわ。はあぁ~ん、ステキだったあぁ~(うっとり)。今思い出しても頬が火照っちゃ~う(はぁと)。
 それからね、主上はね、チラリとあたしを振り返って、「無事か」っておっしゃったようなおっしゃってなかったような――とにかく横顔が美形すぎてアタマ沸騰してたからよく覚えてないんだけど――あたしを見てくださったのは間違いないのよ!あたしを見て、すぐに次の敵へ向かって行かれたの。
 惚れるでしょ?ね?惚れるでしょうよコレェェェ!!(相手の肩を掴んで揺らす)
 ああ、叫んだら喉が渇いたわ。(ごっくごく)
 だからさあ……乱がすっかり終わった後で、その運命の太子様が女だって――しかも女王様だって聞いた時は、ま~あ正直大ショックで三日は寝込んだわね。単純な分、思い込みも激しいのよ、あたし。妄想の中じゃ、すっかり祝言挙げて新居でラブラブ手料理をつくっていたものだから……やだ、ドン引かないでよぉ。妄想だって、モ・ウ・ソ・ウ。
 でもね。寝込んで三日目の朝、ぼんやり日の出を眺めながら、ついにあたしはサトリを啓いたのよ。
 そう――男とか女とか、そんな細かいことはどうだっていいじゃない?どっちにしても同じ人間でしょ?あたしはあのお方が女でもやっぱり大好きだし、この身も心もあのお方に全部捧げたいってキモチに一寸の変わりも無い!だから、素直に、あのお方を好きなままでいいんだわって気づいたの!!ね!すっごい大発見よね?(お目目に星)
 ……んん?つくづくおまえはアタマ悪いなって?放っておいてよ、自分でもわかっているわよ!(フン!)
 で。そこからは、どうやったら王宮へ入れるのか、無い知恵絞ってさんざん考えたわけ。一生かかってもいい、絶対にもう一度あのお方に会うんだって心に決めたけど、ま、この器量と残念過ぎるアタマでは女御や侍官はムリでしょ?掃除や雑用係として潜り込もうにも、平民のあたしに伝手なんかないし。
 もー仕方がないから、あたしはこの恵まれた体格を活かして禁軍入りを目指すことにしたの。めっちゃくちゃ鍛えて、武功をいーっぱい立てて、慶国イチ勇猛な兵士になったらきっと、禁軍へ推挙してもらえる。それしかないって。
 とりあえず筋トレ代わりに毎日角材振り回していたら、あっさり州師両長の目に留まって勧誘(すかうと)されたわ。やっぱりあたし、こっち方面に才能があったのよね!!
 フフン♪ そーよ。今ではあたし、和州じゃあ、バケモノよばわりされて恐れられているんだからぁ。シケた追剥から山賊団まで、とにかく討って討って討ちまくったから――で、お優しい和州候が直々にあたしを禁軍へ推挙してくださったの。嬉しかったわ……これでやっと主上に会えるって思ったら御前で大泣きしちゃって、候になぐさめてもらったくらい。
 とまあ、そんなこんなで、あたし、ここへ来たのよ。
 だけど、禁軍に入ったからって、すぐに主上に会えるほど甘くは無かったわね……。こんなペーペーの身じゃあ、整列しても最後尾だもん、いくら大柄でも主上の視界には入らない。だからこうしてお手紙を書いているのよ。せめて、あたしが戦死したらこの手紙で主上にあの日の御礼を伝えられますようにって。
 ヤッダァ~もぉ、そんなカワイソウって顔しないでよ。あたし幸せよ?
 少なくとも主上と同じ雲上の空気を吸っているって思えば、生きる気力が湧くわ。前向きだけが取り柄だもん。これからもっともっとがんばって、戦死する前に最前列に躍り出てやるわよ!!(ムンッ)


◇◆ 数日後 ◇◆


 あっああああああねええちょっと聞いてえぇぇぇ!!
 さっ、さっき、さ、あわわわわっつ……おおお、落ち着けないわよっ!これが落ち着いていられるもんですかっ!あのね、さっき――奇跡が起きたの!主上が練兵所においでになって、青将軍が……ふわああああああ!!
 (ボカッ!)いったぁぁぁぁい!!殴ること無いじゃなーい!(涙目)
 え?あたしみたいな大猿が暴れたらキケンだって?ひっどぉぉい、あたしを何だと思っているの?!(←大猿)
 だーかーら。キセキが起きたんだってばぁ!!
 ……わかった、順番に話すわね。
 事の始まりは、練兵所の隅っこに立派な鉄槍が転がっていたことなの。あたしがそれを見つけて、あらまあ大事な武具を粗末にしたらバチが当たるわよ~って思って何の気なく拾ったんだけど、これがまたすんごく重くてビックリしちゃった。で、まあ持てないことはないけれど、普通のひとには危ないわねぇコレ……なんてぶつぶつ言いながら武具庫へ向かおうとしたら、後ろから
「おい。俺の得物をどこへやる気だ?」
 って声がかかって。振り向いたら青将軍がおいでになるじゃないッ!あたし跳び上がって平伏しちゃったわ!
「す、すみませんッ!てっきり誰かの忘れ物かと思いまして――」
 そしたら、青将軍はカラカラ笑ったの。
「そんな鉄槍、忘れる奴は俺しかいないだろう」(はははは!)
 ホント、気取らない、気持ちの良いお人よねえ。でもそれだけじゃなかったの。
「それにしても、おまえ……今、俺の鉄槍を片手で持っていたな?」
「ひええ、申し訳ありませんっ。両手でキチンと持つべきでした!」(背筋シャキーン)
「いや、そうじゃない。その腕、抜けてないか?大丈夫か?」
 なんと将軍はあたしの腕を案じてくださったのよ。強くて優しいなんてステキ!!
 で。あたしがちょっと感動しながら、
「ありがとうございます、大丈夫です……ズッシリきますけど、ちゃんと運べます。万が一にも落としたりしませんのでご安心ください」
 と答えたら、急に将軍の顔つきが変わったの。
「すごいな。並みの兵卒には二人で運ばせているんだぞ。もしかして、おまえ、俺の鉄槍を使えるんじゃないか?ちょっと振ってみろ」
「えええっ、そんな畏れ多い……」
「無理はしなくていいが」
 その頃には将軍と鍛錬していた小臣たちだけでなく野次馬もたっくさん集まってきたから、あたしもう腰が引けて逃げ出したくなったけれど、咄嗟に『ここで逃げたらアタシが廃る!』って思ったの。
 だってそうでしょ?ここで怖気づいて逃げたら、ただの弱虫認定されて主上には二度と会えなくなるだろうし、あたしを推挙してくださった和候にも恥をかかせちゃうわ。そんなことできない!
 もう腹を括るしか無かったわね。
 だから精一杯カッコつけて武人の礼を返したわ。
「承知しました。それではお借りします」
 青将軍に一礼して、将軍の鉄槍を取った。やっぱり重かった。ホントに危険な重さだったけれど、もう引き返せないし。ぐっと踏ん張って立ち上がって、慌ててあたしから距離をとる野次馬の輪を睨みながら鉄槍を構えた。やるわよ。見ていなさいよ――それから型どおりに突いて、払って、ぐるりと回してから再度突き、をやって――さすがのあたしも槍の重さに振り回されてたたらを踏みそうになったけど、ダンッ!って足を踏み下ろして堪えたの。我ながらよくやったと思うわ~でね、息があがったまま将軍に一礼したとき……。
 奇跡よ。キセキが起きたのよ。
 野次馬のざわめきに混じって、軽い拍手とうるわしい声が聞こえたの。
「見事だ。桓魋の他にその鉄槍を使える者がいたとはなあ」
 って――あたし震えたわ。練兵所で若い娘の声なんか聞けるわけがないじゃない?
 もう心臓がバクバクして顔もあげられなかったけれど、なんとか目だけはチラッとあげたら!
 主上よ!!青将軍の後ろから、あの強くてキレイでカッコ良すぎる主上が!!本物の主上があたしの目の前まで歩いておいでになったのよおおおお!!
「これは主上。いつおいでになったんですか」
「ついさっきだ」
 なーんて、あああああああ主上と世間話できる青将軍が羨ましいいいいい!(キィィ)
 でもね、でもね、主上はすぐにあたしへ向き直ってお言葉をかけてくださったの。
「初めて見る顔だ。名は何という?」
 な、名前っ!さっそく名前を聞かれちゃったのよ~ッ(キャッ)
 そりゃ声も裏返るわよね。
「は、はいッ(裏声)……あたしは于巨、字は大春と申します」
 そしたら一瞬、辺りがシーンとなって。あたし、ハッとして口をおさえたわ。
 どうしよう、主上の御前で『あたし』とか言っちゃった!この口調を気味悪がるひともいるのよね、嫌われちゃったらどうしよう~ッて気が遠くなったのね(ヒンッ)
 だけど、主上は――ああ、なんて素晴らしい御方なの――いったん目を丸くなさった後でクスっと笑ったの。
「気にするな、大春。私も『らしからぬ』言動を押し通している。大男が女言葉を使っても別に構わない」
 そして青将軍も一言添えてくださったの。
「大春はこのとおり癖がありますが、真面目でよく気がつき、下働きも黙々とこなす感心な男です。先ほどご覧のとおり見事な膂力を持ち合わせているようなので、ひとまず俺の手元で鍛えてみようと思います」
 そんなこと言われたら、恥ずかしいって言うか、まず、ええええええ将軍、あたしのこと見ていたのおおおおおって焦ったわよね。あたし馬鹿だから、それがそのまんま顔に出たみたいで、将軍にまで笑われちゃった。
「おい大春。俺が柴望様ご推挙の兵をただ放っておいたと思っていたのか?ちゃんと見ていたぞ。普段の様子を」
「ひとが悪いな桓魋」
「お言葉ですが主上、これが結構大事なんですよ――そういう、集団の中で自分で自分の居場所を掴んで役割を果たせるかってことが」
「浩瀚のやり口か」
「まあ閣下の影響は否定できませんねえ」
 ……青将軍って、見かけによらず冴えたお人よねえ……あたし感服して声も出せなかったわ。しかも、しかもね!主上が!最後に!こんなお言葉をくださったの!!
「そうか。また一人頼もしい兵が増えてくれたら、私は嬉しい。しっかり鍛錬に励んでくれ大春」(キリリ☆)
 って。
 あああああああああああ好き!!!!!
 主上のためなら今すぐ死ねるッ!!!
 好きです・大好きです・愛しています主上おおおおお!!!(咆哮)
 …………ゲッホゲホゲホ!
 あー……喉が枯れたわ……。(←紛れもなくお馬鹿)
 ゲホゲホ!
 ……ちょっと待って(掠れ声)。ね、こうして振り返ったら、あたし、せっかく主上に会えたのに御礼を言っていないわね?拓峰のタの字も出してないわね??名乗ってペコペコしただけだったわね???
 イヤアアアアア馬鹿ばかバカッ!何やってんの、あたしぃぃ!!(急転直下の絶望)
 主上に会えたら、ちゃんと御礼を言って、好きだって伝えて、「一生ついてゆきます」とか「命に代えても護ります」とか宣言するつもりだったのにぃぃぃ!!(滝涙)
 ああっ……何も……何も言ってなかったなんて……(信じられない・ぶるぶる)
 ええっ?
 ホント?!青将軍の選抜隊に入ったらまた主上に会える?!ホントにホントぉ?!?!
 ……じゃ、あたし、お手紙を書くわ。
 あたし馬鹿だから、口じゃあまたちゃんと言えなさそうだもん。お手紙だったら渡すだけだよね!名案!
 よーし、書くわよ!筆よーし。紙よーし。硯よーし!(指さし確認)
 そして気合よーし!(セルフ頬ビンタ・バシバシ)
 ふう……(精神統一)
 ええっと。拝啓。主上さま、と。

<了>


《種明かし》
 大春は、むくつけき髭面のマッチョ大男です。しかしなぜかハートは乙女なのです。
 おそらく幼少期より美しいお姉さんが大好き&むさ苦しい自分が大嫌いだったので、憧れやらシスコンやらを拗らせすぎたのかもしれません。


2019_02_02


先週末の話なのですが、京都にあるチョコ屋さんの隠れカッフェに行ってきましたよ。
店員さんにひそひそと「暗号」を教えてもらい、地下へ降りる扉を探して開けるというRPGっぽい秘密めかしさがマニアの心をそそる場所でした。暗号の入力装置も、脱出ゲームでよく見かけるあのいかにもな文字盤でなかなか良い雰囲気です。

お店の中は薄暗がりで、ろうそく型の灯りが灯っており、見渡す壁一面は本棚になっていて洋書がぎっしり詰まっているという、いかにも密談に適しておりますぜという佇まい。店の内容は軽食&喫茶なのですが、軽いアルコールも楽しめるようでした。
壁の洋書はやたらと数があるので、きっと前頁白紙の嘘っこな御本だろうなと思い、そっと一冊抜き取ってみるとちゃんと文字が書いてあるれっきとした御本だったので、やられた感に打ちひしがれました。でもタイトルが「行け!スーザン!」とか「大自然」とか「長旅」とか小説なのか紀行文なのかよくわからないものが多かったです。スーザンはどこへ行ったのかということだけ、少し気になりました。

そんなこんなで、このお店にちなんだおまけを以下にくっつけておきます。
リアルのお店は喫茶店だったけれども、おまけの中では大人があれこれするお店に変えてあります。美味しく楽しい時間を過ごさせていただいたお店に申し訳ない限りです。ごめんなさい(←口だけ)

<おまけ>
ずいぶんと洒落た佇まいの店だった。
水瀬の浅い玉川のほとり、小さな太鼓橋のたもとにあって、馳車も馬車も行き交う四辻を睨む好立地にひょろりと生えのぼるその外壁の高さは三階ほど、てっぺんから地階まですべて淡い空色の塗料が丁寧に塗られている。今日のようによく晴れたきんと冷えきった冬の真昼の、まるで良質の氷菓子のような空を背にした建物は、そのまますうっと滲んで消えてしまいそうだ。扉の前には冬でも緑の葉をつける鉢植えが寄せてあり、その横に小さな卓と高椅子が日を浴びて真白に輝いていた。
「ほんとにここか?」
「――と、桓魋は申しておりましたが」
じゃあ入ってみようか、と褪せた頭巾のついた被衣を寒風にさらわれないように掻き合わせ、金属製の取っ手に指をかけたが、すぐにびっくりしたように離して後じさった。
「ちべた!」
ちべったい、と斜め上に鎮座した男の頬に遠慮なく指先を押し付けて温める。
「冷たい、と。御言葉は正確に」
「うるさいな、ガミガミ冢宰」
「ガミガミいたしますとも。主上の御言葉というものは……」
幸いなことに、御言葉というものがどういうものなのか聞かずともすんだ。ちょうど、かららん、と鐘の音が涼し気に鳴り響いたかと思うと、内側から扉が開かれたからだ。甘ったるい暖かな空気が吹きつけ、ふうわりと鼻先をくすぐる。甘い渦の中心から茶色い前掛けを締めた店員がせかせかと吐きだされてくる。橙色の実が詰まった重たげな籐籠を担いでいた。
「あ、いらっしゃいませ」
よくある紺の外套に身を包んだ役人らしい男と、燃えるような朱髪を乱した浮民のような格好をした少女といういささか妙な取り合わせの客に、店員はそれでも闊達な笑みを浮かべてみせた。
「どうぞ、立ってないでお入りくださいませ。ちょうど焼きたての栗菓子が上がったところですので」
「あのう……」
「はい?」
少女が口元を掌で覆ってひそひそと気恥ずかし気に囁く。
「なんだか秘密の小部屋があるって聞いたのだが、あなたはご存知か。暗号を教えてもらわないと入れないと伺ったが」
ああ、としたり顔の店員は頷いた――あの小部屋ですか。
「どうやってお知りになられました?」
「友人の筋肉男が教えてくれた。その、茶が美味しくてやたらとゆっくりできる場所だ、と」
「結構です。一応はご紹介制ですので失礼をば」
そう言うと、たぶんこっちが金を払う方だと見当をつけたのだろう、店員はくるりと慇懃に紺色の外套へと向き直った。
「ただいまの時間帯は空いておりますのでご案内できます。暗号は、これ、この紙片をお持ちください」
前掛けの袋から小さな紙をちぎりとると、木炭で三つの数字を素早く書きつけて手渡す。
「混んで参りましたら、早めの退出をお願いするかもしれませんが」
「構わない」
この店の裏手、塵置き場のある路地を右手へ曲がると地下へ降りる隠し扉があるから、その扉にこの数字を入れ、瞬き三つ以内に急いで把手を引くこと。ぐっと力いっぱい押さないと開かないと言い残して、店員は太鼓橋のたもと、薄氷の匂いが濃く漂う川の汀へと下りていった。
二人して顔を見合わせると、先に少女の方が目を反らした。
「……ほんとに行くか」
「せっかくここまで来たのですから行ってみましょう」
言われたとおりに店の裏手へ回ると、なるほど塵置き場の金網の奥、大きな樽がいくつも積んである物影にひっそりと、いかにも怪しげな雰囲気を漂わせた鋲だらけの扉がそそりたっているのを見つけた。穴が幾つもあいた銅製の盤が鎖でぶら下げられている。埃っぽい傘たてがぽつんと寄せてあって、金属の箱がくくりつけられていたが、中には数字が書かれた小札がぞんざいに詰まっていた。どうやらこれをいくつか取り出して銅盤の穴に嵌め込むものらしい。
「せっかくの休日に、堯天の下町のこんなくんだりまで来て、いったい何なんだという話だけどな」
少女は今更のようにそわそわと落ち着きを無くして、樽の隙間から吹きこんでくる冬の風に危なっかしく揺れ動く銅板を眺めた。さっさと数字を入れてしまいましょう、と淡々と動く男に、いや待て、ちょっと待てと押しとどめる。
「いたいけな私の心の準備がだな、まだ、もうちょっとばかり」
「ふてぶてしい拙めの準備はとうにできておりますが」
声音に微量のからかいが混ざっているのに気付いて、幼さの残る唇がへの字に撓んだ。
「ここっていわゆる蓬莱でいうところの……その、えっと、ラブホ、みたいなところなんだろ?桓魋ご推薦の」
是とも否とも言わぬまま、白い指が数字の小札をさっさと器用に拾いあげていく。
「宮ではどこに目があるかわからぬゆえ落ち着いて抱き合えぬとの主上の御言葉でしたので、桓魋に情報提供を頼んだ次第でございます。主上の御お言葉は、まさに玉にも等しい尊いものですゆえ」
ああ、玉みたいな御言葉なんて、そんな丸いもの、転がるままに打ち捨ててくれてよかったのに、とじりじりとあとじさる。その手首を逃がしはせぬというふうに、男の腕がしっかりと掴みとった。
「ここの扉の把手はちべたいだろう。触りたくない」
「『ちべたい』ではなく『冷たい』と」
「ガミガミ冢宰めが」
「拙めがガミガミと開けますのでご心配なく」
「ぐっと押さないと駄目だって言ってたじゃないか。重いものなんて押したら、筆より重いものを持ったことがないおまえは腰を痛めるかもしれないぞ」
ご心配なく、と男は繰り返した。
紺色の外套――どこにでもある、なんてことない縫製のくるぶしまですっぽり隠れる長い衣――の縁が、さっきからくつくつと小刻みに揺れている。
「暗号付きの隠された扉をぐっと押すことには、恥ずかしながら長けております」
言い終える前に、ぎぎ、と扉は軋んで身震いし、さほど力を入れたようにも見えなかったのに、確かな隙間が黒々とあいた。その隙間から、壁龕に燃える青白い松明と、荒削りの石造の濡れた段々が下方へ吸い込まれるように消えていくさまがちらりと覗いた。
いい加減お覚悟なさいませ、と楽しげに、さらに扉が開いていく。
「主上の御言葉というものは――」
「うるさいな、それさっきも聞いた」
「――いたく尊いものでございます。どうぞ、拙めを欲しいと、そんな御言葉も賜りたく」
「言うか阿呆!」
――がしゃん。
大小二つの人影を飲みこんで、扉が閉じた。鎖にぶらさがった銅盤が揺れ、かちん、と微かな音をたてた。

2019_01_27


大変遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。
十二国記新刊が出る2019が、我ら常世同盟の皆様にとって良い一年となりますように願ってやみません。

葵之介は、昨夜、2名のルシファから誘惑のお声を聞きました。
一人目のルシファは海のまぐろさまの姿形をしていました。まぐろバディは3億3360万円もするので、地獄のルシファも憑依するのに適切な憑代だと判断したのでしょう。
まぐろルシファは、以前より葵が欲しいなぁと指をくわえていたPS4を「YOU 買っちゃいなYO」と耳元(Twitter)で囁くのでした。
葵がなけなしの理性をふりしぼり「で、でも買ったらたぶん廃人になっちゃう」と震えながら言えば、自らも「今ちょうどドラ○エで廃魚してるし、我慢は体に良くないよ」と、まるで、赤信号、みんなで渡れば的な伝統的キャッチセールスで巧に勧誘なさるのでした。

PS3は持ってるんです。そしてFFにハマって「ライトニングさぁーん」とか黄色い声を、過去、あげたりしていました。
しかし時代はいつの間にか移り、今やPS4。ゲームとは罪深いものでございます。
困ったことにやってみたいソフトが2つほどあるんです。

ひとつめは、OBDUCTIONというやつで、昔々、始祖鳥が原始の森を徘徊していた時代に、MYSTというパソコン用のゲームがありました。当時、まだ人間に生まれ変わる前のしがないアンモナイトだった葵はあれが好きで、海の中でシリーズ制覇にいそしんだものでした。あれの最新作がPS4版で出ていると知り、久しぶりに古傷が疼いた次第です。

もうひとつはINSIDEという、こちらも徘徊系のゲーム。薄暗いところをウロウロする怪しげな世界観に惹かれました。

でもねぇ、これらを買ってしまうと本当に猫まっしぐら廃人まっしぐらだと思う…怖い…だって毎日ゲームしかしなくなるのは目に見えているもの みつを。

二人目のルシファはちりさまの姿形をしていました。
ちりさまは以前、葵に「宮廷の諍い女」という中華ドラマを勧めてくださった前科をお持ちなので(レンタルしました、絶賛鑑賞中)、地獄のルシファも憑依するのに適切な憑代だと判断したのでしょう。
ちりルシファは「金椛国春秋」という中華ファンタジーが面白いですよ、うん、角川文庫から出てますよ、と耳元(Twitter)で囁くのでした。密林へのリンクも貼ってくださったのでひょいと覗きにいってみますと、嗚呼、禁断のまとめ買いページではありませんか。
葵が震えながら「ま、まとめ買い」と呟きますと、「大丈夫、まだ4~5冊しか出てないからゆっくり制覇できます」とおっしゃる。
葵の指が震えながらポッチを押すのと、世の人々が恵方を向いて海苔巻きを丸かじりするのと、どちらが早いでしょうか。実に恐ろしいことです。

悶々としながら、本日の成人式はほとんど惰眠で過ごしました。新年から煩悩にまみれすぎていると思います。
みなさまはどんなお正月を過ごされましたか?

P.S 新年に短編を更新しようと思ったのですが、書きかけのものをリメイクしようとして失敗したため、更新はまた先に延ばさせていただきますね、ごめんなさいですm(__)m


以下、コメントお返しです♪




2019_01_14


2018年もあと数日で終わりますね。
今年はデカい地震にデカい台風、まるで自然災害の大盛り大会のような1年でした。
蓋を開けてみればアイスショーに4回も行っていたり、普段は行かないコンサートなんかにも出かけてみたり、催事にはあまり縁がなあったのですが、いつのまにやらノコノコと慣れぬ顔を突っ込んでおりました。
あるいは摩天楼の写真がガムテープで貼りつけてある場末のサウナに泊まったり、絨毯の上に転がってそのまま寝てる人々と共にスーパー銭湯で一夜を明かしたり、野性み溢れた年でもありました。

オタク関係ではバナナフィッシュのアニメに夢中になって、ついうっかり原作を大人買いして部屋の一隅が黄色く染まりました(全20巻の漫画の表紙は綺麗なレモン色なのです)。
アニメが放映されていた半年間というもの、木曜ごとに「バナナ…バナナが…」とブツブツ呟き続ける人になっていました。とかいっといて最終回、まだ見れていません。号泣必至なので、ドライアイ対策として目玉があまりにも乾いたときにでもまた見てみようと思います。
十二国記では自ブログで開催する祭に今季かぎりでピリオドを打つことにしましたが、一方で12月12日に新○社から十二国記の新刊お知らせが出ましたね。たぶんイラスト集第二弾も出るのでしょうか?なんにせよ十二国記界隈がまた少し活気づくことを願ってやみません。

来年はまたアイスショーにいっぱい行きたいし、スケートアニメの映画も見なくちゃだし、十二国記の新刊も読みたいし、楽しいことがいっぱいの1年にできたらいいなぁと思います。
このブログも7年目に入りました。亀のような低空飛行でまったりと来年も続けていきたいです。

みなさま、昨年中は大変お世話になりました。
こんなオタク女と仲良くしてくださってありがとうございますm(__)m
来年もまたどうぞ、妄想の世界で一緒に遊んでやってくださいませ。どうぞよろしくお願いいたします。
よいお年をお迎えくださいね。

2018_12_29


土曜日は友人とエッシャー展などを見に行ったのですが、友人も常世民なので、新刊情報についてとても喜んでいました。
常世民らしく「我、喜悦。甚滂沱」「汝、予想完結?」「語汝予想完結」とわけのわからぬ漢字で喋ろうとしたりしてかなり面倒くさ楽しかったです。
戴についての2500枚という新作内容について、シフォンケーキを貪り食いながら熱く語ってきました。以下、その内容をかいつまんでまとめてみます。

まずは心配4点セットです。

<心配1>
戴のお話という情報だけで「ああ泰麒と李斎が戴に戻って行った、あの続きだよね」と短絡連想をしている我々だが、果たして本当にあの続きなのだろうか。なにせ小野主上だ。『落照の獄』のときだって「驍宗さまがどこぞの岩屋で鎖につながれて、山の頂に日が沈むのを見ながら慟哭する話に違いない」と短絡思考した結果が「……柳?」だったではないか。
想像してごらんなさい、初頁をめくったら舞台が500年後で、すっかり落ち着いた驍宗さまと泰麒が茶を飲みながら「あの時は大変でしたね」と語り合っている世界を。あるいはまた想像してごらんなさい、舞台が500年前の前前王時代で、玉を彫る市井の職人が主人公である話を。
なにせあの小野主上なのだ。油断はできない。

<心配2>
雁がいきなり終焉を迎えはしまいか。延王は予想のつかぬ男、いつなんどき碁の続きがしたくなるかわからない。戴のごたごたの最中にいきなり延王のブラックスイッチが入ってしまうことも、決してありえなくはない。帰山でさりげなく触れてあった「予想のつかない形での雁の終焉」、あれは伏線ではないか?舞台が戴なら、間違いなく予想のつかない展開になるだろう。
なにせあの小野主上なのだ。

<心配3>
仮に完結編だとする。芳の卵果が蓬山になさそうなところからして、天が変調をきたしていることは間違いない。あの世界がなんらかの形で機能しなくなり、ひっくり返って再編されたあげく、異物である蓬莱組は元いた世界、元いた時代に放り戻されて終わりではないだろうか。陽子と要は高校生に、尚隆は決戦前の瀬戸の城下町に。

<心配4>
新刊は間違いなく来年中に出るだろう、それは疑ってはいない。しかし2019年12月29日ぐらいの発刊という可能性は大いにある。

以下は、希望4点セットです。

<希望1>
泰麒の額のちょん切れた自然薯は、たぶん自力で再生するのでは。

<希望2>
なんだかんだいって、泰麒が出るなら陽子さんも出番があるに違いない。

<希望3>
例によって「タイトルを読んでも内容がさっぱりわからない」タイトルになるだろう。なにせ小野主上だ。

<希望4>
麒麟連中のうち、誰か一匹の入浴シーンぐらいあるかもしれない。是非全裸の描写をお願いいたします。

以上です。これだけ語り合うのにアイスコーヒー2杯、お冷3杯を飲み干したことを付記して今宵の雑記をそっと終えます。
そういえば今宵はクリスマスイブ、みなさまメリークリスマス!


以下、拍手コメントお返しです♪
2018_12_24


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